トップへ

今宮純によるF1マレーシア&日本GP採点:才能、努力、そして運の全てが結合したフェルスタッペン

2017年10月11日 15:41  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

2017年F1第16戦日本GP マックス・フェルスタッペン
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回はマレーシアGPと日本GPの2戦分だ。 

☆ ジョリオン・パーマー
 チームスタッフを和ませる彼は“ムードメーカー”のような存在だった。鈴鹿ラストランが発表される前、12位ニコ・ヒュルケンベルグに迫る0.143秒差の予選14位、セクター1タイムで優った(FP3をS字で見ていた時も気迫を感じた)。20グリッドダウンの18番手から12位に上がるアップレース、惜別の思いをこめてよくやりきった。

☆ ピエール・ガスリー
 急遽デビューすることになったこの2戦を総括すると、逸らず焦らず冷静にチャレンジ。セパンも鈴鹿もSTR12はナーバスな挙動、難しい状況になっていたが14位と13位完走。ドリンクシステムが壊れたり、シートフィッティングに不具合があったり、初乗りコクピット内は相当つらかった(テスト走行した時のレッドブルとは何もかもが違い過ぎた)。

☆☆ ロマン・グロージャン
 Q1アタックで唐突なオーバーステアからS字クラッシュ。最近ここでは少なかったアクシデント、87年ナイジェル・マンセル負傷事故を一瞬思い出した。しかし当たっても攻める心は砕けないグロージャン、安定したペースで9位入賞。タイヤケアに関する新しいヒントをつかんだ。

☆☆ エステバン・オコン
 セパンで堂々の予選トップ6、その週末はペレスと同じで体調を崩していたという(鈴鹿で聞いた)。その後すっかり回復、雨となった鈴鹿、金曜のFP2を果敢に攻めて2位、その勢いのまま予選トップ7。イニシャル・セットがぴったり決まりぐいぐい攻め込んでいた。

 得意なスタートを決め一時3番手を走行、自分のレースをまとめ4度目の6位ゴール。余談だが子供のころは背が低く、急に身長が伸びて足が細くなったとか(ジョークかも?)


☆☆ セルジオ・ペレス
 初めて<チームオーダー>発令。レース終盤はタイヤコンディションがオコンよりもいい状態、しかしチームメイトへのアタックは自重してそれに従った。14点追加したフォース・インディア、ランク4位がこのまま確定すれば地元メキシコGPはたぶん“フリー・バトル”を許される(?)

☆☆ バルテリ・ボッタス
 鈴鹿コースサイドで見ていてメルセデス2台は『同型異車』に映った。ボッタスはターンインが決まらず、バランス・スロットルでコントロール、S字のリズムがつかめていなかった。こういう時はミスをしがちになる。FP3でスプーン出口が乱れてマシン損傷。この2戦を“チームプレイヤー”に徹した彼、エースとは違う走りから何か別の任務(18年先行開発テスト)を担当しているのでは、と想像してしまう。

☆☆☆ ストフェル・バンドーン
 アロンソのタイムに接近、トラブルなく周回数をカバーできればセットアップも進む。セパン予選/決勝7位に自信を深め、鈴鹿では昨年のスーパーフォーミュラの経験を基にラインなどいろいろトライも。いきなり2コーナーで押し出され、苦しいレース展開になったが終盤に4位相当の自己ベストタイム。進化の証だ。

☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
 また35グリッドダウンにも戦意を失わず、最終ラップまで1ポイント獲りに鞭打つ激走11位。チームのためだけでなく、ファンのための走りを展開。3シーズン、56戦を通じペナルティ総合計775グリッドダウン(独自集計)。ファンを失望させたせめてもの償いが、逆PPの20位から“9ポジションアップ・レース”。



☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
 アジアに来てから跳ね馬が失速、トラブル連続によってほぼ大勢が決まりつつある。そこで予選Q3は大胆に決勝は慎重に、セパンから鈴鹿ではその戦闘方針の変更意識がはっきり感じとれた。71回目の初鈴鹿PP、1分27秒319はクリッピングポイントを奥に深くとるような新感覚。いままでの突っ込み重視な旧感覚を改めるドライビングを見せてもらった。

☆☆☆☆ ダニエル・リカルド
 剣道をすること、高名な寿司店に行くこと、鈴鹿で表彰台に立つこと。その三つすべてが初めてかなった。第15戦スペインGPから12戦9度目の表彰台(75%)、彼がそこに居るのといないのではセレモニーの雰囲気が違う。レッドブル・チームとしてはルノーPUになって初めて2戦連続ダブル表彰台、フェラーリの後ろ姿がぼんやりと見えてきた(92点差)。この2連戦で一気に51点もつめた。

☆☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
 鈴鹿ではオレンジ色(オランダ応援団)が目立たなかったが今年の“流行色”はこのカラーで決まり。特筆すべきはマレーシアGPでのハミルトン一撃パッシングと、鈴鹿でのスタート2台抜きダッシュ。周りがよく見えているからできるプレー、天才の才能を生で目撃したお客さまはきっと忘れないだろう。

 金曜から毎周、ぎりぎりのエッジ・コーナリングを重ねる努力があって2年連続2位、ドライバー力をさらに高めたフェルスタッペン。才能×努力×運=実力に☆五つ。