10月頭に発表された今年度版の過労死白書では、外食産業を重点的に取り上げている。厚労省によると、外食産業は過労死等が特に多く発生している業種の1つだという。
白書では、2010年1月から2015年3月の間に労災認定された「宿泊業・飲食サービス業」の事案と、2016年12月から2017年2月にかけて、当該業種企業と労働者を対象に行ったアンケートを分析した。結果から、管理的立場である店長やスーパーバイザー等の肉体的・精神的負荷が大きくなっている実態が明らかになった。
上司と部下の板挟み、本部からの理不尽な要求・クレームで疲弊
スーパーバイザー・エリアマネージャーなどの管理職や店長は、従業員と比べて労働時間が長くなりやすい傾向がある。過去1年間で最も長かった1週間当たりの実労働時間は、店長が52.2 時間で最長、次いで「スーパーバイザー等」が51.7時間、店舗従業員は47.6時間だった。
さらに、直近1か月間の勤務の状況や自覚症状に関する質問から判定した「疲労蓄積度(仕事による負担度)」では、「高い」「非常に高い」と判定されたスーパーバイザーは22.5%、店長は22.4%と20%を越えている。いずれも店舗従業員の19.2%より3ポイント程度高い。
業務関連で悩んでいたりストレスを感じていたりする割合は「スーパーバイザー等」で60.4%、店長で64.3%にのぼった。悩みの内容を複数回答で聞くと「売上・業績等」が最も多く、それぞれ46.3%、55.3%だった。
「スーパーバイザー等」では「社内で上司と部下の板挟みになること」(34.3%)、「客・取引先業者との折衝・調整等」(14.9%)も悩みの種として挙げられていた。「同僚・部下からの理不尽な要求・クレーム」や「本部からの理不尽な要求・クレーム」を受けることも、店長や従業員より多い傾向が見られた。
「店舗運営面での支援だけでなく、健康管理等の観点からも企業としての支援が一層重要」
しかし、本部(本社)の支援は充分ではないようだ。スーパーバイザー等と店長に、店舗運営に関する本部等の支援をどう感じているか聞いたところ、「どちらかといえば満足していない」「満足していない」が、「スーパーバイザー等」で 27.9%、「店長」で 30.9%と3割に上った。「店舗運営を支援する者はいない」と回答した店長も5.9%いて、外食産業における管理的立場の労働者に、肉体的・精神的負荷が大きくかかっていることが伺える。
過労死白書では、
「『スーパーバイザー等』及び『店長』は疲労蓄積度が高い者も多いことから、これらの者への支援をより進めていくことも必要であり、店舗運営面での支援だけでなく、健康管理等の観点からも企業としての支援が一層重要であると考えられる」
と、社を挙げて支援を手厚くするように促していた。