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ROLL-B DINOSAUR 織田&ユカイが語るロックンロール論「ブルースをベースにした音楽をエンターテインメントに」

2017年10月15日 16:03  リアルサウンド

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 織田哲郎(Gt)、ダイアモンド✡ユカイ(Vo/RED WARRIORS)、CHERRY(Dr/LINDBERG)、ASAKI(Gt/GUNIW TOOLS)、JOE(Ba/FUZZY CONTROL)によるロックンロールバンド、ROLL-B DINOSAURが2ndアルバム『SUE』をリリース。既にライブで披露されているリード曲「ガンガン」を含む本作には、ブルース経由のロックンロールを軸にしたバラエティに富んだ楽曲を収録。織田のギター、ダイアモンド✡ユカイのボーカルを中心にしたバンドサウンドもさらに迫力を増している。


 今回は織田、ユカイの両名にインタビュー。アルバム『SUE』の制作をフックにしながら、このバンドにかける思いを語ってもらった。(森朋之)


・有機的な結びつきが生まれている(織田哲郎


ーー1stアルバム『ROLL-B DINOSAUR』以降も精力的にライブ活動を展開。結成から2年以上が経ちましたが、ここまでの手応えはどうですか?


織田哲郎(以下、織田):そうですね……。まずROLL-B DINOSAURは、きちんと新人バンドなんですよ。


ダイアモンド✡ユカイ(以下、ユカイ):そうだね。メンバー一人ひとりのキャリアは関係ないんだよ。織田さんは日本有数の作曲家だし、俺もロックシンガーとしてずっと歌ってきたけど、バンドとして活動する以上、“いかにバンドを前進させるか”が大事だから。大体さ、この年齢になって今さらバンドを組むってなかなかないでしょ? やるとしても、もうちょっと楽な感じで活動すると思うんだよ。ROLL-Bは全然違っていて、まるで中学生か高校生の頃にバンドを組んだフィーリングなんだよ。「なかなか前に進まない」という感じもあるしさ。


織田:ハハハハハ(笑)。


ユカイ:とにかくバンドの音が前に飛ばないと、誰も聴いてくれないから。今はそれを実感してるかな。


織田:もちろん手応えも感じてるけどね。ライブを重ねるたびにバンドの音はどんどん良くなってるから。


ユカイ:そこだよね。ライブって、荒波のなかを航海するような感じなんだよ。船で進んでいくなかで「こういうときはこうすればいいんだ」ということがわかってくる。特にROLL-Bは新人バンドだから、ずっと航海を続けないとね。


織田:regret(後悔)のほうじゃないよね?(笑)


ーー(笑)。ライブを重ねるなかで、音楽的な広がりも感じているのでは?


織田:そうだね。ロックンロールバンドであるという本質は変わらないんだけど、自由度は広がっているから。1stアルバムのときは俺ら自身のこともよくわかってなかったというか、「まずはこのメンバーで音を出してみよう」から始まって。実際にやりながら「なるほど、君はそういうミュージシャンなのか」「そういう性格なんだね」という理解が深まって、有機的な結びつきが生まれているんだよね。その状態はいまも続いているし、その結果、曲のパターンもいろんな方向に広がっているんだと思う。


ユカイ:ロックンロールっていうバンドの幹がしっかりできたことで、いろんな音楽がやれるようになっているんだよね。ようやくバンドの実態が見えてきたし、すごく楽しいよ。


織田:猛烈に楽しいね(笑)。ご存知の通り、俺は一人でも音楽を作れるんだけど、ROLL-BではユカイくんやASAKIくんも曲を書くでしょ。そうするとね、俺一人では絶対に思い付かないようなものを持ってくるわけ。今回のアルバムでいうと「はずれクジ」という曲もそう。どういう歌詞にしようか悩んでるときに、ユカイくんが「女目線の歌詞はどうよ?」って言ってきて。ダイアモンド✡ユカイが女言葉の歌詞を歌うなんて全く想像してなかったから「おもしろい!」と思って。


ユカイ:「はずれクジ」はパンキッシュなロックナンバーで、メロディもカッコよくてポップ。若いバンドだったら青春パンクみたいな歌詞がハマりそうだけど、俺らは若くないから(笑)、そこで織田さんが悩んでたんだよね。で、織田さんが失踪しちゃって。


織田:いや、だからそれはさあ……(笑)。


ーーどういうことですか?


ユカイ:1stのときはすごい勢いで曲が送られてきたんだけど、今回はレコーディングのスケジュールが決まってもなかなか曲が上がってこなくて。どうなってんのかなと思って電話しても通じないんだよ。で、事務所の人に聞いたら「失踪しちゃって、連絡が取れないんです」って(笑)。


織田:ホントにすいません(笑)。あのね、7月に自分のシングル(『CAFE BROKEN HEART』)を久々に出したんだけど、その歌詞がなかなか書けなくて。その後ROLL-Bの楽曲に取り掛かる予定だったんだけど「これはダメだ」と思って逃げたんです。沖縄に行って、フラフラしてました。


ーーすごい。行動もロックミュージシャンですね。


織田:(笑)。これまでの経験上、ジッとしたまま煮詰まっていても埒が明かないってわかってるんですよ。空気を変えたほうが絶対にいいから。


ユカイ:実際、その後はどんどん曲が出来たからね。「はずれクジ」に話を戻すと、また織田さんが悩みそうになっていて、眉間にシワが寄ってたから「これは自分からアイデアを出したほうがいいかな」と思って「女目線の歌詞はどう?」って言ったんだよね。きっかけは「外は白い雪の夜」という吉田拓郎さんの曲をカバーしたことかな。男女が語り合う歌なんだけど、女のパートを歌っているときになぜかリアリティを感じて。ROLL-Bは男くさいバンドだけど、女目線の曲もありだなと思ったんだよ。織田さんも「それはいいね」って乗ってきて、次の日に歌詞を書いてきてくれて。


ーー“はずれクジの男を引いてしまった”という女性が主人公の歌ですね。


織田:1stアルバムに入っていた「くずの詩」のアンサーソングですね。この曲を聴いた女の人がよく「モデルは私でしょ?」って言うんだけど、そんなに思い当たるフシがあるのかな(笑)。


ユカイ:俺もここまでのリアリティは求めてなかったんだけど(笑)。織田さんは数々の女性シンガーの曲を書いてきてるから、それが活かされているんだろうね。


ーーユカイさんが作詞した「石ころの唄」もすごいリアリティですよね。モヤモヤした気持ちを抱えたまま生活する男の姿が生々しく描かれていて。


ユカイ:大人の男のブルースだよね。男が大人になる時にすることというか……。俺も遅まきながらパパになったんだけど、いろいろ大変じゃない? 女性はママ友がいるでしょ。それはそれで大変なことが多いみたいだけど、気持ちを吐き出す場所でもあって。でも、男はそういう場所がないからね。仕事もあるし、家に帰ればママからストレスをぶつけられて。


織田:なんてリアルな話をしてるんだ(笑)。


ユカイ:10代の頃だったら「知らねえよ」ってひっくり返せば良かったかもしれない。ジョンも〈When I was a boy everything was right〉(「She Said She Said」/The Beatles)を歌ってるでしょ。「俺がガキの頃はすべてが正しかった」ってことだけど、大人になれば「そんなことはないよな」ということが分かってきて。正しいことが通らないのが社会だしね。そういう気持ちを吐き出してシャウトしたのが「石ころの唄」なんだよ。


織田:まさにブルースだね。「はずれクジ」と「石ころの唄」では主人公がまったく違うけど、ユカイくんが“フリ”をするのではなくて、血が通ったブルースとして歌えるんだよ。


ーー〈ガンガン行こうぜ 悶々とせずに〉とメッセージする「ガンガン」、“いつまでも覚めない夢”をテーマにした「Neverending Dream」なども、ユカイさんが歌うからこそ成立する楽曲だと思います。


織田:そうだね。だから歌詞を書いていてもすごく楽しいんですよ。「ガンガン」には〈反省は もうしない/馬鹿だから〉って書いちゃったけど(笑)。


ユカイ:まあ、誰でもバカな部分は持ってるから(笑)。「ガンガン」もそうだけど、曲自体はストイックなものが多いんだよね、今回のアルバムは。「MY BABY BLUE」「暴言野郎」もサウンドはストイックでしょ。


織田:うん。


ユカイ:でも、歌詞によって曲のイメージがガラッと変わることがけっこうあって。そういう変化も楽しかったね。「ガンガン」について言えば、「ライブで新曲をやろうよ」という話からできた曲で。しかも歌詞が織田さんから送られてきたのが……。


織田:ライブ前日の朝(笑)。そのときもなかなか歌詞が書けなかったんだけど、ギリギリになっていい具合に開き直れて。


ユカイ:俺は覚えが悪いからさ、本当は何回も復習しないとダメなんだよ。「ガンガン」は翌日ライブでやらなくちゃいけなかったんだけど、これが思った以上に盛り上がって。この曲が出来たことで、アルバムに向けた突破口が開いた感じもあったかな。


織田:綱渡りだったけどね(笑)。


・歌とブルースハープが、自分のスタイルになってる(ダイアモンド✡ユカイ)


ーーユカイさんの作詞作曲のよるロックバラード「アナスタシア」もアルバムのポイントだと思います。


織田:そう、「アナスタシア」があるからアルバムが締まっているんです。この曲にはシンガーとしてのダイアモンド✡ユカイがしっかり存在しているので。


ユカイ:「アナスタシア」を織田さんが気に入ってくれたのはすごく嬉しかった。ただ、この曲にはキーボードが入っていて。


織田:俺がオルガンとグロッケンを入れたからね。


ユカイ:織田さんのなかには「ライブはサポートミュージシャンを入れないでメンバーだけでやる」という鉄則があるみたいだから、ライブでやるときはどうするのかな? というのがあるけどね。


織田:いろんな形があると思うけどね。俺がエレピを弾いてもいいだろうし。


ユカイ:あと、この曲にはハーモニカも入ってるんだよね。歌い終わった後の余韻に浸りたいところなんだけど、エンディングまでずっとハーモニカを吹かないといけないっていう。


織田:それはしょうがないよ。ユカイくんのハーモニカがすごくいいんだから。


ーーユカイさんはブルースハープのイメージも強いですからね。


ユカイ:そうかもね。歌とブルースハープというのが、自分のスタイルになってるというか。自分が憧れてきたロックシンガーも、みんなブルースハープを吹いてるんだよ。ミック・ジャガー、スティーブン・タイラー、ロジャー・ダルトリーもそうだし。


織田:ロバート・プラントもね。


ユカイ:あとはThe Yardbirdsのキース・レルフも。ハープを吹いてロックを歌うというのが当たり前だったんだけど、俺はそれを引き継いでるんだよね。いま、そういうタイプのロックシンガーはほとんどいないけど。


織田:断絶しちゃってるよね。


ーーROLL-B DINOSAURの音楽性の軸になっているブルース経由のロックンロールも、いまの日本にはほとんど存在しないですからね。


織田:まさにそれをやりたかったんだよね、俺たちは。ブルースをベースにロックンロールをやりたいし、その伝統をちゃんと引き継いでいきたいので。ただ、渋くやるのは違うと思っていて。


ユカイ:うん。


織田:ミック・ジャガー、ロッド・スチュワートもそうだけど、ブルースをベースにした音楽をエンターテインメントに出来るシンガーを見て育ってるからね、俺たちは。それを実現できるシンガーはユカイくんしかないでしょ。


ーーROLL-B DINOSAURは織田さんのギタープレイが楽しめるバンドでもあります。ユカイさんはギタリストとしての織田さんをどう感じていますか?


ユカイ:織田さん自身は、こういうロックンロールバンドをやってきた人ではないんですよね。ソロとしてはジェームス・テイラーみたいなタイプのアーティストというか。でも根底には、ものすごくロックギタリスト的なものがあるんだよ。そんな織田さんがロックンロールギターを弾いているのは、それを知らない人からするとすごく新鮮だし、それはリスナーにも伝わっているんじゃないかな。


織田:もともとプロのギタリストになりたいと思っていたし、ロックンロールのギターを弾きたいと思っていたんですよね。だけど自分で歌うときはアコギやピアノの弾き語りみたいな地味な方向へ行きがちだし、本当は人前に出るのも好きじゃないんです(笑)。歌い始めた頃なんて、MCもまともにできなかったから。


ユカイ:俺もそうだよ。昔はしゃべるたびに問題発言ばかりだから、「MCしないほうがライブが上手くいく」って思ってたよ(笑)。「暴言野郎」(『SUE』収録楽曲名)だね(笑)。


織田:それでも人の目を引き付けるわけでしょ? バンドのボーカリストはエンタテインメントの才能がないとダメなんだけど、俺はそうじゃなくて、ただ音楽が好きだったんです。だけどロックギターはずっと弾きたいと思っていて……。相川七瀬のプロジェクトも、俺がギターを弾きたいから始めたところもあったんだよね。


ユカイ:ハハハハハ! 


織田:「SWEET EMOTION」(相川七瀬)なんて我ながらいいギターを弾いてるなって思うけど、相川の場合は(プロデューサーが)本人の横でずっとギターを弾いてるっていう見え方も良くないと思って。だけど「ギタリストとしてバンドをまとめたい」という気持ちはずっと持っていたし、それがユカイくんとROLL-B DINOSAURを結成した理由でもあるんです。


ーー10月後半から11月にかけてアルバム『SUE』リリース記念ライブ『ROCK’N’ROLL BOUT』が開催されます。


織田:いいアルバムができたと思っているし、若い人たちにも聴いてもらって、ライブにも来てほしいね。


ユカイ:That’s right!! 聴いてもらわないと何も始まらない。新しいバンドだし、ライブに来てもらうというのはかなりハードルが高いと思う。それをどう超えていくかっていうのが、今後のテーマかな。聴けば「いいな」と感じてもらえる自信はあるよ。一緒に盛り上がりたいね。


(取材・文=森朋之)