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GT300予選《あと読み》:柳田の“浮上のきっかけ”を生んだ不安定なタイの天候。決勝もお天気次第!?

2017年10月08日 14:02  AUTOSPORT web

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GT300クラス移籍後、初ポールポジションを獲得した柳田真孝(Hitotsuyama Audi R8 LMS)
大雨、晴れ、大雨、曇り……。コロコロと移り変わる南国の天候のなか、スーパーGT第7戦タイのGT300クラスの予選は、非常に難しいものになった。「もう少し乾いていれば……」「もう少し降っていれば……」という声が、予選後のパドックではあちらこちらから聞かれた。

■「雨は相性いいのかも」柳田のポールは浮上のきっかけに!?
 今季のGT300では、第4戦SUGOでも証明されたように、ウエットで強みを発揮するタイヤはブリヂストン、そしてダンロップ。特にいわゆる“チョイ濡れ”はダンロップが強かった。ただ、ダンロップ勢のなかでも、渾身のアタックでポールポジションを獲得してみせた柳田真孝の走りは、周囲から多くの賞賛が寄せられた。ちなみに、Audi Team Hitotsuyamaのポールポジションは、アウディを使うようになってからは初。ヒトツヤマレーシングとしては、JGTC全日本GT選手権時代の2002年まで遡る(当時はGT500クラス。服部尚貴/田嶋栄一組イエローコーンマクラーレンGTRが第6戦もてぎで獲得)。

「僕も本当に驚いています。2017年はこれまですごく苦しいシーズンが続いていました。結果が出ず、予選も苦しかったですから」と予選後、柳田は語った。今季、GT500からの移籍として注目を集めていた柳田だったが、シーズン序盤戦は苦戦していた。ただ、中盤の公式テスト以降柳田はきっかけをつかんでおり、それが結実したかたちだ。「リチャード(ライアン)からのインフォメーションもありましたが、あのタイムに繋げたのは柳田の力だと思います」と岡澤優監督。

 柳田に予選後話を聞くと、「自分でポールポジションを獲ったのは、2013年の開幕戦岡山(MOTUL AUTECH GT-R)以来。それも雨だったんですよね。初めてGT500でポール獲ったときも雨だったし、GT500で2回目にチャンピオン獲ったのも雨。相性いいんでしょうね(笑)」と笑う。

「アウディとダンロップの組み合わせはクセがあって、そこをつかむのにすごく悩んでいた。でも、タイに行くにあたってシミューレーターをやったりして、いい感触がつかめるんじゃないかと思っていたんです。そこに雨が加わったのが今回の結果かな。今後に向けていいきっかけになると思うし、チームも喜んでくれた。僕自身にとってもいいきっかけになると思いますし、一緒に上がっていきたいですね」

 このタイのコースは、柳田もGT500で優勝を飾っており、タイ、雨、そしてダンロップと柳田のための好条件が重なったかたちだろう。これまでライバルたちが戦々恐々としていた“強力コンビ”が、このポール獲得をきっかけに一気に力を発揮するかもしれない。なお、この“柳田覚醒”については、オートスポーツ本誌でもお届けする予定なのでぜひご期待いただきたい。

■決勝レースは天候がすべてを左右する?

 では、明日の決勝レースはどんな展開になるだろうか。「もちろん勝ちたいですよね」と岡澤監督は言う。ただ、長い直線区間があるこのチャン・インターナショナル・サーキットのコースでは、Hitotsuyama Audi R8 LMSにとってもしドライになってしまうと、防戦一方になる可能性もある。よって、Audi Team Hitotsuyamaにとっては、今日のような“チョイ濡れ”がベストだ。これは5番手につけた同じダンロップのSUBARU BRZ R&D SPORTも同様だろう。

 一方、もう少し降ってほしいか、完全に晴れて欲しいのはブリヂストン勢だろう。今回3番手につけているARTA BMW M6 GT3は、マシンとしても相性がいい。また、2番手につけたJMS P.MU LMcorsa RC F GT3も、ひょっとするとタイは相性がいいマシンなのかもしれない。一方、ブリヂストンはドライでも速く、LEON CVSTOS AMGが追い上げをみせ、最終戦もてぎに向け優位にシリーズを運ぶ可能性もある。

 そして「晴れたら勝ちにいく」というのは、グッドスマイル 初音ミク AMGの河野高男エンジニアだ。ヨコハマ勢は、ウエットとなるとライバルからやや遅れてしまうが、ドライとなれば強さがありそう。実際、ドライを願っていたのは間違いなく、Q2ではグッドスマイル 初音ミク AMG、そしてStudie BMW M6、B-MAX NDDP GT-Rがスリックでコースイン。Studie BMWとグッドスマイルはウエットに履き替えたが、B-MAXはスリックを履き続けた。ちなみに、グッドスマイルはかなりマシンも決まっているようで、4番手は「谷口(信輝)の意地だろうね。チームみんなが今回は勝ちたいと思っているし、ドライなら勝てる」と河野エンジニア。

 惜しかったのはStudie BMW。公式練習で最速タイムをマークしながら、セッション終了間際にミッショントラブルが起きてしまった。予選までに修復はできたものの、Q2ではアタックのタイミングが少なくなってしまい11番手に。それでも、得意なコースだけに、もしドライになれば追い上げも期待できるだろう。また、ウエットに泣かされたのはヨコハマのJAF-GT勢も同様だ。

 晴れか、雨か……それともチョイ濡れか……!? スーパーGT第7戦タイの決勝は、天候によって大きく左右されそうな予感がある。それも、このタイでのウエットのデータは、これまでほとんど降ったことがないだけに、各チームとも極端に少ない。異国の地で、これまでにないような大混戦が待っているのかもしれない。