ジェンソン・バトンはマクラーレン時代にチームメイトだったルイス・ハミルトンを大いに賞賛しているが、彼らは仲こそ良かったものの真の友人ではなかったという。
バトンは新たな自伝、“Life at the Limit”で自身の傑出したキャリアを振り返り、ルイス・ハミルトンとの関係について洞察している。
「グリッド上のすべてのドライバーの中でも、彼は真の“才能”を持っている男だ」とバトンは書いており、ハミルトンを「名ドライバーのひとりではあるものの、少し風変わり」と表している。
バトンはタイトルを獲得した翌年の2010年にマクラーレンに移籍。当時のマクラーレンは、ハミルトンに専念したチームであると考えられていた。父親と取り巻きに守られたハミルトンはマクラーレンで特権的な地位にあり、新チームメイトであるバトンを脅威と見なした。
「個人的には彼は僕に対して感じが良く、その段階で問題は何もなかった。でも彼には多少不満があったようだ」
「僕が彼のチームにいるということがね。それに僕に言わせれば、彼はマクラーレンが今ではふたりのチームであるという事実と折り合いをつけるのを、難しく思っているようだった」
「だから僕たちが勝って順位を上げることで、雰囲気を軽くすることができたのは良かったよ。(でも)ルイスの気に入ることかどうかはわからなかった。正直に言えば、僕は彼の気にいる人間ではなかったと思う」
マクラーレンはバトンとハミルトンを友人として描こうと努めたものの、ふたりの間で一触即発の事態になることは珍しくなかった。2010年のトルコGPではハミルトンが、彼に追い越しさせるためのチームオーダーをバトンが無視したとして非難した。
「人として、僕たちには共通点がたくさんあった」とバトンは話し、以下のように続けた。
「ふたりともカートの経験がある。彼の父親が僕の父の顧客だったことは言うまでもない」
「それに大半のF1ドライバーと違って、僕たちはふたりとも特別に裕福な家庭の出身ではない。才能と多くの努力でもって今の成功を収めたんだ」
「一緒にいるときは良い時間を過ごすことができていた。彼はいつも父と会話を始めて、僕らは出歩いたりもした」
「でも同時にひどく気まずくて不快な沈黙になるときもあって、僕はよく『この沈黙は何を意味するんだろう?』と考えた」
しかしながらバトンは、ハミルトンの人格は彼の並外れた成功に伴って進化し、変化してきていることを認めた。
「彼は才能を生かしながら努力を重ねてきた。結果、いまは性格が丸くなったみたいだね」