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【WEC富士プレビュー】ポルシェ戴冠か、トヨタの通算5勝目か。富士戦は全クラス激戦必至

2017年10月12日 20:11  AUTOSPORT web

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2号車ポルシェ919ハイブリッドと8号車トヨタTS050ハイブリッド
いよいよ開幕するWEC世界耐久選手権の日本ラウンド、第7戦富士6時間レース。2017年で開催6年目を迎える今季もル・マンで激闘を繰り広げたプロトタイプカー、GTカーたちが富士スピードウェイを舞台にスピードと耐久力を競う。

 昨年はトヨタ、ポルシェ、アウディの三つ巴の戦いのなかでレース終盤、ストラテジーを駆使して総合首位に立った6号車トヨタTS050ハイブリッドが僅差で追う2号車アウディR18から逃げ切り、劇的な優勝を果たした富士戦。過去5戦4勝と富士との相性が良いトヨタは、ホームグラウンドでの2連覇、そして2017年シーズン3勝目を目指す。
 
 そんなトヨタが挑むLMP1-Hクラスは今季、昨年限りでアウディが撤退したことによってトヨタとポルシェによる一騎打ちが展開されている。

 シーズン序盤の開幕2戦はセバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、アンソニー・デビッドソンがドライブする8号車トヨタTS050ハイブリッドが連勝を飾るが、シリーズ天王山の第3戦ル・マンではティモ・ベルンハルト、アール・バンバー、ブレンドン・ハートレー組が駆る2号車ポルシェ919ハイブリッドが優勝。

 第4戦ニュルブルクリンク以降はル・マン後にハイダウンフォース仕様のエアロキットを導入したポルシェが速さをみせ、第6戦までに3回のワン・ツー・フィニッシュを達成している。

 後半戦に入り苦戦を強いられているトヨタ勢だが、富士はル・マンと同様にダウンフォースをそれほど必要としないサーキット。

「これまでの3レースに比べれば力強いレースができると予想している」と7号車トヨタを駆る小林可夢偉がコメントするように、空気抵抗を極力小さくする設計がなされているトヨタのマシンにとって好相性のコースだと言えるだろう。

 対して、第4戦のレース後、今季限りでのLMP1撤退を発表したポルシェはアンドレアス・ザイドル代表が「今回のレースに向けてはデータとシミュレーションを慎重に分析し、ハイダウンフォース仕様を選択した。私たちは規定の範囲内でこれをミディアム寄りのダウンフォースにセッティングする」と言うように、これまでのフライアウェイ戦と同様、富士にもハイダウンフォース仕様のエアロキットを投入。

 2台のポルシェ919ハイブリッドで今季5度目の優勝と2015年以来のWEC富士制覇、そして結果次第では今大会で決定する可能性のあるドライバーズタイトル、マニュファクチャラーズタイトルの獲得を狙う。
 
 ドライバーズタイトルに王手をかけている2号車ポルシェ919ハイブリッドのバンバーは「富士にはさまざまな思い出があって、2014年にはポルシェカレラカップ アジアのレースで優勝したんだ。しかし、2015年のWECではアウディと接触して表彰台を逃してしまった」と過去のレースを振り返った。

 ポルシェ919ハイブリッドにとって最後となる今季のWEC富士については「ダウンフォースのバランスが(結果に)大きく影響すると思う。トヨタという強力なライバルがいるため、とても厳しい週末を迎えることになるんじゃないかな」とコメントしている。

 また、10年以上にわたって日本でレースを行うとともに、今季アウディからポルシェに移籍したアンドレ・ロッテラーは「(アウディ在籍時の)2012年のWECに富士が組み込まれたときは本当に嬉しかった」と語り、過去に一度も勝利経験のない富士戦については「残念ながら(富士ではいまだに)LMP1で優勝したことがないんだ。そろそろ流れを変える時だよね」と続けた。
■新型車導入のLMP2、4メーカーが争うのLM-GTEも白熱必至
 LMP1-Hと同等か、それ以上に僅差の争いとなりそうなLMP2クラスは今シーズンからマシンが一新され、ル・マンで1周あたり約8秒のスピードアップを果たした。新型マシンはコーナーリングスピードとともに直線スピードが格段に向上。富士のストレートエンドではLMP1-Hに匹敵するトップスピードが予想される。

 そんなLMP2クラスはWECに参戦する全チームが同一シャシー、同一エンジンを使用しており、チームとドライバーの実力が勝敗を大きく左右する。

 富士では前年王者のシグナテック・アルピーヌの36号車アルピーヌA470・ギブソンをはじめ、元アウディ・ワークスドライバーのオリバー・ジャービスを擁すジャッキー・チェンDCレーシング、38号車オレカ07・ギブソン、第5戦メキシコでシーズン初勝利を飾ったヴァイヨン・レベリオンの13号車オレカ07・ギブソンなどが優勝候補に挙げられるだろう。

 LM-GTEプロクラスでは、前年の富士戦でワン・ツー・フィニッシュを達成したフォードGTに対してストレートスピードを武器にするアストンマーチン・バンテージ、総合力で優れるフェラーリ488 GTE、ミッドシップ化された新型ポルシェ911 RSRを投入する各ワークスチームが昨年のリベンジに燃える。

 激しいチャンピオン争いを展開するLM-GTEアマクラスは、ランキング首位につけるアストンマーチン・レーシングの98号車アストンマーチン・バンテージと、ランキング2番手のデンプシー-プロトン・レーシング、77号車ポルシェ911 RSR、そして日本人ドライバーとして唯一このクラスに参戦しランキング3番手につける澤圭太を擁するクリアウォーター・レーシングの61号車フェラーリの3台による三つ巴のバトルに注目したい。

 シリーズ終盤戦の第7戦富士は13日(金)の11時00分と15時30分からそれぞれ90分間のフリープラクティスが行われ、14日(日)は10時00分~11時00分までフリープラクティス3回目が、14時00分から公式予選が実施される。6時間の決勝レースは15日(日)の11時00分にスタートが切られる予定だ。