2017年10月18日 10:13 弁護士ドットコム
「クソがきども」などと脅し文句を書いたわら人形を小学校の通学路につるしたとして、東京都江戸川区の男性(41)が9月27日、脅迫の疑いで警視庁小松川署に逮捕された。
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報道によると、男性は江戸川区の小学校の通学路の途中にある歩道橋の手すりに「小学校のクソがきどもここからとびおりてみんな死ね」と書いた紙をつけた人形をつるし、児童を脅した疑いがある。
逮捕容疑となった「脅迫」といえば、特定の個人を指すケースを多く見るが、今回のように不特定多数に対してでも「脅迫罪」にあたるのだろうか。松岡義久弁護士に聞いた。
脅迫罪とはどういう犯罪なのか。
「脅迫罪は、本人またはその親族の『生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した』場合に成立します(刑法第222条)。脅迫とは、『人を畏怖させるに足りる害悪の告知』と言われています」
どういった手段であっても、相手に害を加える旨を知らせれば「告知」になるのか。
「はい。告知の方法は、相手方(被害者)に知らしめる手段をとって、それによって相手方が知れば良いのです。その手段は直接、間接を問いません。
例えば、相手方の自宅付近に脅迫状を配布する、相手方の目に触れやすい場所に脅迫状を掲示するなどの方法でも、相手方がその内容を知れば脅迫罪は成立します」
特定の個人ではなく、不特定に向けての内容だった場合はどうか。
「その告知の手段をとった時点では、告知内容の害悪が不特定の者に向けられた場合でも成立する余地はあります。例えば、落とし文を拾った者に対して害悪を加える旨を記載して実際に拾った者がこれを読んだ場合などです。
その場合、告知者の意思によって実現可能なものであると相手方に思わせるような加害内容である必要があります」
今回の事件では、「脅迫罪」は成立するのか。
「あくまでもニュースだけの情報によりますが、今回の事件は、歩道橋の手すりに紙をつるした方法や、対象がそこを通行する不特定の小学生だとしても、現実にこれを見た小学生に対する脅迫罪が成立する余地があります。
ただ、今回は『死ね』との記載であり、例えば『殺す』や『死ぬことになる』など『害を加える』ことを告知しているものではないのではないかという点で、脅迫罪の成立に疑問が残ります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
松岡 義久(まつおか・よしひさ)弁護士
横須賀市内(京急横須賀中央駅徒歩5分、裁判所徒歩2分)で事務所を共同経営するパートナー弁護士。京都大学法学部卒、警察庁(国家Ⅰ種)を退職後、2回目で司法試験合格。相続、交通事故、債務、離婚、中小企業、行政のトラブル、顧問など幅広い分野を専門に扱う。
事務所名:宮島綜合法律事務所
事務所URL:http://www.miyajimasougou.com/