VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカー・シリーズ最大の1戦にして、伝統の長距離耐久イベントである『バサースト1000』が10月7~8日に開催され、降雨が絡むチャレンジングな条件となったレースを、エレバス・モータースポーツのデビッド・レイノルズ/ルーク・ヨールデン組(ホールデン・コモドアVF)が制した。
マウント・パノラマで開催されるシリーズを代表する祭典であり、年間5戦が設定される500マイルを超える“エンデュランス・カップ”の第2戦でもあるバサースト1000は、予選からコースレコードが飛び出す激戦が展開。
レコードブレイカーとなったのは、今季ここまでシリーズを席巻する名門DJRペンスキーのスコット・マクローリン(フォード・ファルコンFG-X)で、トップ10シュートアウトで2分03秒8312という新記録をマーク。
フロントロウ2番手には2年前のポールシッターで、このマウント・パノラマを得意とするレイノルズのホールデンが2分04秒2746で続いた。
しかし日曜のレースはスタート前から降り出した雨の影響で、予想外のアクションが多発する大乱戦の様相を呈していく。
スタートドライバーを務めたポールシッター、マクローリンが2周目のマーレイ・コーナーでオーバーランを喫し、エスケープロードに逃げながらもグラスエリアでのスタックを回避するも、このいきなりのロスで6番手に後退。
その後、アンダーグリーンのまま80周を消化するまで、レースはピットストップのドライバー交代や、マクローリン同様のコーナーでコースオフするマシンが続発し、めまぐるしくトップが入れ替わる展開に。
しかし76周目。マクローリンとタッグを組むアレクサンダー・プレマのドライブ中に、シェルVパワー・フォードが突然のスローダウン。中盤から「パワーがない」と無線で訴えていたプレマだったが、レース中に対処不可能なエンジントラブルにより、優勝候補が戦列を去ることとなってしまう。
代わって猛チャージを見せたのは、前戦サンダウン500で耐久カップ初戦を制したキャメロン・ウォーターズ/リッチー・スタナウェイ(フォード・ファルコンFG-X)組のチーム・モンスターエナジー・フォード。
5番手でウォーターズからバトンを受けたスタナウェイは、10周足らずの間に30秒以上あった首位とのギャップをみるみる詰めていき、トップを走るエレバスのマシンをキャッチアップ。そのまま首位浮上後に17秒ものマージンを稼いで、67周目に再びウォーターズにマシンを託す見事なパフォーマンスを披露した。
その後も、路面が乾き始めてはふたたび雨粒が落ちる不安定なコンディションのなか、残り8周となったところで、ダンプコンディションで果敢にスリックタイヤを履き、自身初となるトップ10フィニッシュを目指していたシモーナ・デ・シルベストロのニッサン・アルティマが、最終コーナーの縁石に足元をすくわれ、ホームストレートへ進入すると同時にスピンしリヤからウォールにヒット。
「本当に馬鹿げたミステイク」と自身が肩を落とすように、今季初めてのフル参戦を果たした彼女にとって唯一経験のあるトラックで、不名誉なシーズン初DNFとなってしまった。
このアクシデントによるセーフティカー導入からレースは一気に動きを見せ、3番手を走行中だったブラッド・ジョーンズ・レーシング(BJR)のニック・パーカット(ホールデン・コモドアVF)は、レース序盤にヒットしたホイールリムとアップライトのダメージが蓄積し、残り6周のところでロックアップしコースオフ。
なんとかピットに戻りホイール交換し、再び戦列に復帰するも最終ラップで再びマシンに異変が襲い、コントロール不能のまま大クラッシュ。
また、5番手を走行中だったマーク・ウインターボトム(フォード・ファルコンFG-X)も、前を行くレッドブル・レーシング・ホールデンのSVGこと、シェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアVF)を捉えようとアタックするも、失敗に終わりクラッシュ。
この波乱の最終スティントを乗り越え、エレバス・モータースポーツのレイノルズ/ヨールデン組が161周のトップチェッカー。2位には20番グリッドからセーフティカーを絡めた地道な燃費戦略が成功したモービル1HSVレーシングのスコット・パイ/ウォーレン・ラフ組が入り、最後の表彰台となる3位には、最終盤でポジションアップに成功したDJRペンスキーのもう一台、ファビアン・クルサード/トニー・ダルベルト組となった。
これで3位に入ったクルサードが選手権首位のチームメイト、マクローリンを逆転し97点差でポイントリーダーに浮上。タイトル争いを繰り広げるレッドブル・ホールデン、ジェイミー・ウィンカップはバルブトラブルで20位に終わるも、90ポイントを獲得してシリーズ2位に上がっている。