トップへ

20年同居「同性パートナー」の浮気で破局…同性婚不可の日本で慰謝料請求できる?

2017年10月10日 10:43  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

何年も一緒に暮らしている同性パートナーが浮気したのですが、慰謝料を請求できますかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、同性愛者から同種の相談が複数寄せられています。


【関連記事:「ご自由にお取りください」ラーメン屋でネギを大量に食べたら「出禁」こんなのアリ?】


あるレズビアンの女性は、10年以上一緒に暮らしてきたバイセクシャルの同性パートナーに浮気されたそうです。浮気相手は男性で、結婚も検討しているのだとか。また、別の女性も20年同棲している同性パートナーの浮気が発覚。こちらの浮気相手は女性で、一緒にホテルに行っている証拠もつかんでいるとのことです。


一般に夫婦の場合、不倫が発覚すれば、本人や相手に慰謝料を請求することができます。では、同性カップルの場合はどうなのでしょうか。日本では同性婚が認められていませんが、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。長瀬佑志弁護士に聞きました。


●「結婚」していなくても、慰謝料は請求できる

「浮気をされたパートナーが、浮気をしたパートナーや浮気相手に対して慰謝料請求できるかどうかは、浮気という加害行為によって、自身の権利が侵害されたといえることが必要です(民法709条)。そして、浮気を立証できるだけの資料(メールや写真、調査会社の報告書など)も必要になります。


自身の権利が侵害されたといえるかどうかは、ケース・バイ・ケースといえます。以下、カップルのあり方によって、慰謝料請求ができるかどうかを見ていきましょう。


(1)交際中のカップルの場合


交際している段階のカップルの場合、パートナーの一方が浮気をすることは、いわゆる二股行為にあたりますが、二股行為については、道義上・倫理上の批難はあるとしても、直ちに法的な違法行為になるわけではないと判断する裁判例があります(東京地判平成21年8月24日)。この裁判例によれば、慰謝料を請求することは難しいといえます。


(2)婚約中のカップルの場合


婚約中のカップルの場合、浮気は婚約を不当に破棄する行為として、慰謝料請求することができます。


(3)内縁の関係にあるカップルの場合


内縁の関係にあるカップルの場合、浮気は内縁を不当に破棄する行為として、慰謝料請求することができます。


(4)結婚しているカップルの場合


結婚しているカップルの場合、浮気は夫婦の婚姻共同生活を破壊する行為として、慰謝料請求することができます」


交際中は難しいとしても、結婚が慰謝料請求の条件というわけではないのですね。では、同性カップルの場合はどうでしょうか?


「(5)同性カップルの場合


同性カップルの場合、異性カップルと違い、同性婚が認められていません。もっとも、同性カップルの間の交際が、夫婦と類似する共同生活であるとして法的保護の対象になると考えられたり、パートナーシップ契約等によって貞操義務条項を締結したりしている場合には、夫婦類似の共同生活を破壊したことや、貞操義務条項に違反したことを理由に、慰謝料請求できる可能性があります」


どうやら同性婚ができないからといって、最初から慰謝料請求を諦める必要はないようです。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
長瀬 佑志(ながせ・ゆうし)弁護士
弁護士法人長瀬総合法律事務所 代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)
多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか,交通事故,離婚問題等の個人法務を扱っている。
著書「若手弁護士のための初動対応の実務」(単著),『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著),『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著),『弁護士経営ノート 法律事務所のための報酬獲得力の強化書』(共著)ほか

事務所名:弁護士法人長瀬総合法律事務所
事務所URL:http://nagasesogo.com