トップへ

【F1日本GP無線レビュー】マレーシアの教訓を活かし完璧にレースを支配したメルセデス

2017年10月10日 11:02  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

2017年F1第16戦日本GP 優勝したルイス・ハミルトンと2位のマックス・フェルスタッペン
日本GPはメルセデスAMG、フェラーリ、レッドブルの三つ巴の戦いになる。予選では圧倒的な速さを見せたメルセデスAMGも決勝の暑いコンディションでは苦戦を強いられることが予想されただけに、そんな期待があった。しかしスタート前からその一画が崩れた。 

 グリッドに向かう途中にパワーユニットに異常を感じたセバスチャン・ベッテルは、グリッド上での作業が間に合わずスパークプラグの点火に問題を抱えたままスタート。フォーメーションラップ中も電子制御システム上のリセットで問題解決を試みていた。

ベッテル(以下、VET)「話すことが許されていないのは分かっているけど、これは信頼性や安全性に関わることだから教えて欲しい。どうすれば良い?」

フェラーリ(以下、FER)「ドライバーデフォルトD2、オフ」

 しかし症状は改善せずコース上で次々と抜かれていく。セーフティカー走行中もリセットを続けるが、問題はハードウェア的なもののようで解決は難しそうだった。

FER「ドライバーデフォルトA46、やれるときにやってくれ」

VET「(調子が)戻らない。ターン9を立ち上がったけど問題を抱えたままだ」
 4周目、レース再開と同時にフェラーリはリタイアを決めた。

FER「セバスチャン、BOX。リタイアする」

 一方、ポールポジションのルイス・ハミルトンはタイヤのオーバーヒートに不安を抱えていた。グリッドに向かうレコノサンスラップを終え、その兆候を感じ取っていた。

ハミルトン(以下、HAM)「フロントがオーバーヒートしているのを感じた。フロントの内圧をもう少し上げてバランスをリヤ寄りにすべきかどうか、それが正しいかどうか分からないけど上手く行きそうな気がする」

 そのためハミルトンはタイヤを痛めすぎないようセクター1でも抑えて走行し、ハイペースで後続を引き離しはしない。2位に浮上したマックス・フェルスタッペンは、必死にハミルトンについていった。


レッドブル(以下、RBR)「HAMに着いて行けそうだったらそうしてくれ、マックス」
 日本GPの優勝争いは、前戦マレーシアGPと同じくこの2人の勝負に絞られた。

 12周目、フェルスタッペンの左フロントタイヤにはブリスターが見え始めるが、ピレリの内側ショルダー付近に出るブリスターは特に走行には影響しない。

フェルスタッペン(以下、VER)「フロントにブリスターが出ているよ」

 19周目、メルセデスAMGは後続を大きく引き離しはしないが、自分たちの安全圏でレースをコントロールしていた。

メルセデス(以下、MGP)「VERはまだ4.6秒差。我々はまだプランAのままだ」
 そして21周目にフェルスタッペンがピットインしたのを見て翌周にピットイン。そうすればアンダーカットされないだけのギャップを維持して走っていた。

 しかしハミルトンとフェルスタッペンがピットアウトすると、ソフトタイヤでスタートして引っ張っていたバルテリ・ボッタスの後ろに戻ることになった。ハミルトンはボッタスの存在にやや神経質になった。

HAM「これ以上BOT(ボッタス)にホールドアップしないで欲しい。僕のペースとタイヤが妥協させられている。彼の後ろでダウンフォースを失っているんだ」
 チームから指示が出され、ボッタスは28周目のシケインの飛び込みでインを開けてハミルトンを先行させる。そして30周目の自身のピットストップまでは同一周回の争いであるフェルスタッペンを押さえ込んでハミルトンを援護射撃をした。

RBR「タイヤはどう?」

VER「問題ないよ」

 31周目、フェルスタッペンは依然としてタイヤを上手く使っているが、ハミルトンはリヤのグリップ低下を訴えていた。

HAM「リヤに苦しんでいる」
 この日の鈴鹿は暑く、タイヤのデグラデーションは大きい。計算上は2ストップ作戦の方が速かった。しかし多くのドライバーが抑えて走ることで1ストップ作戦を採り、そうなると抜けないコースだけに周りも1ストップ作戦を採らざるを得ない。そのためにペースを抑えるというスパイラルに入っていた。


ペレス(以下、PER)「エステバンに仕掛けても構わないか?」

フォース・インディア(以下、FIN)「ノー。チェコ、ノーだ。このポジションを維持しろ。数周後にまた状況を伝える」

PER「だったらペースを上げるように伝えてくれ。遅すぎるよ」
 6位、7位のフォース・インディア勢では、後方のセルジオ・ペレスが前のエステバン・オコンに抑えられて焦れていたが、オコンはタイヤを守るためにチームから言われたペースで走っていたに過ぎない。

 上位勢にもそれと同じことが言えた。前戦マレーシアGPでタイヤの不調に苦しんだメルセデスAMGだけに、なおさらだった。

HAM「タイヤにバイブレーションが出ている」

MGP「了解、チェックするよ」
 50周目、ハミルトンは振動を訴えるがデータ上では何も問題なし。最後はフェルスタッペンが1秒差にまで迫ってきた。

VER「全力を出し切っても構わないかい?」

RBR「チャンスがあれば、分別を持ってやるぶんには構わないよ」
 レッドブルもここで攻めてもタイヤは最後まで保つと判断し、残されたグリップを使い切ってアタックすることを許可した。しかし周回遅れが挟まり、仕掛けるチャンスは訪れず。ハミルトンが逃げ切って鈴鹿で勝利を収めた。

 予選とは違い独走勝利ではない。しかしメルセデスAMGは前戦マレーシアGPの教訓を生かし、完璧にレースをコントロールし切ってみせたのだ。