10月7~8日にスペイン・ハラマで開催されたETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップの最終戦は、初日土曜の予選から地元のアントニオ・アルバセテ(トラック・スポーツ・ルッツ・ベルナウ/MAN)が大躍進を見せ、ポールポジションからの完勝劇で地元ファンを沸かせる走りを披露。同時に、選手権リーダーを守ってきたアダム・ラッコ(バギラ・インターナショナル・レーシング・システム/フレートライナー)が2位に入り、悲願の初タイトルを決めている。
土曜レース1のスタートは、中団でバトルを演じていたホセ・ロドリゲスJr.(レボコノート・レーシング・トラック・チーム/MAN)とゲルト・コーバー(チーム・シュワーベントラック/イベコ)がファリーナ・ヘアピン進入での競り合いでクラッシュし、いきなりの赤旗に。
すぐの仕切り直しとなったリスタートでは、ポールシッターのアルバセテが順当に逃げを打つ中、2番手にラッコ、そして3番手にチームメイトであるデビッド・べルシュキー(バギラ・インターナショナル・レーシング・システム/フレートライナー)が続き、4番手に唯一ラッコへの選手権タイトル挑戦権を持つ昨季王者、ヨッヘン・ハーン(ハーン・レーシング/イベコ)がつける構図となる。
当然、ベルシュキーに課されたタスクは「チームのエースであるラッコを助け、ハーンを抑え込む」というもの。しかしそこはハーンも王者の維持を見せ、レース中盤には執拗なブロックラインを取っていたベルシュキーを見事に攻略。
その後、クラッチに問題を抱えたベルシュキーは、5番手のシュティフィ・ハルム(ラインアート・レーシング/MAN)に迫られ、バンパー・トゥ・バンパーの攻防戦を展開するも、なんとか彼女のMANを押さえ込みフィニッシュ。
地元戦で大観衆と家族が見守る中、勝利を挙げたアルバセテは「実は最終ラップには冷却水がほぼ抜けきっていてエンジン温が上昇していた。でもいつもより多くの水量を搭載していたので、なんとか助かったよ」と、薄氷の勝利だったことを明かした。
一方、このオープニングでシリーズ争いに終止符を打ち、見事に初タイトルを獲得したラッコも「本当に素晴らしい瞬間だ。実は予選とレースの間にエンジン交換を強いられ、スタート2~3分前まで作業が終われるかどうか、ハラハラしながらの展開だった。たった55分で載せ替えてくれたチームの全員に心から感謝したい」と、メンバーの労をねぎらった。
続くレース2は、リバースグリッドの5番手からスタートした前戦の"仕事人"ことベルシュキーが、展開にも助けられ早々に首位に浮上。
リバースポールのホセ・ロドリゲス(レボコノート・レーシング・トラック・チーム/MAN)が1コーナーのオーバーランで沈み、ロケットスタートを決めていたベルシュキーが先頭に躍り出ると、レース1勝者のアルバセテ、コーバー、ハーン、そして16番手スタートのノルベルト・キス(チーム・タンクプール24レーシング/メルセデス・ベンツ・トラックス)を従え、わずか0.0571秒差でトップチェッカー。僅差ながら、最終ラウンドにしてようやく2017年初勝利を挙げた。
そしてシーズン最終日となる明けた日曜は、朝のスーパー・ポール・セッションで前日大躍進を遂げていたキスがシーズン5度目のポールポジションを獲得。その勢いのまま、レース3も制覇し今季6勝目をマーク。
続くファイナルレースは、地元ヒーローのアルバセテが再びのショーを披露し、週末を大成功に導く2勝目。6.6秒差の2位にハーン。そして3位表彰台にコーバーが入り、30年に及ぶFIA ETRCのキャリア最終戦となる引退レースを、見事表彰台で飾った。
この最終戦で新王者アダム・ラッコ率いるバギラ・インターナショナル・レーシング・システムもチームズタイトルを確定。フレートライナーにはまた新たなトロフィーが贈られることとなった。