10月13~15日にツインリンクもてぎで開催されるMotoGP日本GP。佳境に入ったタイトル争いのことを考えると、日本GPは重要な1戦となることは間違いない。
2017年シーズン第14戦アラゴンGPまでの勝利数は、ランキングトップのマルク・マルケスが5勝。続いてランキング2位のアンドレア・ドビジオーゾ4勝。ランキング3位のマーベリック・ビニャーレス3勝。ランキング4位のダニ・ペドロサ1勝。ランキング5位のバレンティーノ・ロッシ1勝。
この5人が今季の優勝経験者で、トップのマルケスから5位のロッシまでのポイント差は二桁台という状況だ。ドビジオーゾが16点差、ビニャーレスが28点差、ペドロサが54点差、ロッシが56点差。
9人もの勝者が誕生した2016年シーズンとは違い、今のところ驚くべきリザルトとなったラウンドはない。これは、2016年から始まったミシュランタイヤに各マシンが合ってきたことも大きな要因だ。
2016年の日本GPでは、ウイーク中の転倒回数は3クラス合計で84回。2015年の71回と比べて大幅に増加した。決勝レース中にはホルヘ・ロレンソとロッシが転倒し、ヤマハファクトリーの2台がそろってレース中に姿を消す事態になった。
2016年はその他のコースでも転倒が多く、2015年のトータル976回に対して1062回と初の4ケタ越えとなった。今年は雨に見舞われた第13戦サンマリノGPで昨年の3倍近い転倒数を数えたものの、その他のコースでは転倒数が減少しているところが多い。
ポイントランキング上位5人の中でツインリンクもてぎを得意としているのはペドロサ。「もてぎは大好きなサーキットのひとつ」というだけあって、GP250時代に1回、最高峰クラスに上がってから3回の優勝を飾っている。
逆に不得意だと語るのはペドロサのチームメイトのマルケスだ。「僕にとっては少し難しいサーキット。できる限りポイントを失わないように慎重に戦うべきコース」としている。
それでもGP125時代に1勝、Moto2で1勝しており、2016年はついに最高峰クラスで初めてもてぎを制した。「これまで苦手だったこのサーキットで、今までの成果を出せた」と、多少なりとも苦手意識を克服したことをうかがわせている。
一方、マルケスとタイトル争いを展開しているドビジオーゾは「もてぎは大好きなサーキットのひとつ。ハードブレーキングしなければならないところが気に入っている」と語る。ホンダ時代の2010年とドゥカティ移籍後の2014年にはポールポジションも獲得。
しかし、ドビジオーゾは最高峰クラスでのもてぎ優勝はゼロ。とはいえ2016年の日本GPでは2位表彰台を獲得した。タイトル争いを展開している今年は、さらに上のリザルトをねらっていることは間違いない。
意外なのがロッシだ。実はロッシ、過去にもてぎでは2001年と2008年の2回しか優勝しておらず、もてぎでの優勝から長い間遠ざかっている。ヤマハのマシンはもてぎとの相性が悪い訳ではないことはロレンソのリザルトが証明しているとおり。ロレンソはヤマハYZR-M1で、これまでに3回もの優勝を飾っているのだ。
ロッシは第13戦サンマリノGP直前のトレーニングで負傷し、ホームグランプリを欠場した。しかし第14戦アラゴンGPでは見事な復活劇を見せ、完治していない足で5位入賞を果たしている。第15戦日本GPに向けてさらなる調整に入っているだけに、9年ぶりのもてぎ優勝の可能性は決して低くはない。
ポイントランキング7位のロレンソは「フライアウェイ3連戦は体力的にも精神的にも、いつも以上の強さが求められるが、毎年この3連戦は楽しみ。特にもてぎはたくさんのいい思い出があって大好きなサーキット」とコメントしている。
ドゥカティに移籍した今季、ロレンソは苦戦が続いていたが、第14戦アラゴンGPでは今季2度目の表彰台を獲得。確実にマシンとシンクロしてきたことを証明した。
最高速スピードを誇るドゥカティのデスモセディチにとって、ストップ&ゴーの特徴を持つツインリンクもてぎは相性のいいコース。過去には当時ドゥカティに所属していたロリス・カピロッシが2005年から3連覇を飾ったことすらある。
また、2010年にはケーシー・ストーナーがドゥカティのマシンを駆りもてぎで優勝している。アラゴンGPの勢いをそのままにもてぎで好成績を残すことができるか。ロレンソが表彰台争いに加われば、日本GPはもちろんタイトル争いがますますおもしろくなるだろう。
今季、スズキからヤマハに移籍したビニャーレスは、もてぎでの優勝経験はない。Moto3チャンピオンを獲得した年も2位表彰台に終わっている。それでも2016年は3位フィニッシュして2000年ケニー・ロバーツJrの優勝以来の表彰台をスズキにプレゼントした。
今年はビニャーレスにとって、ヤマハで初めて迎える日本GP。ビニャーレスにとってもてぎ初優勝の年になるかもしれない。また、タイトル争いの行方を考えても、ランキング3位につけるビニャーレスはぜひとも1勝しておきたいところだ。
また、ホンダ、ヤマハ、ドゥカティのサテライトチームの活躍も期待できる。2018年シーズンは最高峰クラスにステップアップする中上貴晶のチームメイトとなるLCRのカル・クラッチロー。最高峰クラスルーキーながら早くもトップ争いに顔を出して注目されるテック3のヨハン・ザルコ。雨にはめっぽう強いプラマックのダニロ・ペトルッチ。彼らの戦いにも注目したい。
1999年から開始されたツインリンクもてぎでの日本GP。2016年までに18回の決勝レースが行われたが、そのうち8回でホンダが優勝。ドゥカティとヤマハが4回ずつ、スズキは2回といった具合に優勝を分け合っている。
ホンダ、ヤマハ、スズキにとっては重要な母国ラウンド。もてぎをホームサーキットとしているホンダにとっては、なおさら重要なホームグランプリだ。今年も日本の3メーカーがしのぎを削るレースになるのは間違いない。