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スーパーGT:チーム戦略が明暗分ける。最低周回でピットインしたJMS RC Fが独走で2勝目

2017年10月08日 21:02  AUTOSPORT web

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第7戦タイのGT300クラスを制したJMS P.MU LMcorsa RC F GT3の中山雄一と坪井翔、影山 正彦総監督
スーパーGT第7戦の決勝レースが10月8日、タイ・ブリーラムにあるチャン・インターナショナル・サーキットで行われ、スーパーGT300クラスは中山雄一/坪井翔組のJMS P.MU LMcorsa RC F GT3が優勝。今季2勝目を飾った。

 決勝は現地時刻15時にスタート。スタート進行中に激しいスコールがあり、あっという間に路面はフルウエットとなったが、レースが始まる10分前ごろには青空がのぞき陽が射し始め、前日に行われた予選同様にコンディションが読みにくい状況となる。

 スコールによって一気にウエット路面となったコースだが、各車のタイヤ選択は分かれた。B-MAX NDDP GT-R、Studie BMW M6、30号車TOYOTA PRIUS apr GT、D'station Porsche、GULF NAC PORSCHE 911、VivaC 86 MCの6台がスリックタイヤを選択。それ以外のマシンはレインタイヤをチョイスしている。

 レースはセーフティーカースタートとなった。2周にわたりセーフティーカー先導でコースを周回し、その間に各車はマシンを左右に振りながらタイヤを暖める。

 3周目、セーフティカーがコースを離れ、本格的にレースがスタート。ここで好スタートを切ったのはポールポジションスタートのHitotsuyama Audi R8 LMSを駆るリチャード・ライアンだ。JMS RC F、グッドスマイル 初音ミク AMG、SUBARU BRZ R&D SPORT、ARTA BMW M6 GT3らが続くが、Hitotsuyama Audiはあっという間に2番手以下を引き離し、5周(以下、周回数はGT300のもの)を終えるころにはすでに約2.5秒ものアドバンテージを築いていた。

 この時点でのコースコンディションは、次第にコースが乾き出してはいるものの、まだ1コーナーには川ができている状態。ほぼウエットコンディションでの走行となったスリックタイヤ勢はことごとく下位に沈み、GT500クラスのスリックタイヤを履いたマシンをGT300の上位陣が抜き去るシーンも見られた。

 序盤はHitotsuyama Audiが安定した走りでトップをキープした一方、激しく争われたのは2位争いだ。JMS RC Fと初音ミク AMGがテール・トゥ・ノーズの戦いを展開。初音ミク AMGの片岡龍也は前を走るJMS RC Fの中山雄一の背後にぴたりとつけ、マシンを左右に振って何度も様子を伺う。さらにこの2位争いにSUBARU BRZが迫り、三つどもえの様相を呈した。

 2番手を守るJMS RC Fだったが、ついに11周目で初音ミク AMGにポジションを空け渡すとSUBARU BRZにも迫られる状況。スリックタイヤを履いてスタートし周回遅れとなっていたVivaC 86と絡みながら必死に3番手をキープしていく。

 このころの気温は30度、路面温度は34度で、路面は一気に乾き出し、スリックタイヤ勢の方がレインタイヤ勢よりもペースが上がり始めた。

 16周目、SUBARU BRZがいち早くピットイン。SUBARU BRZは2番手争いを展開していたがその数周後に一気にポジションを落としており、レインタイヤでの走行が厳しくなってきたことを伺わせた。SUBARU BRZはスリックタイヤに交換してコースに復帰している。

 19周目にはJMS RC F、20周目にはHitotsuyama Audi、初音ミク AMG、LEON CVSTOS AMGと上位陣が相次いでピットインを行った。しかし、LEON AMGにピット作業でトラブルが発生。右リヤタイヤを交換しないうちにジャッキダウンしてしまったのだ。ふたたびジャッキアップしタイヤ交換を終えたLEON CVSTOSは無事にコースに復帰したが、この影響により大幅にタイムを失うことになった。

 各車が続々とピットインを行うレース中盤には、トラブルやアクシデントが相次いだ。27周目にはいち早くピット作業を済ませたSUBARU BRZが最終コーナーアウト側のグラベルにマシンを止めてしまう。エンジンか駆動系にトラブルが出たようで、ここで戦線離脱となった。

 さらに39周目、LEON CVSTOSにドライブスルーペナルティが提示される。ペナルティの理由はピット作業違反で、先に行ったピットでのミスが影響したようだ。LEON CVSTOSもここでトップ争いから姿を消すことになった。

 そして45周目、衝撃的な映像がモニターに映し出された。Hitotsuyama Audiがピットにマシンを戻してしまったのだ。予選でポールポジションを獲得し決勝レース序盤でもトップを独走。ピット作業を終えてからは6番手を走行するなど、週末を通していいリズムで決勝を迎えていたものの、レースを走りきることなく姿を消した。

 そんななか、完全にドライコンディションとなったコース上で速さを見せたのがJMS RC Fで、中盤からトップを独走。2番手スタートからウエットコンディションの序盤こそ苦しい戦いを強いられたものの、路面コンディションが改善した中盤以降は危なげない走りでGT300のレースをリードし続けた。

 一方、JMS RC Fの後ろで終盤、火花を散らしたのは3位を争うD'station Porscheと4番手のARTA BMW M6 GT3だった。表彰台の最後の一角を争うこの戦い、ARTA BMWのショーン・ウォーキンショーはD'station Porscheの藤井誠暢の背後にぴたりとつけ、完全にテール・トゥ・ノーズのまま周回を重ねる。

 53周目、ウォーキンショーが最終コーナーで藤井のインにマシンをねじこもうと、激しいブレーキングをみせる。しかし、ここで止まりきれずにオーバーラン。D'station Porscheに差を広げられたばかりか5番手を走行していたGAINER TANAX triple a GT-Rにも交わされ、6番手にまでポジションを落としてしまった。

 レースはそのまま最終ラップを迎え、JMS P.MU LMcorsaが混迷のタイラウンドを制した。2位には50kgものウエイトハンデを積みながらも堅実な走りで表彰台を獲得した初音ミク AMG、3位には最終ラップにふたたび猛追してきたARTA BMWを振り切り、D'station Porscheが入っている。

 第6戦終了時点でドライバーランキング3位につけていたVivaC 86は、スリックタイヤでスタートしタイヤ無交換作戦の戦略で上位進出をねらったが、表彰台獲得はならず15位でチェッカーを受けた。

 ついに2017年スーパーGTも最終戦もてぎを残すのみ。チャンピオンシップの行方、シーズンラストのレースで優勝を手にするのは果たしてどのチームになるのか。ますます目が離せないスーパーGT第8戦もてぎは、11月11~12日に開催される。