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乃木坂46のソロ写真集はなぜ売れる? “グループの特性”からその傾向を分析

2017年10月15日 12:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 乃木坂46メンバーによるソロ写真集の勢いが止まらない。


 オリコンが6月1日に発表した「オリコン2017年上半期“本”ランキング」写真集部門では、現在も重版が続く白石麻衣の2nd写真集『パスポート』(講談社)を筆頭に、2位に齋藤飛鳥『潮騒』(幻冬舎)、3位に橋本奈々未(現在はグループを卒業)『2017』(小学館)、4位に衛藤美彩の『話を聞こうか。』(講談社)、5位に秋元真夏『秋元真夏ファースト写真集 真夏の気圧配置』(徳間書店)、6位には西野七瀬の『風を着替えて』(集英社)、7位には桜井玲香の『自由ということ』(光文社)が数万部のヒットを飛ばし、それぞれランクイン。このあとも新内真衣、堀未央奈、松村沙友理、若月佑美、与田祐希の初写真集が年内発売を控えている。


 乃木坂46メンバーの写真集はなぜ、ここまで大きな売上を立て続けに記録するのだろうか。同グループに詳しいライターの香月孝史氏は、その状況が生まれた背景として「女性アイドルという存在が、近年カジュアルに受け止められるようになった」ことを挙げる。


「もちろん、女性アイドルの写真集を男性ファンが購入するというのは、昔から変わっておらず、現在も中心的な購買層であることは間違いありません。普段グラビアで露出がないぶん、写真集にプレミア感を抱くというのも事実でしょう。しかし、同性ファンも含めて多くの人々が女性アイドルの写真集を手に取るようになった背景として、特に2010年代を通じて、モーニング娘。やAKB48を始めとしたグループアイドルが、『女性アイドル』というジャンルをエンターテインメントのフォーマットとして世の中に定着させたことが大きいはずです。総合的な表現の一形態として『アイドル』が存在しているという理解が浸透したからこそ、一部のコアな男性ファンが消費するものというステレオタイプなイメージだけでは説明しきれない、ここまでの現象になり得ていると思います」


 続けて同氏は、乃木坂46というグループの特性が、その売上を後押ししていると述べる。


「乃木坂46の場合は、特にイメージ戦略・ブランディングを長期にわたって積極的に行なってきたことが支持に繋がっているのではないでしょうか。写真集好調の代表格にあげられる白石麻衣さんについていえば、グループがデビューした2012年には早くも、『LARME』(徳間書店)創刊号からレギュラーモデルを務め、さらに赤文字系雑誌の『Ray』(主婦の友社)でも専属モデルになるなど、乃木坂46の知名度がいまよりも低いころから、長期的にファッションとの関わりを築いてきました。白石さんばかりでなくグループ全体でファッション方面との関わりを蓄積してきたことが、同性のファンも多く獲得する一因になっていると思います」


 さらに、そのコンセプトはグループ結成時から考えられていたのではないかと続ける。


「以前、乃木坂46運営委員会委員長(当時)の今野義雄氏にインタビューした際、彼は『オーディションでメンバーを選考した時のポイントに“骨格”という答え方をしたことがありますが、それも含めて、とにかく洋服を綺麗に着られる人たちを選んだ』とコメントしています。あらかじめファッション界へ進出することを見越してメンバーを選び、ファッション方面への目配りをその後のコンテンツにも活かしながら、グループ全体のイメージを作り上げてきたことが、近年の写真集の好調にも通じている。異性にも同性にも受け入れられている背景には、この戦略が功を奏したことも大きいでしょう」


 最後に、これらの傾向は乃木坂46だけにとどまらないものになるだろうと語った。


「『女性アイドル』の多様なあり方・表現への理解が世の中に浸透してきたことで、彼女たちが自身の見せ方を能動的、戦略的に発信する姿が、同性からの支持を得やすくなっているように感じます。48グループでいえば、YouTubeでの配信等で積極的に発信を続けるNMB48吉田朱里さんの『IDOL MAKE BIBLE』(主婦の友社)も、そうした同性支持にささえられつつ成果をあげています。このようなスタイルの写真集がこれ以降も世に出され、好意的に受け入れられる機運は高まっていると思います」


 女性アイドルの写真集というフォーマットを更新し、新たなフェーズに突入させた乃木坂46。同じ“坂道シリーズ”の欅坂46からも長濱ねると渡辺梨加の写真集発売が決定しているが、これらもその路線を踏襲したものになるのだろうか。(中村拓海)