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スーパーGT:31号車TOYOTA PRIUS apr GT 2017年第7戦タイ レースレポート

2017年10月19日 11:21  AUTOSPORT web

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スーパーGT:31号車TOYOTA PRIUS apr GT 2017年第7戦タイ レースレポート
2017 AUTOBACS SUPER GT ROUND 7
チャーンインターナショナルサーキット
開催地:チャーンインターナショナルサーキット(タイ・ブリーラム県)/4.554km
10月7日(予選)天候:曇りのち雨コースコンディション:ウエット
観客数:1万5881人
10月8日(決勝)天候:雨のち晴れコースコンディション:ウエット~ドライ
観客数:2万6376人

予選、決勝ともに不安定な天候に苦しみ、あと一歩のところで入賞逃す
 全8戦で争われるスーパーGTシリーズの第7戦、『Chang SUPER GT RACE』がタイのチャーンインターナショナルサーキットで開催された。今年もaprは2台のトヨタプリウスZVW51を走らせ、『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』嵯峨宏紀選手と久保凛太郎選手に託すこととなった。

 第5戦・富士において3位入賞を果たし、今季初の表彰台獲得となったこともあり、シーズン後半戦の巻き返しが大いに期待されていたが、シリーズ最大の大一番、第6戦・鈴鹿1000kmではクラッシュを喫し、無念のリタイア。マシンには大きなダメージはなく、嵯峨選手も無傷だったのが不幸中の幸いだった。

 さて、第7戦は年に一度のアジアラウンドとして、今年で4回目の開催となるタイ、チャーンインターナショナルサーキットが舞台となる。このサーキットの特徴は、前半が3本のストレートをつないだハイスピードセクションであるのに対し、後半は中速から高速までコーナーを巧みに組み合わせたテクニカルセクションと、好対照な性格を備えていることだ。

 以前は、リチウムイオンバッテリーの海外持ち出しが禁止されているため、ハイブリッドシステムを外して挑まなければならず、特に前半セクションでの遅れが響いて、苦戦を強いられていたプリウスながら、『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』は昨年より蓄電装置がキャパシタに改められたこともあって、状況も改善されて予選8番手からスタートを切り、5位でのフィニッシュに成功している。今年は、より一層の好成績を残すことに期待がかかった。

公式練習10月7日(土)10:10~11:45
 本来、練習走行は10時から始まるはずだったが、直前のサポートレースがスコールに見舞われ、スタートが10分間ディレイとなったため、公式練習も10分間遅れでの開始となった。思えば、これが波乱の展開の前触れだったのだろう。

 過去2年間、タイのレースでは雨季の開催にも関わらず、セッション中は一度も雨に見舞われたことがない。走り初めとなる公式練習は、初めてウエットコンディションからのスタートとなった。

 最初に『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』に乗り込んだのは嵯峨選手。開始から10分経ったところから走り始め、ウエットコンディションでの周回は最小限に、タイの強い日差しが路面を完全に乾かした、ほぼ40分経過時から本格的な走行を開始する。

 事前のテストなく、年に一度だけ走るサーキットということもあり、まずは速さを磨くセットよりタイヤ選定を重視し、ピットインを繰り返しつつ嵯峨選手は走行していく。途中一度だけ赤旗が出たものの、再開後はロングをかけることに。その最中に1分34秒137と、セッションベストをマークする。

 ラスト15分間から久保選手がドライブ。周回を重ねるごとタイムを縮めていき、ラスト10分間のGT300単独セッションで1分35秒042を記したところでチェッカーフラッグが振られることとなった。

公式予選Q1 10月7日(土)15:00~15:15
 公式練習で完全に乾いた路面は、その後のインターバルに今度は嵐を思わせるようなスコールにまた見舞われて、瞬く間に水浸しとなってしまう。公式予選が始まる頃にはもう、やんではいたものの、あいにくのウエットコンディションからの計測開始となった。

 今回もQ1は嵯峨選手の担当。路面は徐々に乾いていくのは明らかだっただけに、計測開始と同時に『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』はスタートし、そのままチェッカーが振られるまで走行することとなった。

 やはりと言うべきか、最初は1分47秒台に留まっていたが、まもなく1分41秒台に入れると、嵯峨選手は次第にタイムを刻んでいくこととなる。そして、いったんクールダウンを挟んでラストアタックに挑戦。1分41秒092をマークして12番手につけ、Q1突破に成功した。

公式予選Q2 10月7日(土)15:45~15:57
 インターバルに再び雨が降るも、今度はそう路面は濡らさず。中にはドライタイヤでスタートしたドライバーもいたが、さすがにそれはギャンブルに終わったようで、ほぼ全員がタイヤを変えにピットに戻ってくる。Q2担当の久保選手が履いたのは、もちろんウエットタイヤ。

 また雨が降ってくるか分からないから、早めのアタックを仕掛けようという算段だ。

 ところが、その最初のアタック中にコースアウトした車両があって、久保選手は一瞬アクセルを戻さざるを得ず。それでも1分40秒940が出ていただけに、まだまだタイムアップは可能だと思われた。

 しかし、必死にタイヤを冷やし、ラストアタックをかけた久保選手だが、1分42秒009を出すに留まり、最初のアタックが自己ベストに。それでも『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』は10番手。5列目からのスタートであれば、展開や天候次第によって十分に入賞が狙えるはずだ。

嵯峨宏紀選手
「タイでは初めてのウエットコンディションだったが、アタック自体はそこそこうまく行ったんですけれど、路面のμが低いからなのか原因は分かりませんが、最後までグリップが来ませんでした。あらためてまわりの状況を見ると途中でピット入っていたので、僕も途中でNEWタイヤを入れても良かったんじゃないか、とは思いました」

「これだけ晴れていったら、日本の路面なら路面はどんどん良くなっていたはずなので、そのあたりに判断ミスがあったのかもしれません。決勝に向けてドライコンディションの感触は悪くないので期待できます。」

久保凛太郎選手
「公式練習ではドライだけ走ったので、予選で初めてウエットタイヤを履いたんですが、最初のアタック中に飛び出して戻ってきたクルマがあり僕のラインと重なりそうになったので、アクセルを抜いた周が結局ベストタイムになってしまった」

「その後、もう一度アタックしたんですが、セクター1、セクター2まで良かったけれど、セクター3でリヤタイヤがオーバーヒートしてしまったので、そこから2周半ぐらい、とにかく冷やしに冷やして、もう一回行ったんですが、タイヤのピークはもうなくてました」

「もっとちゃんと1周目を決めなければいけなかったんですが、手探りのアタックになってしまったことは反省しています。今回、しっかりポイント獲って帰れるようであれば、最終戦のもてぎは面白くなるでしょうから、まずはこのタイのレースを頑張ります。言い訳ばかりで、すいません。」

金曽裕人監督
「凛太郎は、いちばん美味しいタイミングで引っかかっちゃいました。1周に集中して行かなきゃいけなかったんですけど、タイミング悪かった。もうちょっと予選のやり方を勉強してもらわないといけないですね。思いのほかロスしているから、本当は上位に行けるはずだったので残念」

「逆に宏紀は手探りでも、きれいにQ1を突破しているだけに、そこは格と経験の違いという感じですかね。まぁ、決勝の作戦はできていますので、5列目でも大丈夫です。決勝の追い上げに期待してください!」

決勝レース(66周)10月8日(日)15:00~
 タイ国王逝去から1年経ってなお、国内は喪に服していたこともあり、派手なイベントはほとんど行われなかったものの、高いモータースポーツ人気を示すかのように、今年もグランドスタンドは満員。きっとレース観戦中は寂しさを抑えつつ……という感じなのだろう。

 今回はスタート進行の始まりとともに行われる、ウォームアップ走行の前にもサーキットサファリが設けられ、両セッションでドライセットがあらためて詰められることとなった。今回も久保選手がスタートを担当することもあって、いずれも最初に乗り込み、途中で嵯峨選手に交代することとなった。

 サーキットサファリでは1分34秒914を、ウォームアップでは1分34秒477を、終了間際に嵯峨選手がマークして準備万端。ところが、全車グリッドに着いた直後に、またしてもスコールが!それまでほど強くも長くも降らなかったとはいえ、路面は再び濡らされてしまう。

 ただし、すぐ乾くことは明らかだったことから、中には果敢にもドライタイヤを装着した車両もあったが、『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』は手堅くウエットタイヤで久保選手を送り出す。決勝レースはセーフティカースタートでの開始となるも、1周の先導のみで激戦の火蓋が切られることとなった。

 さっそく1台をかわした久保選手は、4周目に先行を許した車両を2周後には抜き返すなど、滑り出しは上々。しかし、路面の渇きは予想をはるかに超えて早かった。堪えきれず9周目あたりから、もうピットに駆け込む車両もいる中、久保選手にはなんとかコースに踏み留まって欲しかったものの、無線で「タイヤが壊れました」という悲痛な叫びが……。

 ミニマム周回の20周目の交代を予定していたものの、やむなく2ピット作戦に切り替え、14周目に『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』をピットに呼び寄せてドライタイヤに交換。ドライバーは久保選手のまま、その間に17番手まで後退してしまう。

 20周目には1台を抜き、さらに他の車両もドライバー交代を行なうと4番手まで浮上したが、そのまま走り続けるわけにはいかない。

 26周目に嵯峨選手と交代した『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』はタイヤ無交換で、コースに送り出されたものの、再び14番手にまで後退せざるを得ず。それでも諦めずに走り続けた嵯峨選手は、最初からドライタイヤで走っていた車両のピットイン、また上位陣の脱落もあって46周目には10番手と、ついに入賞圏内に戻ってきた。だが、53周目、54周目に相次いでかわされる。

 ラスト2周でガス欠症状に見舞われた車両が1台止まったこともあって、ひとつ順位を戻すことになったものの、入賞まであと一歩の11位という結果に甘んじた。その結果、一縷の望みが残されていたチャンピオン獲得の希望は、ここで絶たれることとなった。

 しかし、全車ノーハンデの戦いとなる最終戦の舞台、ツインリンクもてぎは昨年ポールポジションを奪って、決勝でも2位に。相性は『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』は抜群のサーキットだ。「終わり良ければ、すべて良し」、それを地で行くような活躍を期待したい。

嵯峨宏紀選手
「結論から言えば、2ピットが、いちばん大きかったですね。この時点で、戦略で取り返すのは当然のことながら無理なので、その中でできることを僕はやっていたんですが、さらに後半ペースも上がらず、ずるずると抜かれて行くだけのレースになってしまいました」

「次は特にブレーキが大変なもてぎなのですが『#31 TOYOTA PRIUS apr GT』と相性が良いサーキットなので、そこでいい状況を作れれば、もてぎだけでなく来年につながるのでは……。絶対、そういうレースにしてみせます!」

久保凛太郎選手
「早々にドライ路面に変わって、ドライ路面でも走れるようなウエットタイヤを選んでいたので、雨の多い時は苦しかったのですが、乾いてきてからは良い状況でした」

「なのに僕の判断ミスで、ウエットタイヤが音を上げたと思い、作戦を切り替えてもらって早めにドライタイヤに交換したんですが、あと6周、7周、そのウエットタイヤを保たせて引っ張っていれば、間違いなく入賞はできたはずなので……。僕に焦りがありました。みんなに申し訳なく思います。本当にすみません……」

金曽裕人監督
「そもそも2ピットの予定は全くなく、スタートから凛太郎にミニマムの周回まで行ってもらうはずだったんです。でも、タイヤが壊れたというインフォメーションが入ったので、前戦みたいなクラッシュは避けなきゃいけないのでピットに入れました」

「ところが、どんどんドライ路面になりウエットタイヤ内圧が上がってグリップが下がっただけでした。結果は11位で終わりました。1ピットならば、まだまだ上を狙えた、レースでした」

「ドライバーの命を預かってレースをやっているから、入れるしかないと判断したが、実際にはブリヂストンのタイヤはさすがであり、全く問題は無かったです。せめて、あと6周頑張ってくれればと……」