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“日本で一番若い校長”櫻井翔は、新たな教師像を生み出す? 『先に生まれただけの僕』第1話レビュー

2017年10月15日 12:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 嵐の櫻井翔が、実年齢と同じ35歳で校長先生を演じる日本テレビ系ドラマ『先に生まれただけの僕』が14日からスタートした。「おそらく日本で一番若い校長」と劇中で自らが語るように、世の中の校長のイメージといえば、ある程度貫禄を携えた熟年の教育者。それを国民的アイドルグループ・嵐の櫻井が演じ、どう覆していくのかと漠然と思っていたのだが、もしかするとシビアな視点で「教育ビジネス」を描き出した社会派ドラマなのかもしれない。


参考:櫻井翔のコメディセンスは想像を超えていたーー『先に生まれただけの僕』制作陣インタビュー


 第1話では、大手商社で敏腕営業マンとして地方支店を立て直した主人公・鳴海涼介が、同社が経営する私立高校の校長に異動させられるところから始まる。経営難に陥った高校を立て直すために、序盤から他の教員にヒヤリングを重ね、改善点や無駄を省く方法を訊ねていく。さらに、受験者を増やすための営業活動をしていくうちに、学校の教職員の姿勢に疑問を持ち始めるのである。


 これまでも学園ドラマは数多く作られてきたが、教師を主人公にした作品であっても、物語の軸となるのは常に生徒であった。しかし、本作は生徒の存在をひとつのきっかけにして、教育経験のないサラリーマン校長と、教育者としてのプライドを持つほかの教職員の軋轢が、学校をどう変えていくのかという点にフォーカスが当てられていく。


 生徒はクライアントであり、商品。学費を払っている親は株主であり、あくまでも学校という場を「ビジネス」として捉える主人公。たしかに、生徒は教育を受けた先に必ず社会生活が待ち受けているということを踏まえれば、その考え方はあながち間違っているものではない。それをどうやって学校の目的である「教育」のひとつとして、高校生や他の教職員たちに伝えていくかが、櫻井演じる鳴海の課題だというわけだ。


 主人公が異業種から教師になる学園ドラマといえば、たとえば元暴走族の弁護士が東大進学クラスを受け持つ『ドラゴン桜』のように、学校の空気をガラリと変えて行く楽しさがある。それは『GTO』や『ヤンキー母校に帰る』など、教育現場の保守的なイメージを覆す新たな教師像が確立された作品にも共通している。本作はどちらかといえば“学園ドラマ”というより、現代的な“教育ドラマ”と呼ぶ方がふさわしいのだろうか。それでも、この櫻井の校長役は、また新たな教師像を生み出してくれるに違いない。


 また、これから3ヶ月続いていく連続ドラマとして、軽やかでテンポの良い構成は観ていてとても馴染みやすく、脇の教師陣などの豪華なキャスティングに、かなり青田買いしている生徒役の顔ぶれ(公式ホームページには生徒全員の名簿が掲載されている)は興味深い。これは面白いドラマになりそうだ。


■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。