2017年10月21日 11:03 弁護士ドットコム
岡山県津山市の中国自動車道で10月18日、大型トレーラーが横転して、路肩にいた広島市の女性(49)と岡山市の長女(21)がはねられて亡くなる事故が起きた。
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報道によると、亡くなった2人は、高速道路上に落ちていたタイヤに乗り上げて車が動かなくなっていたため避難していた。大型トレーラーは、同じタイヤに乗り上げて横転した。
タイヤは直径約1メートル、幅30センチほどで、トラックなどに使われる大型のタイプだった。警察は、トラックなどにつけられていたスペアタイヤの可能性があるとして捜査しているという。
高速道路での落とし物(落下物)は年間30万件以上発生している。今回のように事故の原因になると思われるが、高速道路上で落とし物をした場合、法的にどんな責任を負うのか。また、その結果、事故を引き起こした場合、どうなるのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
「高速道路を走行するとき、運転者は、自動車に積載している物を転落させたり、飛散させたりしないよう、防止措置を講じなければならないとされています(道路交通法75条の10)。
高速道路にスペアタイヤを落下させたとなれば、積載物の転落防止措置義務に違反したとして、罰則の適用を受けることになるでしょう。
罰則は、故意(わざと)に転落防止措置義務に違反して、その結果として、積載物を転落させた場合、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金となります。
過失(うっかりなど)による場合は、10万円以下の罰金です(道路交通法119条1項12の3号、同条2項)。
さらに、運転中に必要な注意を怠って高速道路上にスペアタイヤを落下させてしまったことで、後続車がスペアタイヤに乗り上げて事故にあい、人が死傷した場合、過失運転致死傷罪が成立する可能性が高いです。
この場合、刑事罰は7年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金です」
それでは、民事上はどうなるのだろうか。
「民事上も、高速道路を運転中、スペアタイヤを落下させることは、不法行為(民法709条)になりますから、それによって生じた死亡、傷害、車両損傷などの損害について、運転者には、被害者に対する損賠責任が生じます。
車の所有者にも、自動車損害賠償保障法3条の責任(運行供用者責任・無過失でも負う責任)が生じます。
一方で、後続車にも、前方を注視し、制限速度を順守しながら走行して、仮に落下物があっても衝突を避けられるように安全運転をすべき義務があると考えられます。
そのため、後続車にも過失があったとして、『過失相殺』で損害額の一部が自己責任となる可能性があります」
今回のケースも「過失相殺」があるのだろうか。
「大型トレーラーの物損(車両損傷)については、大型トレーラー側の過失で、『過失相殺』される可能性があります。
しかし、避難していた親子がこうむった人損(生命・身体の損害)が、路肩に避難していたという過失によって、『過失相殺』されるということは考えにくいと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は溜池山王にあり、弁護士3名で構成。原発事故・交通事故等の各種損害賠償請求、不動産関連、労働事件・労災事件、企業法務、契約紛争、高齢者の財産管理、離婚・相続、債務整理、債権回収等を取り扱っている。
事務所名:たつき総合法律事務所
事務所URL:http://tatsuki-law.com