トップグループと違う作戦で上位を目指したが難しい判断
このレースウイークは雨が降ったり止んだりの繰り返しだったが、決勝日の午前中は天候が良かった。しかし、全車がグリッドに整列したとたんに雨が降り出した。スコールでは無かったが、徐々に路面が濡れていき、スタート直前には完全なウエットコンディションになっていた。
チームは迷わずウエットタイヤをチョイスして、スタートドライバーの野尻智紀選手を送り出した。雨が強くなりそうだったので、セーフティカースタートとなった。セーフティカーが2周した頃には雨も弱まりスタートが切られた。
野尻はポジションをキープして周回を重ねた。雨は少しずつ弱まり、10周を過ぎたあたりからピットインをする車が増えてきた。ウエットタイヤでスタートしたチームがドライタイヤに変えるためだ。チームは野尻をピットに入れてドライタイヤに変えるかどうか考えていた。
他車と比べると、ラップタイムは遅くなかったので、ピットインのタイミングをルーティンのピットインまで延ばし、後続との差を広げる作戦を取った。野尻は2番手までポジションを上げていたが、雨が完全に止み、路面はほぼドライコンディションに変わっていた。
ペースが極端に落ち始めたので、チームはルーティンのピットインを23周目に行い、小林崇志選手にバトンタッチ。小林は14番手でコースに復帰した。
早めの交代だったので、小林のスティントはレース距離の2/3を走らなくてはならなかった。タイヤマネージメントが重要になってくるが、小林は安定したペースで41周目までにポイント圏内の8番手までポジションを挽回した。
ここから小林は更にタイムアップをして周回を重ねるが、45周を過ぎた辺りから車のコントロールが難しくなってきてしまった。56周目にはついにポイント圏外の11番手までポジションを落としてしまうが、小林は何とか車をコントロールし、ポイント圏内の車とデッドヒートを繰り返しポイント獲得を目指した。
しかし、わずかに及ばずチェッカーが振られてしまった。戦略的に見れば非常に難しいレースではあったが、車のバランスは決して悪くないので、最終戦のもてぎで有終の美を飾りたい。
鈴木亜久里監督のコメント
「結果的に見れば作戦の失敗だったけど、コンディションが変わりやすい中でどっちを取るかの判断は難しかったね。他と同じ作戦ではその上を望めないから、最終戦も前進あるのみです」
星学文エンジニアのコメント
「決勝直前に雨が降り始めたので、そこでドライで行くかレインで行くか迷いましたが、これだけ路面が濡れていたので、徐々に乾いていったとしてもミニマム周回数で入れば、元のポジションには戻れるだろうと考えていました」
「最初のスティントの後半でペースが予想以上に上がらなかったので、戦略的にそこが良くなかったと思っています。そういう戦略でいったので後半の距離が多くなってしまい、終盤の順位争いで踏ん張りきれませんでした」
野尻智紀選手のコメント
「不安定なコンディションでスタートが切られましたが、レインタイヤをチョイスしたのは間違いじゃなかったです。しかし、路面が乾いてきた時に上位のチームはすぐにドライタイヤに変えましたがその辺の判断は僕たちにとって難しかったです」
「雨雲はまだ残っていたので、そのまま走っていればまた雨が降る可能性も残されていたからです。結果的にみればそこでドライタイヤに変えたのが正解でしたが、上位のチームと同じ事を行っていてはそれ以上の結果を望めないので、自分達を信じて走りました」
「結果だけを見れば悪い方向へ行ってしまったので悔しいですが、レースの戦い方としては間違っていないと思っています。もちろん戦略も含め、車のセットの部分もまだまだ向上させていかなくてはなりませんので、最終戦に向けて準備をしていきます」
小林崇志選手のコメント
「スタート時は雨が降っていたので、ほぼ全車レインタイヤのスタートだったと思いますが、10周を過ぎたあたりで路面が乾いてしまいました。そこでドライタイヤに変えるチームが多かったのですが、その時点で僕たちの車にはまだスピードがあったので、ドライに変えるメリットが無いと考えていました」
「しかし、予想以上にドライコンディションでのレインタイヤの摩耗が激しかったので、結果的に早めにドライタイヤに変えた車に逆転されてしまいました。そこから何とかポイント圏内にポジションを回復する事が出来たのですが、なかなかペースが上がらず悔しいレースになってしまいました」
「次は今年最後のレースなので、しっかり分析して最終戦では良い結果を出したいです」