ニキ・ラウダは、メルセデスF1チームの首脳陣が2016年にルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグの両者を解雇しかねない状況にあったことを明かした。
これは、昨シーズンのスペインGPでふたりが接触し、リタイアとなったことに端を発するものだった。チームのノンエクゼクティブチェアマンであるラウダは、グラハム・ベンシンガーのYouTubeの番組で当時のことを振り返り、以下のように語っている。
「特にバルセロナでふたりがリタイアした後には『これはメルセデスにとって受け入れ難い事態だ』と言い聞かせた」
ラウダはまた「今後も同じことがあったら、ふたりとも契約を解除することを考えなければならなくなる。ここでの我々はチームプレーヤーであり、互いを台無しにしてはならないのだ」と両者に警告したという。
ラウダは、チームの全員が納得し、上手く機能するチームオーダーを導入したトト・ウォルフを高く評価する。
「我々はルールを設けた。(チームメイトへの接触は)許可できない。同じことがあった場合にはペナルティを科すというものだ」
「トトは良いルールを思いつき、我々には平和な日々が戻ってきた。我々は懸命に戦い、ふたりの事故は減っていった」
高い代償を払うことになったバルセロナでの事故は、そもそも誰が責められるべきだったのだろうか。ラウダは、1周目のターン4でオーバーテイクを試みたハミルトンに責任があると言う。
「大きな議論となったのは、誰が悪かったかだ。私としては、明らかにルイスが攻撃的になりすぎたと思っている。ルイスが右に寄っていき、芝に乗り上げてマシンを止められなくなって(ニコに)ぶつかったのだ」
「もしもふたりのうちどちらの責任が重いかと聞かれたら、ニコよりもルイスであると、あの後すぐに話している。ルイスは違う意見だったから、納得していなかったけれどね」
意見が食い違ったラウダとハミルトン、ロズベルグは、レース後のモーターホームで率直な意見のやり取りを行った。
「彼は『なぜ僕を批判するんだ?』と言った。私は『悪いけど、ふたりがクラッシュしてどちらも悪くないなんてことは受け入れられない。私の意見では、誰かに責任があるんだ』と答えたよ」
「ルイスは本当に腹を立てていた。ニコは『そうだね、君はイン側に向かって動いた。なぜスペースを残さなかったんだ?』と言った。ルイスは『僕はレースに勝ちたいのに、なぜそんなことをする必要があるんだ?』と言い返したんだ」
この件を受けて、後にSky Sports F1は、批判を受けたハミルトンがチーム離脱の危機にあると報じていた。
その後、ラウダとハミルトンは1対1での話し合いを行ったものの、彼とロズベルグの関係性が良くなることはなかったという。
「ふたりの間に関係などなく、良くない状況だった。朝に顔を合わせても挨拶することもないくらい悪かった」
「お互い好きになれないのだから、一緒に朝食をとるようなことを期待していたわけではない。けれども関係性は非常に悪かった」
「彼らは互いにどんなセッティングで走っているかも見せ合わず、我々としてはふたりとも前進してもらいたかったので、チームにとっては良くない状況だった」
「相手をだますようなこともあったから、パフォーマンスが良くないときのルイスはとても腹を立てていたよ」
最終的にはロズベルグが2016年のタイトルを獲得。彼はそのわずか5日後に引退を表明した。ハミルトンはチームに残留し、現在はドライバーズ選手権で2位のベッテルに59ポイントの差をつけトップに立っており、今季のタイトル獲得に王手をかけている。