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森川葵が語る、映画『恋と嘘』撮影秘話と女優としての現在 「どこに向かっていけばいいのか迷走中」

2017年10月14日 15:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 マンガアプリ「マンガボックス」で連載中のムサヲによる人気コミックを実写化した恋愛映画『恋と嘘』が、本日10月14日に公開された。原作とつながりを持つアナザーストーリーとなる本作では、“政府”が国民の遺伝子情報を分析し、最良の結婚相手を“通知”する「超・少子化対策法」が施行された未来の日本を舞台に、人よりちょっと優柔不断な仁坂葵が、小さな頃からいつもそばにいてくれる、心優しい幼なじみの司馬優翔と、政府通知の相手として現れた、無口でミステリアスな高千穂蒼佑との間で揺れ動く模様が描かれる。


参考:森川葵はただの“個性派女優”ではない 『いつかこの恋を~』で期待される役者としての地力


 今回、リアルサウンド映画部では、主人公・仁坂葵役で主演を務めた森川葵にインタビュー。本作の出演に対する思いから、共演者・古澤健監督とのエピソード、高校生役を演じることについて、そして独自の路線を突き進む女優としての意識まで、じっくりと話を訊いた。


ーー原作は「マンガボックス」での連載開始とともにNo.1ヒットを記録した人気コミックです。出演が決まった時の心境は?


森川葵(以下、森川):原作コミックに出てくる女の子がみんな可愛いんですよ。ムサヲ先生の画が本当に綺麗で、女の子への愛情たっぷりに、ひとつひとつのコマの中でもキャラクターの表情がすごく丁寧に描かれていて。だから実写版でヒロインをやらせていただくにあたって、原作のヒロインである高崎(美咲)さんをはじめとする女の子たちと、私が同じ作品に出てもいいのかなとは思いました。この可愛い女の子たちに私は近づけるのかな……と。それはすごく不安でしたね。


ーー今年の夏にはアニメ化もされている作品です。


森川:アニメも最高でした。アニメ版で高崎さんの声を担当された花澤(香菜)さんともお会いしたんですけど、もうめちゃくちゃ可愛いくて、声も素敵で。アニメ版も原作同様、画のタッチがとても綺麗で、「動いている高崎さんも最高!」という気持ちでした。女の子はもちろん可愛いのですが、仁坂(悠介)くんとか男の子もカッコいい。どのキャラクターも魅力的なんですよね。それがムサヲ先生の『恋と嘘』という作品のスゴいところだなと感じています。


ーー“結婚相手を政府が選ぶ”という設定によって、一味違う青春ラブストーリーになっています。


森川:言ってしまえば、政府から「この人と結婚しろ」と押し付けられているようなものですからね。それって全然自由ではないし、どうなんだろう……と最初は思いました。でも、政府通知はありかなしかを聞く街頭インタビューを宣伝スタッフさんたちがしてくれたのですが、その意見が結構割れていて面白いなと。


ーー具体的にどのようなところが?


森川:それこそ「本当にいい人と巡り会えるんだったらお願いしたい」とか、「全然結婚できないから今すぐお願いしたい」という人とかもいたりして。そういう意見を聞くと、確かに私も会ってみたいなと思いました。だって自分の最良のパートナーですよ?(笑)。実際にその人と会って、自分にはどういう人が合っているのかを確認したいと思いました。


ーー自身が演じた仁坂葵というキャラクターにはどのような印象を持ちましたか?


森川:名前が同じなのは運命なのかなと思っていたんですけど、ムサヲ先生に聞いたところ、昨年の新生児名前ランキングで1位だったからだそうで。それを聞いて運命感が薄れました(笑)。でも、自分自身との共通点もあって、優柔不断なところとかはまさにそうでしたね。


ーー森川さん自身が選ぶとしたら、幼なじみの司馬と、政府通知の相手である高千穂、どっちですか?


森川:かなり迷いますね……。2人とも自分の気持ちを押し付けたりしないんですよ。すごく葵のことを思っている。それが私的にはいいなと思うポイントで、2人ともそういう一面を持っているから選べません(笑)。確かに常に優しく見守ってくれるタイプと、クールだけど時にデレてくれるタイプという違いがありますが、どちらも葵の意見を第一優先にしている。それが男としてカッコいいなと思うんです。


ーーそんな2人を演じた北村匠海さんと佐藤寛太さんとの共演はどうでしたか?


森川:めちゃくちゃ楽しかったです。2人が先に仲良くなってくれていたんですよ。だから私は2人が喋っているところに一緒にいさせてもらう感じで、気づいたら自然と仲良くなっていました。


ーー同世代の3人の中でも森川さんが最年長なんですね。


森川:そうなんですよ! 決まった時は「私が最年長か……」と思いました(笑)。でも実際そこはあまり意識しなかったんです。最年少なのに、匠海くんがすごい大人なんですよ。すごく落ち着いているし、現場のこともちゃんと見ている。だから私が最年長として振る舞うみたいなことはなかったですね。ただいるだけ(笑)。楽しませてもらいました。


ーー2人とはキスシーンもありましたね。


森川:キスシーンが結構あるんですけど、自分の中では「そんなにあったっけ?」という感じなんですよね。キスシーンは事前に身構えてしまうと緊張が増してしまうので、特に考えずにほかのシーンと同じように演じました。


ーー『クローバー』や『今日、恋をはじめます』など、少女漫画原作の映画を多く手がけられている古澤健監督と今回初めて一緒にやってみてどうでしたか?


森川:すごく信頼できる監督でした。モニターの前に座らずに、ずっと現場で見ていてくれるんです。次のシーンを撮るまでに少し時間ができたりトラブルがあったりすると、そっと寄ってきて「ごめんね」といま何が起こっているのかも丁寧に説明してくれて。そうやって時間を無駄にしないというか、監督自身が思っていること、考えていることをきちんと伝えてくれたので、私もすごくやりやすかったです。


ーーいろいろと相談もしやすそうですね。


森川:監督があえて相談しやすいようにしてくれたのかもしれないですけど、いつも近い場所にいてくれたので、やっぱり話しやすかったというのはあります。さすがに友達とまではいかないですが、話しかけやすい優しい監督でした。


ーー森川さんは現在22歳ですが、高校生の役を演じることが割と多いですよね。中には幼く見られるのが嫌だという人もいると思いますが、森川さんはどうですか?


森川:私はあまり嫌とは思わないですね。普段から幼いとはよく言われているので、そこは自分でも理解しています。あと私、制服が好きなんですよ。22歳にもなってプライベートで制服なんてあまり着れないじゃないですか。だからこうやって堂々と制服を着ることができるのは嬉しいですね。「私、制服着てもいいんだ」という感じで。でも最近は恥ずかしいなと思うこともあって……。


ーー制服を着ることがですか?


森川:いや、紺のソックスを履くのが恥ずかしいなと。白の三つ折りソックスとかはいま流行っているらしいんですけど、紺のソックスはやっぱり学生時代しか履かないので、それはちょっと恥ずかしくなりつつあります(笑)。


ーー今回は制服だけでなくウエディングドレス姿も披露していますね。


森川:そうなんですよ! でもウエディングドレスを着るのは今回2度目だったんです。結婚する前にウエディングドレスを着ると結婚できないと言われているので、初めて着た時は「ついに着ちゃった~。大丈夫かな、私」という感じもあったのですが、今回は「やっぱり綺麗だな」というプラスの感情のほうが強かったです。


ーー作品ごとに見せる表情のバリエーションが森川さんの素晴らしいところだなと個人的に感じているのですが、今回もいろいろな表情を見せていましたね。


森川:ありがとうございます。私、『監獄学園-プリズンスクール-』で中川大志くんと共演していて、古澤監督も『ReLIFE リライフ』で彼と一緒に仕事をしていたので、古澤監督が大志くんに「葵ちゃんってどんな子?」と聞いたらしいんですよ。その時に大志くんが「すごくいろいろな表情をする子」と言っていたみたいで。それで監督からも「それを楽しみにしてる」と言われていて、クランクアップの時に「本当にいろいろな表情をするから、撮っていてすごく面白かった」と言ってくださったんです。自分ではそこまで意識しているわけではないのですが、なるべく演じるキャラクターの感情に寄り添おうとしているうちに、自然と出てくるのかもしれません。


ーー意識せずにできるのはすごいと思います。


森川:なるべく頑張ってテンションを高くしていこうとは思っています。大きな声を出したり、嬉しい時は「嬉しい!」という感じを出したり。感情豊かに表現しようとは思っているかもしれませんね。


ーー同年代のほかの女優さんと比べて、森川さんは独自のポジションを突き進んでいるようにも感じます。


森川:それも最近結構言われるんですよ。同世代の女優さんが多いので、自分も頑張らないとなという話を友達としていても、「でも葵ちゃんってそこで戦っていないでしょ?」とか言われたりして。「え? 戦ってるつもりだったんだけど……」みたいな(笑)。


ーーそうなんですね(笑)。


森川:でもいま自分がどこに向かっていけばいいのかは迷走中でもあるんです。やっぱり周りの同い年くらいの方々がみんなすごく頑張っているので、自分も頑張らなければいけないなとは思いつつも、自分が頑張ってできることにも限界があるというか……。それでやりたい役ができるかと言われたらそうではありませんからね。だからいただいたお仕事をしっかりと全力でやって、今後にも繋げていきたいなと思っています。(取材・文=宮川翔)