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綾瀬はるか、ママ友いじめ問題をどう解決? 『奥様は、取り扱い注意』が示す“本当の強さ”

2017年10月19日 17:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 「自分の弱さを認めるのは難しい。でも、本当に強くなりたかったら、そこから始めるしかない」。10月18日に放送された『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)の第3話。「12歳の時、私は養護施設のボスになった。もうこの頃には、生みの親が私を見つけて迎えに来てくれることや、里親にもらわれていくことは諦めていた」という伊佐山菜美(元・島田優子/綾瀬はるか)のモノローグから始まる。そして、「だから、私は一人で生きていくために、もっともっと強くなることにした」と続くのだった。


参考:高岡早紀の“隠したい過去”とは? 綾瀬はるか主演『奥様は、取り扱い注意』第2話レビュー


 エピソード03「トレーニング教室」。ある日、カツアゲの現場を通りかかった菜美は、いつものようにコッソリ事件を解決。しかし、その様子を木陰から覗きながら、動画を撮影していた主婦がいた。それが今回の物語の軸となる主婦・清水理沙(小野ゆり子)。菜美がタダ者でないことを確信した理沙は数日後、動画を手に菜美の前に現れる。そして、動画という証拠を武器に、「私に、ケンカのやり方を教えてほしいんです! 強くなりたいんです」(さもないと動画をばら撒きますよ)と半ば脅しながら頼み込む。菜美が「どうして強くなりたいの?」と尋ねると、幼稚園のママ友たちから、約半年もの間いじめを受け続けていることを告白。そのいじめの中心人物が、元女子プロレスラーのボスママ・相良貴子(青木さやか)だという。理沙は、彼女に立ち向かう“強さ”を手に入れるために、まずは肉体的な“強さ”を身につけて自信をつけたいと熱弁した。


 返事を一旦保留にした菜美だったが、貴子のやり方に反感を抱くと同時に、夫の・勇輝(西島秀俊)からの後押しもあって、理沙の頼みを受けることに。だが、菜美は「暴力では何も解決しないから」という理由で“ケンカをしないこと”を条件に提示した。その代わりに、「簡単には折れない心と、いざという時にはどこにでも逃げられる強い足を与えてあげる」という約束を結んで、理沙とトレーニングを開始する。


 勇輝が「主婦の人たちはどうしたって、狭い地域が世界の中心になりやすいから、小さな問題も大きく感じられちゃうんだよ」と言っていたように、主婦にとっては生活を営んでいるこの場所こそがすべて。そんな狭い世界で生き抜くためには、頻繁に起こる小さな出来事に対して“簡単には折れない心”と、この世界では生きていけないと追い詰められた時に“どこにでも逃げられる強い足”が、必要不可欠なのかもしれない。それを手に入れることで、“心の強さ”という本当の“強さ”が手に入るのだ。


 トレーニングを重ねる中で、着実に成長していく理沙。ある日ふと、彼女は「菜美さんは、どうしてそんな強いんですか? どうして強くなろうと思ったんですか?」と疑問をぶつける。「強くならないと生きていけなかったからかな」と答える菜美は、「子どもの頃は世界中が敵だと思ってて、絶対に負けたくなかったから、強くなるしかなかったの」と話す。これは、理沙をいじめている貴子の心境とも同じなのだろう。


 貴子は離婚間近の夫に「生活を営むというのは、正しくて強いだけじゃダメなんだ」と言われ、「家を守る人間が必要でしょ? 弱い人間にはできない」と食い下がる。彼女の中には“みんなで一緒に守る”のではなく、“一人で守るために強くなる”という選択肢しかなかった。まさに彼女にとっては、“世界中が敵”なのだ。そして、強くなろうとすればするほど空回り、心の穴が広がっていく。その心に空いた穴を夫や息子、ママ友たちを支配する事で埋めようとしていた。


 そしてついには、「ボスママ」と周囲から恐れられるまでになった貴子。しかし、彼女は狭い場所でボスを気取っているに過ぎない。いわば、“井の中の蛙大海を知らず”状態なのである。そして、そんなボスママが支配する井の中から初めて外を見上げたのが、理沙だった。「もう少しで小さな檻の中に閉じ込められるところ」だった彼女。しかし、菜美たちとのトレーニングを通して、“どこにでも逃げられる強い足”を手に入れた。「空の広さがわかってよかったです」と笑顔で語っていた理沙もまた、“井の中の蛙”状態だったが、“されど空の深さ(青さ)を知った”のだ。もしかしたら狭い世界にいるからこそ、“息子のために強くなる”という自分の道を究めることが出来たのかもしれない。


 “服従を友情と勘違いしていた”貴子は、気づいたら誰よりも孤独になっていた。周りには、家族も友達もいない。孤独という恐怖が積もり、理沙への憎しみに変わっていく。夫と離婚することになったのも、ママ友が去っていったのも、理沙のせいでないことはわかっている。でも、理沙のせいにするしかないほど、貴子は弱りきっていた。そして、ついには理沙に怪我を負わせてしまう。それと同時に理沙からも貴子からも「パキッ」と心が折れる音を聞いた菜美は、二人を助けることを決意する。そして、今回もまたこれまで培ってきた身体能力と経験で、無事に解決へと導く。


 貴子と戦った際に、菜美は「あんたは私がこれまで戦った相手の中で、一番弱かった。びっくりするくらい」と言っていた。そして、「だから、自分の弱さを認めて、肩から力を抜いて、みんなの力を借りて生きていけばいい」と。己の弱さを認め、本当に強くなった日には、貴子もまた今の菜美のように“世界中が優しく見える”のではないだろうか。(文=戸塚安友奈)