ラトビアのバルト海沿岸部に続く高速グラベルを舞台に、10月6~8日に開催されたERCヨーロッパ・ラリー選手権の最終戦ラリー・リエパヤは、デイ2に民間ヘリが墜落事故を起こしSSキャンセルの波乱となる中、ロシアのヤングスター、20歳のニコライ・グリアシン(シュコダ・ファビアR5)が、17歳の新星カリ・ロバンペッラ(フォード・フィエスタR5)とのバトルを制してうれしい初優勝を挙げた。
元WRCワークスドライバーのハリ・ロバンペッラを父に持ち、幼少期よりラリードライビングの英才教育を受けてきたカリ・ロバンペッラ。その彼がこの10月に17歳となり、同イベントからインターナショナル格式ラリーへ本格参戦を果たすことで注目を集めた。
そのカリに立ちはだかったのは、今季大怪我を負いながら完治しない体に鞭打ち、ERCレギュラー最速の男として君臨する"ロシアン・ロケット"ことアレクセイ・ルキヤナク(フォード・フィエスタR5)と、その同郷の後輩でありこの土曜に20歳になったばかりの、グリアシンだった。
金曜夜に開催されたオープニングSSをグリアシンが制すると、翌日から始まった本格ステージでルキヤナクが連続ベストをマークし、先輩の意地を見せつける。
すると、その後ろ姿に発奮したグリアシンは、自らの誕生日を祝うべくSS4、SS5とベストを奪い返し、新世代ドライバーの台頭を印象付けるスピードを披露。
一方のルキヤナクは、そのステージ5から「たぶん電気系のトラブルだろうけど、どれだけ踏んでもスロットルが反応しないんだ」という厄介な症状が発生。
状況が改善しないまま臨んだリエパヤ市街中心部に設定された1.69kmのSS6(SS7もリピート)では、右コーナーイン側に残されていた水溜りでバランスを崩しクラッシュ。ロシア人同士による優勝争いはここで終了となってしまった。
また、同じ市街地ステージではロバンペッラもわずかにミスコースを喫しタイムロス。「ステージ最後のジャンクションをまっすぐ行ってしまったんだ。馬鹿げたミスだったけど、僕はまだマシンを学ぶことに集中しているし、(クラッシュに繋がる)愚かなリスクは微塵も犯さないように気をつけている。クルマのセッティングをステージごとに変えて、だんだんと良くなってきたよ」と、意義ある初日を終えた。
2017年シーズンのタイトル争いでは、選手権首位に立つカエタン・カエタノビッチ(フォード・フィエスタR5)に対し、それを追う唯一の対抗馬ブルーノ・マガラエス(シュコダ・ファビアR5)が、最後の逆転に望みを掛けてスパートを試みるも、ルキヤナクと全く同じポイントでコースオフし木に激突。
マシン前方から重度のインパクトを伴ったことにより、ラトビア初挑戦だったマガラエスはすぐさまリエパヤの病院に搬送されることとなった。
これで初日を3位で終えたカエタノビッチは、翌日曜のステージを完走せずともERC新記録となる3連覇達成が確定したため、最終日は大事をとって完走を目指し大きくペースダウンする作戦をとった。
そして迎えた今季最終デイ2は18.3秒のマージンを持ってスタートした首位グリアシンに対し、ロバンペッラがついにスパートしプレッシャーを掛け始め、SS8、SS9と朝から連続ベストを記録しギャップを10.1秒にまで詰めていく。
しかし、グリアシンもこれに反応し「掛け値なしのリミット。安全マージンは取らなかった」という驚異の走りで、SS10ではロバンペッラを7.1秒突き放すスーパーベストを刻み、再びタイム差を取り戻してミッドデイ・サービスに帰還した。
残るSSは3つ。このままふたりのデュエルが激化するかに見えたSS11だが、ステージフィニッシュ付近の山林に民間のヘリコプターが墜落するという惨事が発生し、主催者はこのSSをキャンセルすると判断。
続くSS12をグリアシンが。最終SS13をロバンペッラが、それぞれベストを分け合いフィニッシュ。最終的に18.5秒のリードを保ったまま、グリアシンが注目株の17歳を下す価値あるERC初勝利を挙げた。
これで今季ERCシーズン8戦中で7人目の勝者となったグリアシンは「本当にいい誕生日になったよ。こうして自分に最高のプレゼントができて本当に良かった。いくつかのステージではリミットを越えてリスクを犯したし、カリ(・ロバンペッラ)は本当に速かった」と喜びを語った。
そして前日総合3位から、最終日はトップ10圏外にドロップするほどのペースダウンを敢行したカエタノビッチは、シリーズ新記録となるタイトル3連覇を祝う完走を果たしている。