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『わろてんか』は『ひよっこ』を超えるか? 朝ドラの傾向からヒットの可能性を探る

2017年10月08日 13:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 全156回を通じた期間平均視聴率が20.4%と、有終の美を飾った『ひよっこ』。開始当初こそ奮わなかったものの、フタを開けてみれば前作『べっぴんさん』を0.1%上回る大健闘を見せ、最終回の後は全国で“『ひよっこ』ロス”を語る人が続出した。


参考:松坂桃李、『わろてんか』子役との恋模様が話題に


 これで2015年後期の『あさが来た』以降、4作連続で20%の大台を突破したことになったわけだが、朝ドラの切ないところといえば日曜を挟んで次の週にはもう新番組が始まってしまうというインターバルの短さ。すでに10月2日より『わろてんか』が放映開始。こちらも初回から20%を超える好スタートを切り、早くも注目を集めている。


 さて、先ほど4作連続で大台越えと書いたが、ここ1~2年の朝ドラを少し振り返ってみよう。


 まず、2015年後半からのタイトルをみると『あさが来た』『とと姉ちゃん』『べっぴんさん』『ひよっこ』と、年代の差こそあれ“時代劇”が続いている。特にここ3作は戦前から戦後を経て高度経済成長に至るまでが舞台となっており、朝ドラのメイン視聴者層であるシニア世代に特に響いた感はある。


 次に物語だが、『ひよっこ』以外は、実在の人物をモデルにしたいわゆる“女の一代記”だ。実在の人物と言っても、誰もが知っている有名人というよりは、言われたら「ああ~」となるレベルの知る人ぞ知る人物であるところが絶妙。紆余曲折あれど、結局はサクセスストーリーである点も安心して視聴できる所以だろう。


 ではヒロイン像はどうか。『あさが来た』で波留が演じた白岡あさは女だてらに炭鉱経営や保険会社の設立を成し遂げたスーパーウーマン。それでいて天真爛漫でとぼけた言動のキャラクターとして描いたことも、偉業とのギャップが感じられて面白かった。『とと姉ちゃん』の小橋常子は、戦後の混乱期に出版社を立ち上げ、のちに一世を風靡する雑誌を作り上げた才女。自分を曲げずに時代を切り拓いていく姿に勇気付けられた視聴者も多かったことだろう。高畑充希は本作で大いに株を上げ、『過保護のカホコ』で大ブレイクを果たした。


 やや異色なのが『べっぴんさん』で芳根京子が演じた坂東すみれ。やがては皇室御用達になる子供服会社の社長がモデルだ。ちゃきちゃきした明るい娘がスタンダードな朝ドラヒロインにおいて、おっとりしたお嬢様タイプのすみれにやきもきさせられた点が、後半失速の理由かもしれない。そして『ひよっこ』の谷田部みね子は茨城の奥地から上京してきた田舎娘。平凡だが心優しく家族思いの愛されキャラは、何者にもならない普通の女の子だったからこそ共感を呼べたところだと思う。体重を増量したり、独特のイントネーションの茨城弁に果敢に挑んだ有村架純には、2年連続で紅白司会に内定との噂もある。


 朝ドラは民放のドラマと違って、日課のように見続ける視聴者が多いのが特徴。一度ルーティンに組み込まれてしまったら、あとは“ながら見”でもチャンネルを合わせてしまうものである。だからこそ、序盤に盛り上がりのある作品は強い。『あさが来た』ならディーン・フジオカが演じた五代との出会い、『ひよっこ』なら父の失踪だろうか。1、2週できっちりファンをつかめればよほどの反感を買わない限りは、一定の推移が見込めると言える。
もちろん朝という時間がら、悲しい・暗い鬱展開が続くのはNG。さまざまな困難にぶつかり、時に失敗し、また大切な人との別れが描かれても、最後には全員幸せになって終わる。それが朝ドラであるべきだ。


 そういう意味でも『わろてんか』は過去のヒット作の事例を大いに受け継いだ作品である。まずは舞台が明治後期から第二次世界大戦終了直後であること。今回も時代劇だ。そしてヒロインの藤岡てんは、吉本興業の創業者・吉本せいがモデルとされている。吉本といえば言わずと知れたお笑い界の一大勢力。しかしその創業者と言われても全くピンとこないあたり、視聴者の興味を引く絶妙なセレクトだと思う。演じる葵わかなは、アイドルユニット「乙女新党」元メンバーという経歴はあるものの、女優としてはまだまだ知られていない注目株。ここ最近は朝ドラ経験者やある程度知名度のある女優を起用してきたことを考えると冒険にも思えるが、ほぼ無名で『あまちゃん』の主演に抜擢され、大ブレイクしたのんの存在を忘れてはならない。


 物語としては序盤も序盤だが、“笑い”をテーマにしたドラマや、吉本だけに芸人が多数登場することなどを考えると盛り上がりには事欠かない作品となりそうだ。これから3ヶ月。大いに楽しませてくれることを願っている。(渡部あきこ)