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ダラーラ社CEOが来日会見、スーパーフォーミュラ次期車両『SF19』のコンセプト発表

2017年10月21日 13:42  AUTOSPORT web

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10月21日に発表されたスーパーフォーミュラ次期車両SF19のイメージ画像
スーパーフォーミュラ第7戦が行われている鈴鹿サーキットで10月21日、2019年から導入される新型車両SF19についての発表会が行われ、現在のSF14から引き続いて製作を受け持つイタリア、ダラーラ社のアンドレア・ポントレモリCEOが来日し、会見に出席した。

 2014年から使用されている現在のスーパーフォーミュラ車両、SF14は2010年の安全規定をもとに製作された車両であり、ドライバーや関係者、そして世界的にも高評価を受けていることから、次期車両も同じダラーラ社、そして同じコンセプト「クイック&ライト」を踏襲して製作されることが発表され、同時にSF19のイメージ画像も公開された。

「SF14がデビューして、このクルマの素晴らしい性能はスーパーフォーミュラの魅力を高めるのに大きな貢献をしてくれました。ダラーラ社のみなさま、アンドレアCEOには大変感謝していますし、その経緯を踏まえて次の車両、SF14をベースにした2019年のデビューを目指して準備を進めているSF19をダラーラ社というパートナーをともに一緒に作っていきたいと思います」と、まずはSF19の製作概要を説明したJRP(日本レースプロモーション)の倉下明社長。

 SF14は2010年の安全基準をもとに製作されたが、SF19は2016年の安全基準をもとに製作されることになる。SF14からSF19への大きな変更点はその安全面になり、そのなかには今後のF1や2018年デビューのFIA F2新型車両にも搭載される予定のコクピット保護システム、ハロの存在が気になるところだが、現在では「搭載する、しないは今後になりますが、搭載できるように製作してもらいます」と倉下社長。今後の世の中の潮流やF1,F2の状況を鑑みての判断になることを示唆した。

 また、ポントレモリCEO、倉下社長とともに会見に参加したJRP技術顧問の白井裕氏は「あくまで個人的な希望として」と前置きした上で、「やはり世の中的にさまざまなカテゴリーのタイムがアップしているなかで、SF19は今より(ラップタイムで)2秒以上、早いクルマにしたい」との目標を語った。

 SF19に搭載されるエンジンに関しては現状の諸元と同じ、直列4気筒2リッターターボ、燃料流量制限、OTS搭載が継続。白井氏も「エンジンレベルはベストな状態にあると考えている」と話すように、現在も燃料流量を調整していることからも、流量次第での出力アップは大きな問題ではないようだ。


 安全面と同様に大きな目標となっているのがオーバーテイクのしやすさ。コンセプトの中でも触れられているように、SF19は「ドライバー同士の競り合いをより際立たせるため、他車との接近時のコントロール性を空力の見直しによって改善し、シリーズとしてのエンターテイメント性と競技性の両立を目指す」ことをリリースで明かにしている。

 SF14ではオーバーテイクを狙って前のマシンの背後に付くと、後ろのマシンは前のマシンが巻き起こすタービュランスによってフロントのダウンフォースが失われ、オーバーテイクが難しくなるという問題を抱えていた。

 この件について、ダラーラ社のポンレモリCEOは「SF19では空力の改善が大きなテーマとなっています。F1の空力を反映させ、特にスーパーフォーミュラのスペクタクル性を向上させるためにもオーバーテイクのしやすいクルマを目指しています。具体的にはダウンフォースを上面から増やすのではなく、フロア、下面からのダウンフォース量を増やすことで後続へのタービュランスを減らす狙いがあります。日本のマニュファクチャラー、オーガニゼーションと協力していろいろ学びながら、ベストなクルマを作っていきたいと考えています」とコメント。

 今回の発表ではSF19の細かい諸元などは未定のままであったが、先日発表された、2018年から採用される同じダラーラ社とのFIA F2新型車両『F2 2018』とSF19との違いについてもポントレモリCEOは応えた。

「イメージ画像を見て頂いても分かるように、まずは車体のデザインがまったく違います。安全基準面でもSF19はコクピットの開口部などは大きくなる見込みですし、安全規定の影響があってノーズコーンの剛性を上げないといけないのですがSF19の方が車体は軽くなるでしょう」と話すポントレモリCEO。

「車体のパフォーマンス面でも違いますし、やはりF2はDRS(ドラッグ・リダクション・システム)を採用していて、スーパーフォーミュラのOTS(オーバーテイク・システム)とも違いまし、車体のコンセプトが異なります。いずれにしても、私たちはこの車両を経験してF1にステップアップするという環境を作らないといけません。ですので、F2とスーパーフォーミュラを競争させるような考えはありません」とコメント。F2とスーパーフォーミュラ、両者の関係者に気を遣ってか、はっきりとしたマシンの違いなどの明言は避けた。

 また、SF19の製作コンセプトとともに、JRPの今後の運営に関してのプランも明らかされた。2020年に実用化予定の第5世代移動通信システム、通称5Gを使用し、「2021年からオンボード映像のライブ配信を実現できないか検討しています」と倉下社長。他にもバーチャル・セーフティカーのシステム導入、ドライバーの心拍数、エンジン回転数が分かるような施策など、「まさに今、どのパートナーと一緒に進めるかを検討していまして、SF19に関してはデータ発信を行える機材を積めるような準備はしてもらっています」と、倉下社長は進行しているプロジェクトの概要を明かにした。

 SF19の製作スケジュールとしては今後、2018年6月にテスト車両が完成し、7月には走行テスト開始、10月に最終仕様を確定し、2019年1月から各チームにデリバリーされる予定とのこと。

 昨年のストフェル・バンドーン、そして今季のピエール・ガスリーと、FIA F2とともにF1との距離がもっとも近いカテゴリーになりつつあり、世界的に存在感が増しているスーパーフォーミュラ。安全面、速さ、そしてオーバーテイクのしやすさと大きな課題があるなかで、SF19がどのような車両になるのか。世界的な評価とともに、スーパーフォーミュラのさらなる魅力アップ&ファン増加に向けた施策が最大のテーマになる。