フェラーリJr. シャルル・ルクレールが初代FIA-F2タイトル獲得!
2017年10月6~8日
スペイン/サーキット・デ・ヘレス
絶対的な速さは誰もが認める#1 シャルル・ルクレールだがシャルル自身以外の問題で周囲をハラハラさせた今シーズン。2017年カレンダーで唯一、F1GPサポートレースでは無い今回のレースはヨーロッパの最南端、スペインはアンダルシア州ヘレスにその舞台を移して開催された。
レースフォーマットはF1GPサポート時と全く同じで金曜日のフリープラクティスから始まった。
この走行でシャルルはトップタイムを叩き出したものの、2番時計の#9オリバー・ローランドとのタイム差は僅か0.16秒。安心できる要素は一つもない状況だ。
一方の#2 アントニオ・フォーコ。こちらはセットアップ中にタイヤのパンクに見舞われ参加20台中、最も少ない周回数となってしまい15番手。タイム差はコンマ9秒差ではあるものの、煮詰め切っていないセットアップに、本番に向けて不安を感じざるを得ない状況となった。
予選
シャルルは予選でもキチンとベストタイムをマークしポールを獲得。しかしポールを奪ったシャルルから1秒以内に14台がひしめくという激戦。決勝は相当な混戦が予想される。
またFPでセットアップを決めきれなかったアントニオはシャルルに1秒以上離されてしまい15番手。ニュータイヤを入れたもののセットアップがさらに狂い、決勝までにシュミレーションを何度もし直した。
フィーチャーレース
今年6月に亡くなったシャルルの父が現役時代(F3)に使っていたカラーリングのヘルメットでこのレースに臨むシャルル。彼のこれまでの全てを支えてくれた最愛の父に最高の結果で応えるべくグリッドに着いた。
スタートからグイグイと飛ばしピットインした12周終了時点までに11秒、実に1周に付き1秒ずつ後続を引き離してのタイヤ交換。完璧なチームワークでタイヤを換えて5番手で復帰。しかしすぐにアントニオに抜かれて6位にダウン。残り26周を走りきる為にタイヤを的確に温めて行く。
そしてグッドコンディションになった15周目から”いつもの”快進撃を始める。まずはアントニオを。ついですぐに#4グスタブ・マルジャ(レーシングエンジニアリング)をパス。
2.5秒以上前を行く3位ジョーダン・キング(MPモータースポーツ)にロックオン!17周目にキングをアッサリとパス。そのまま2位を行く#17サンティーノ・フェルッチ(トライデント)に照準を合わせ18周目にオーバーテイク。これで2位へ。あとは6秒先のトップを行くタイヤ交換をしていない#10ニコラス・ラテフィ(DAMS)だけである。
わずか3ラップで6秒あった差をあっという間に詰めて20周目にラテフィをオーバーテイク。これでトップに復帰。あとは18周後にあるチェッカーを目指すだけとなった。
22周目にラテフィはタイヤ交換をしたことから、この展開は単にシャルルの速さだけでなく、タイヤのパフォーマンスとトラックコンディションを見極めたチームのストラテジーがズバリ的中した結果である。
このままの安定したペースで優勝か? と誰もが思った頃、32周目、#7松下信治(ART Grand Prix)とフェルッチが接触。フェルッチはそのままタイヤバリアまで一直線。これでセーフティーカーが入り、シャルルの貯金は一気にゼロとなってしまった。
36周目、レース再開。リスタートで一気に差を付けたいシャルルだが、#9オリバー・ローランド(DAMS)が必死に喰らいつく。またその後方では10台以上のクルマが二つの集団になって大バトルを繰り広げた。
一方のアントニオ。スタートポジションは15番手と冴えなかったものの、レース中盤あたりから前日までの不調を一気に吹き飛ばす快進撃を見せた。L8で14番手、L9で13番手と他車がピットに入る間に着々とポジションアップ。
さらにその後、多くのクルマがタイヤ交換で続々とピットイン。L10では10番手、L11で8番手とポジションを上げ、一時は4番手まで行ったがやや順位を落としたところ、23周終了時点でピットイン。タイヤを換えて戦線復帰。スタート時と同じ15番手で復帰したが、最初のスタート時とは意味が違っていた。
この時に履いたソフトタイヤがアントニオにとっては抜群のマッチングを見せ、ここから怒涛の快進撃。セーフティーカーが入る33周目には10番手まで浮上。残り3周となったこのフィーチャーレースは各コーナーで3ワイドのままコーナーに突入するなど大バトル合戦となったが、その中でアントニオは纏めて2台抜くなど、彼本来のパフォーマンスが一気に開花した。
そして5位に浮上した37周目。3位の#5ルカ・ギオット(ロシアンタイム)は5秒先にいるはずだった。しかし38周目にあっという間にギオットとラテフィに追い付きまたもや二台抜き。これで3位へと大躍進。
ローランドに追いかけられながらも完璧なレースコントロールをやり遂げたシャルルを先頭に周回遅れも含み6台が団子状態でフィニッシュ。1台はペナルティを受けていたクルマ。アントニオは最終コーナーでラテフィに当てられながらも態勢を崩さずに3位でフィニッシュ。シャルルとともに晴れやかにポディウムに登壇した。
そして30年前に最愛の父親が被ったヘルメットと同じカラーで走り、見事、2017年度 FIA Formula 2の初代王座を獲得したシャルル・ルクレールはピットに戻る最後の1周の間、その両手を何度も何度もヘルメットに当てた。
スプリントレース
リバースグリッドによりアントニオ6番手、シャルル8番手からのスタート。
スタートの混乱のなか、アントニオとシャルルは連なっての走行。早くもシャルルがアントニオの前に出るがアントニオも負けじとシャルルを抜き返す。
7周目にシャルルがアントニオをターン1侵入でオーバーテイク、4位に上がる。しかし10周を過ぎるあたりから二人のドライバーはタイヤがきつくなってきており、L11にローランドがアントニオをパス。
L12ではとうとうシャルルも押さえきれず、ローランドにポジションを明け渡す。この後、順位が入れ替わった二人を後方から#8アレキサンダー・アーボン(ART Grand Prix)が攻め立てる。
限界を感じたアントニオが12周目終了時点でピットイン。タイヤを換える。次いでレースのちょうど折り返し地点の14周目終了時にシャルルがタイヤ交換。コース復帰時には14位アントニオ、15位シャルルと下位に転落。しばらくの間、アントニオがリードしランデブー走行が続くがやがてシャルルが前に行き、前を行くマシンを追撃し始める。
レースも後半戦に入った20周目を過ぎたあたりからシャルル/アントニオのペースに比べ他のクルマは目立ってタイムが落ちてきた。それに呼応する様に順位を上げる二人のドライバー。22周目にはシャルル8番手、アントニオ10番手。次の周では7番手、9番手。
25周を過ぎると他車のラップタイムが極端に落ちてきて1分32~35秒台に対し、シャルルはファステストの連発で1分29秒台と1周あたり3~6秒速いタイムで周回を重ね、26周目には5位に上がりトップの4台を追いかける。
目の前にタイヤを使い果たしたスポット参戦の#12アレックス・パウロ(カンポスレーシング)がいる。L22には5秒あったその差を一気に縮め27周目にはパウロの背後にピタリと着けてオーバーテイク。しかしこの段階でシャルルのタイヤのトレッド面からはラバーが一部剥がれてしまい追撃もここが限界。
最終ラップに入った段階ではシャルル4位、アントニオ5位だったがもはやタイヤが完全に終わってしまったシャルルは為す術もなくアントニオに交わされ、さらに順位を落とし最後はフィニッシュライン寸前で#3ニック・デ・ブリーズにも交わされて7位へ。アントニオも5位フィニッシュがやっとだったが、こちらはFPと予選の悪い流れを完全に断ち切った満足感があった。
次のレースは11月24~26日にアブダビのヤスマリーナサーキットでの最終戦。ドライバーズタイトルは2年連続で獲得できたものの、チームタイトルは現在のところトップではあるが、6ポイント差内に3チームが僅差で犇めき合う状態。この最終戦で2年連続ダブルタイトルを決められる様、全力で戦います。
コメント
#1 シャルル・ルクレール
「最後の1イベントを残してこのヘレスでタイトルを決められて嬉しい。アメージングな出来事と思っているが、このヘレスは楽なレースではなかった。プライムタイヤとのマッチングが悪く、難しい状況だったけど何とか勝てたよ。とても満足しています」
「スプリントレースはプラン通りに行きませんでした。フォーコとバトルをしていてタイムをロスしてしまったのもあるし、とにかくデブリが酷過ぎました。この辺りはもっと調べてしっかりと対策をして最終戦に臨みたいと思います」
「最後にこの勝利(ドライバーズタイトル)を今年亡くなった僕の最愛の父に捧げます。いつも僕を支えてくれて、多くのものを僕に与えてくれた父でした」
#2 アントニオ・フォーコ
「自分のキャリアの中でモンツァと並んでベストなレースでした。ラスト数ラップはドラマチックな展開でしたね。ソフトタイヤは良かったです。SCが出た時にポディウムに登るチャンスができたと思いました。他車とのバトルで少しロスしましたけどね。もう少し行けたと思いますが全体的に良かったです。シャルルのタイトル獲得ができて後はチームタイトルですね。獲得できる様に貢献します」
「スプリントレースもフィーチャーレース同様に楽しかったです。予選で新しいプライムタイヤを入れてこれが良くなかった。ユーズドだと良いフィーリングになるのでこれを長く使いたかったけど無理ですよね」
「ピットストップの後、すべてが正しい方向に行きました。これがこの結果として現れました。とにかく最後のアブダビでチームタイトルを獲得できる様に頑張ります」