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佐藤健×綾野剛のぶつかり合いが凄すぎる――『亜人』互いに高め合う“攻防の魅力”

2017年10月09日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 桜井画門の人気マンガを原作とした映画『亜人』。本作は、実写化に際し改変は見られるものの、熱狂的な原作ファンも唸る、豪快な一作に仕上がっている。大きな持ち味となっているのは、息つく間もなく展開される佐藤健と綾野剛のアクション。スピーディーなカメラワークや編集といった技術にごまかされることなく繰り広げられる、彼らの頭脳と肉体を駆使した“攻防の魅力”に迫りたい。


(参考:川栄李奈、適応力の高さで女優業を邁進! 『亜人』で見せたキレキレのアクション


 佐藤健と綾野剛。彼らはこれまで多くの作品で、驚異の激しいアクションを披露してきた。綾野の存在が広く認知されたのは、やはり『クローズZEROll』(2009)の漆原凌役だろうか。当時のトレードマークである長い黒髪をなびかせ、涼しい顔から繰り出される拳と脚技には慄然としたものだった。続く『GANTZ』(2011)で演じた黒服・壹の役は、この延長線上にあるともいえるだろう。『新宿スワン』シリーズ(2015 – 2017)では、馬鹿正直で真っ直ぐな男くさいアクションを披露し、『武曲MUKOKU』(2017)では太刀筋の中に、破滅的な美しささえ見せた。


 『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)での好演を転機と見なしていいであろう佐藤健は、“史上最弱のライダー”とも呼ばれる当時のキャラクターから、恐るべき進化を遂げ続けている。いまだ残るどこか幼い雰囲気と、地に足着けた佇まい。それらは絶妙なバランスを保ちつつ、どの役へも効果的に作用している。佐藤を語る上で外せないのは、『るろうに剣心』シリーズ(2012 – 2014)だろう。常軌を逸したスピード感あふれる殺陣に、ライダーからの大きな飛躍を見せた。また、話題となった『バクマン。』(2015)では、漫画家の苦悩と格闘のイメージを、神木隆之介、染谷将太らと共闘し、コミカルなアクションとして見事に体現した。先述した『るろうに剣心』シリーズの第1部では、佐藤と綾野の両者が相まみえている。2人の攻防は、当時も圧巻だったが、高速で刀を振り合うことに終始したアクションは、『亜人』でより高度で豊かなものへとなっている。


 本作では、どこまでもストイックな両者とも、スタントなしの激しいアクションを見せている。戦闘BGMが流れれば、綾野はこの音楽に合わせて残虐なアクションを繰り広げ、まるで広大なダンスフロアで踊っているかのような、華麗な身のこなしを披露。手際よく自ら「リセット」し、不敵に微笑む姿には、後の場面で城田優が口にするように「地球がいくつあっても足りない」ほどの怒りが、内に秘めた狂気として読み取れる。綾野の目が、いつも以上に切れ長であるのも印象深い。


 対する佐藤のクールで的確な判断と、そこから生まれる走りと跳躍。右脳明晰かつ計算された行動は、自身が「亜人」であることに葛藤しながらも、動きそのものには迷いがない。綾野と佐藤の肉体と魂を凄まじくぶつけ合う様には、敵同士としてだけでなく、互いに高め合っている印象も受ける。演じる彼ら自身、互いの印象について「シネマトゥデイ」のインタビュー(https://www.cinematoday.jp/interview/A0005688)で「ものすごくストイックだと思いました。綾野くんは周りが求める以上、そのもっとずっと上を見続けているんです。綾野くんのことをすごく信頼できたし、主演としても楽なんです。でもそこまで信頼することって、簡単そうで難しいことだと思います」(佐藤)、「健は全くブレないので、主役がブレないということは、共演している側からすると本当に楽なんです。(中略)いつも毅然とした態度で撮影現場にいてくれるので、こちらも何をすべきか見つけやすかったです」(綾野)と語っている。


 本作は、続編の存在をほのめかすように締めくくられる。これから物語が進行すれば、もちろん登場人物たちのレベルも上がってくるだろう。ということはつまり、演じる俳優にはさらに高い次元でのアクションが要求されるわけである。佐藤健、綾野剛、両者の進化にさらに期待値が上がっていく。


(折田侑駿)