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WEC:予選を辞退してでも勝利を欲した澤圭太。「富士の女神は微笑んでくれなかった」

2017年10月20日 15:52  AUTOSPORT web

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WEC初の母国レースとなった第7戦富士でクラス2位となった澤圭太
WEC世界耐久選手権第7戦富士6時間レースが10月13~15日、静岡県・富士スピードウェイで行われ、澤圭太を擁するクリアウォーター・レーシングはLM-GTEアマクラス2位表彰台を獲得。3番手となっていたチームランキングでふたたびトップに立った。

 澤はもちろん、アジア地域を主戦場とするクリアウォーター・レーシングにとっても富士で行われる第7戦はホームレースと言えるラウンド。オーナー兼ドライバーのウェン-サン・モクも走り慣れたコースであることから好成績が期待された。

 走行初日となる土曜日から3日間すべてで雨天となった今戦では、各チームともウエットコンディションのなか精力的に走行を重ねていく。

 61号車フェラーリ488 GTEを走らせるチームも初日のフリー走行1回目から多くの周回を重ね、順位では1回目はクラス2番手。雨量の増えた2回目のプラクティスでは澤のドライブでクラストップタイムをマークした。

 土曜の予選ではエースのマット・グリフィンとモクがアタックを担当。両者がアタックを終えた時点でクラス2番手だったが、チームはセッション終盤にタイヤを交換し、再度モクをコースに送り出す。

 再アタックでモクはブロンズドライバーのなかでは唯一となる1分49秒台のタイムを記録し、ドライバーふたりの平均ラップを更新。その結果、チームにとって2016年のル・マン24時間レース以来となる2度目のポールポジションを獲得することとなった。

 迎えた決勝、チームは前戦と同様に澤をスタートドライバーに抜擢。母国レースの雰囲気にやや緊張気味の澤だったが、セーフティカー(SC)の先導で開始された決勝レースではクラストップを快走するだけでなく、LM-GTEプロクラスのマシンを3台パスする力走で、予選5番手から2番手に浮上したスプリット・オブ・レースの54号車フェラーリ488 GTEに10秒のギャップを築いてみせた。

 雨量の増加と霧の発生によって、ふたたびSCランとなるなかでチームは予定より早めのピットインを選択。澤からモクに交代していく。代わったモクも走り慣れた富士で好走をみせトップをキープするが、レースは濃霧の影響で赤旗中断となってしまう。

 レース再開後、実質のクラス首位を守る61号車フェラーリだったが、不運なタイミングで出されたSCランによって12秒後方を走っていた54号車フェラーリにトップを奪われた。

 モクからグリフィンに代わった61号車フェラーリは、トップの54号車フェラーリに2秒以内に迫るものの、水しぶきの影響もあってオーバーテイクに至らない。そんな状況が続くなか、フィニッシュまで残り1時間30分というタイミングで2度目の赤旗が掲示される。

 結局、レースはそのまま終了しクリアウォーター・レーシングは勝利まであと一歩届かず、クラス2位でホームレースを終えることとなった。しかし、3番手に落ちていたチームランキングでは2ポイント差でふたたび首位に浮上。タイトル獲得に向けて前進している。

■澤圭太「PP会見で壇上に上がれない悔しさもあった」
「母国での世界選手権という檜舞台は、週末を通して残念な天候となりましたが沢山の支援者やファンの方々が応援に来て下さり、本当に忘れられない週末となりました。サーキットサファリでの走行、公式記者会見の出席、スタンド裏ステージでのトークショー、オートグラフセッションなど、やはり注目して頂いているという実感やファンの方々の期待を感じる週末でした」とWEC初の母国レースを振り返った澤。

 決勝では快走を見せた澤が予選を担当しなかったことについては「実は予選アタックをやらせてもらう話が前戦のオースティンではあったのですが、『チームの為にはせっかくいい流れで日本に行くのだから“いつもの流れ、いつもの役割分担”で戦った方が良い』と伝えて辞退しました」と明かした。

「やっぱり内心は苦悩がありましたし、予選でポールポジションを獲得して記者会見場に向かって自分だけ檀上に登れない悔しさもありましたが、反面『やっぱりこれで良かったんだ』と自分の判断が正しかったことも感じました」

「スタートドライバーとして難しいレースをする覚悟、チームの為にレースを作る役割としてすごく緊張しましたが、落ち着いて走れましたし、皆さんの想いが後押ししてプロクラスのマシンまで数台抜くことができました」

「このレースは54号車フェラーリとの闘いになることは予想されていたので、序盤から少し無理をしてでもプロクラスのマシンを挟む事で相手のペースを鈍らせ、自分がなるべく視界の良いところを走るという作戦もハマりました」

「しかし、振り返ってみると決勝のセットアップは54号車フェラーリの方に分があった。ここは僕の決勝のマシン作りという役割は100%果たせなかった反省点ですね」

「当然勝ちたかったし、週末の流れは完全に僕たちものでした。もう1回自分のスティントが回ってきて、自力でトップでチェッカーを受けることを思い描いてましたが富士の女神は微笑んでくれませんでした」

「悔しさとやりきった満足感が入り混じるなかで立った表彰台からの景色は忘れることができません。しかし、残り2レースの時点でチームランキングトップに返り咲くことができたのは好材料で、富士のリベンジを必ず次の上海戦で果たし、トップのままで最終戦バーレーンへ乗り込めるように気持ちを切り替えて頑張りたいと思います」

 澤とクリアウォーター・レーシングが臨むWEC次戦は第2のホームレースとも言える上海。11月3日に走行初日を迎え、4日に予選、5日に6時間の決勝レースが行われる。