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綾瀬はるか、“強すぎる女性像”でイメージ一新 金城一紀『奥様は、取り扱い注意』の新しさ

2017年10月11日 08:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 先週から秋ドラマの第1投目として放送がスタートしている『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)。綾瀬はるか演じる伊佐山菜美にはヒミツの過去がある…と予告されていたが、それは1話の終盤で明かされるものかと思っていた。だが、菜美は冒頭からペラペラと自己紹介を始め、特殊工作員であることを告白。激しいアクションで中国人男性たちを打ちのめす彼女は、綾瀬のほんわかとしたイメージを覆す強すぎる女性像。物語、キャラクターともに想像を裏切る急展開に、たちまち釘付けになってしまった。


(参考:10月クールドラマは“3大涼子”そろい踏み! それぞれの華やかなキャリアと新作を分析


 穏やかな生活と温かな家庭を手に入れるために工作員としての自分を捨てた菜美は、合コンで人生初のひと目惚れをした勇輝(西島秀俊)と3カ月後に結婚。さっそく新居を購入し、専業主婦としての生活をスタートするが、すぐさま平穏な主婦生活に飽きてしまう。


 料理が苦手な菜美は、両隣に暮らす主婦友の大原優里(広末涼子)、佐藤京子(本田翼)と共に料理教室に通うことに。そして、そこで出会った水上知花(倉科カナ)が、夫からDVを受けているのではと直感する。知花に真実を話してもらうためには“本当の友達”になることが必要だという優里からのアドバイスもあり、一緒にランチをするなど交流を深めていく。そしてある日、知花は菜美らに夫・喬史(近藤公園)からDVを受けていることを打ち明け、助けて欲しいと訴える。


 初めは正面切って主婦友3人で喬史に抗議するが、埒が明かない。元工作員としての血が騒ぎ出した菜美は、優里らに内緒で知花に監視カメラを搭載したぬいぐるみをプレゼントする。それから1カ月が過ぎた頃、ついに夫と戦うと決意した知花。だが、離婚を切り出すと喬史に包丁で脇腹を刺されてしまう。


 事実を知った菜美は喬史に知花と離婚するよう詰め寄るが、白を切り通そうとする姿に宣戦布告。知花を刺した様子は監視カメラで録画されていると告げ、ボクシング経験のある喬史を華麗なアクションで撃退。動画をインターネット上に晒されたくなければ、離婚してこの町を出て行くこと、そして慰謝料として知花に家を譲ることを約束させ、問題を解決するのだった。


 ドラマが始まる前、セレブな主婦がトラブルを解決するという設定を聞いて“おたまを使ってポンポンポンッと悪を成敗”というコメディタッチを想像していた。だがそうだ、これは『BORDER』(テレビ朝日系)、『CRISIS』(カンテレ・フジテレビ系)を手掛けた金城一紀原案・脚本作品。おもしろおかしいホームドラマの範疇に収まるはずもなかった。


 金城自身もTwitterで「喜怒哀楽の詰まったストーリーがあり、俳優の身体(アクション)があり、といったエンタメは日本ではなかなか少ないのですが(特に女性が主人公の作品は)、『奥様は、取り扱い注意』は新しい道を切り開いていきたいと思っています」と語っているように、元工作員という非現実的ともいえる背景がありながら、DVというシリアスかつ現実的な問題を切るというアンバランスさ。見事なまでのアクションシーンも含め、まさに新感覚のホームドラマと言えるだろう。


 そして、優しくて顔面高偏差値の夫と結婚し、閑静な住宅街に一軒家を持つという、いわば“女性の幸せ”と言われるものを一気に(ドラマ開始から数分で)手に入れたにもかかわらず、刺激を求めてしまうという菜美に垣間見える人間の欲深さは、苦々しくもリアル。さらに、幸せだけど平凡な毎日に「刺激がほしい」というのは、専業主婦の誰もが一度は抱く願望なのかもしれない。


 「昼顔妻」という言葉が社会現象になるなど、かつて平日の昼間に刺激を求める主婦たちが話題となったが、やり方は違えどどうやらこの『奥様は、取り扱い注意』にも似たような感覚がありそう。自分は不倫などしない。けれども不倫ドラマにドハマリしまうのと同様の原理で、時に主婦を辞めて自由に活躍する菜美は、奥様たちの欲求を満たす代行者として今後ますます共感を呼びそうだ。


 それにしても硬派なイメージのある西島の声高な「ただ~いま~」は、あまりに衝撃的だった。もちろん、そんな勇輝と菜美の新婚ぶりも、主婦の欲求を満たしてくれる要素のひとつであるに違いないが、“友達と共同で”IT企業を経営しているという勇輝にも怪しいムードがプンプン漂っている。彼には一体、どんなヒミツが隠されているのだろうか。第1話を終えた時点で、早くもワクワクが止まらない。


(nakamura omame)