2017年10月20日 14:43 弁護士ドットコム
蒸気機関車(SL)の保存運転に取り組む鉄道会社「大井川鉄道」(静岡県島田市)が10月17日、場所取りのために「撮り鉄」が路上に勝手に置いた脚立の画像をツイッターに投稿して話題になっている。同社は「ファンの方同士及び沿線住民の方々とのトラブルにつながりうる」として、警察に通報したという。
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どんな張り紙があったのだろうか。脚立に貼られたものを見ると、「場所取りしています」と赤字で書かれ、「この場所で10月15日運転のE34特別列車を撮影します」「無断移動・無断撤去は厳禁です」「関係者以外立ち入り禁止」などと書かれている。
さらに、「こちらで撮影する際の調整などは一切受け付けません。『こんな場所取りは無効だ』『嫌だ』などとだだをこねても知りません。」「無断移動・無断撤去してもムダです。予め取って置いた場所で撮影します」「無断移動・無断撤去で入った場合、順番無視・順番厳守違反として最悪の場合ポアされることがありますのでご注意ください」と赤字や黄色で強調された言葉が並ぶ。
張り紙の見た目から、鉄道会社側が貼ったものと誤認してしまいそうだが、実際は「撮り鉄」が設置したものだ。日時や撮影する列車の部分は空欄になっており、様々な場所でこの張り紙をテンプレ利用しているのかもしれない。
同社の広報担当者によると、10月15日に西武鉄道から譲渡されたE31型の電気機関車のイベントがあり、営業運転初日を記念し新金谷ー千頭間を往復するということで、付近はこの特別列車に乗る客や「撮り鉄」などで賑わっていたという。
ツイッターに掲載された場所取りの画像は10月16日の朝、抜里駅(静岡県島田市)の踏切近くを通りかかった人から提供されたもの。この脚立が置かれていたのは公道で、自動車2台がやっとすれ違えるような道幅だという。張り紙には脚立設置時刻が「10月14日午後5時」とあり、少なくとも1日以上道路に置かれていたようだ。
広報担当者は、「特別な列車を走らせることで、ご近所や沿線の方々に何か寄与できればいいなと思っているのに、逆に残念な形での場所取りが起きてしまった。結果的に迷惑をかけることにつながってくるため、警察に相談に行った」と困った様子。
また、「自分たちの茶畑の土地に勝手に入られて困るという声が寄せられていた。常識的な範囲で場所をとって、安全にみんなで仲良く撮影してほしい」とマナーを守るよう呼びかけている。
このように公道に物を置いて「場所取り」することに、法的な問題はないのか。西口竜司弁護士は次のように語る。
「私も『鉄』(乗りの方)ですが、流石に今回の件は行き過ぎかなという印象です。
法的にみますと、道路交通法第76条3項に『何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない』という規定があります。違反した場合、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科されることになります。
今回のケースも通行を妨害する形で物を置いており、同条に反することになります。れっきとした犯罪です」
他人の茶畑や線路敷地内に勝手に侵入して、よりいい写真を撮ろうとする「撮り鉄」もいる。この場合はどんな問題になるのか。
「最近よく問題になることですね。刑法130条記載の建造物侵入罪にはあたりませんが、人の茶畑に入る行為は、軽犯罪法第1条第32号『入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入った者』に該当します。
また、線路に侵入しますと鉄道営業法第37条の『鉄道地内にみだりに立ち入る行為』に該当します。どちらの行為もれっきとした犯罪になります。鉄道写真を楽しむことはいいのですが、犯罪にならないよう節度ある行動が望まれますね」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/