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城田優、『亜人』悪役の圧倒的な存在感ーーどんな芝居もこなす“実力”を読む

2017年10月16日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 桜井画門の大ヒットコミックを、『踊る大捜査線』シリーズの本広克行監督が実写化したアクション大作『亜人』が好調のようだ。佐藤健演じる主人公・永井と、綾野剛演じる大量殺人を目論むテロリスト・佐藤の、死んでも生き返る“亜人”同士の終わりなき戦いがフィーチャーされる本作において、この二人以外の“亜人”キャストのインパクトも忘れてはならない。


参考:実写版『亜人』はなぜ“原作とは異なる展開”で成功した? アクション映画としての潔さを考察


 永井側につく、厚生労働省の戸崎(玉山鉄二)の秘書でありボディガードでもある下村を演じる川栄李奈は、元AKB48というキャリアを活かした身体能力の高さでキレのあるアクションを見せる。一方、敵対する亜人グループのひとり、奥山を演じる千葉雄大は、持ち前のインテリらしさが似合う風貌で佐藤の計画をサポートしていく。


 そして、そんな彼らの中でひときわ存在感を見せつけるのが、佐藤の右腕として共に行動する田中を演じた城田優だ。シネスコサイズの画面を突き抜けそうなほどの長身を活かし、内面的狂気を備えた佐藤のキャラクターとは対照的な、外見的な凶暴さを体現する。日本映画の悪役として、あまり見かけないタイプの圧力を発揮しているのだ。


 この田中というキャラクター、主人公の永井よりも前に発見された“亜人”として、国から実験台にされていたところを、佐藤に助けられ一味に加わる過去を持つ。自分がされていた仕打ちを知り、悪として描かれる立場にありながらも、様々な苦悩や葛藤が込められているという、ドラマ性を高めるキャラクターのひとりとして、重要なポジションでもある。


 もちろん、その内面的葛藤を表現する表情だけでなく、見せ場となるアクションシーンも実に華々しい。最初に彼が登場する研究所のシーンでは、その体の大きさを持ってパワフルに暴れ回り、クライマックスの下村との決闘シーンでは、40cm近くある身長差が、そう簡単に太刀打ちできない相手だという強さを物語る。


 城田といえば、本作で“亜人”の一味として共演している山田裕貴をはじめ、瀬戸康史や志尊淳らが参加しているD-BOYSの初期メンバーとして、舞台を中心に活動していたキャリアを持つ。日本人とスペイン人のハーフで、整ったルックスとモデルのような体型で、一見すると“つぶしの効かない”タイプの俳優ではないかと思わせる。ところが、そんな外見的なイメージとは裏腹に、三枚目の芝居を厭わず、コミカルな芝居を次から次へとこなす。


 もちろんミュージカル『テニスの王子様』や、『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系)のように、いわゆるイケメン俳優としての役割をきちんと果たしながらも、EXILEのAKIRA主演でシリーズ化された『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)では、AKIRA演じる鬼塚英吉の親友・龍二役を好演。98年に反町隆史主演のオリジナルでは藤木直人が演じたこのキャラクターを、さらにコミカルに演じ抜いたのだ。


 そして『表参道高校合唱部!』(TBS系)では、だらしない性格の音楽教師を演じた城田。主人公に歌うことの魅力を伝えたという重要な役柄であり、過去には教え子とのトラブルもあったことが明かされる、深みのあるキャラクターだ。さらに、何と言っても一昨年公開された映画『明烏』での、空回りしつづけるホスト役がこれ以上なくサマになっていた。見た目との完全なるギャップだけに頼らず、どことなく哀愁を漂わせる表情で、その好感を高めていく。日本の俳優界ではなかなか稀有な存在なのではないだろうか。


 そこに、今回のようなアクションをこなし、悪役を演じきるスキルも証明したならば、ますます役者としての価値は高まる。とりわけ実写化不可能と言われるクラスの、アクション漫画原作の映画化が後を絶たない昨今では、抜群のヴィジュアルと日本人離れした存在感、どんな芝居もこなすバリエーションの豊富さなど、必要な要素が全部備わっている彼のような俳優は、重宝されるに違いない。


■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。