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隣家の豪華「ベランダガーデニング」で「虫さん」大発生して迷惑…やめさせるには?

2017年10月07日 11:22  弁護士ドットコム

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豪華な一軒家の広々とした庭は無理でも、せめてマンションのベランダを「私の園」にできないか、と考えたのかどうか、クリエイティビティを遺憾無く発揮した「ベランダガーデニング」に精を出す人たちがいる。東京都心部の低層階の分譲マンションに住むナオコさん(40代)の悩みは、そんなベランダガーデニングに勤しむ隣家だ。


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ナオコさんは「ご近所付き合いもないので、外から眺めるだけですが、階下から見上げても、鬱蒼と生い茂る木々、季節ごとに色合いが違う草花など、隣家はまるで植物園のようです。今の時期はゴーヤーが実っています」と話す。それだけ聞くと、マンションの外観に彩があって悪くないのでは、と思ってしまうが、ナオコさんは非常に迷惑だと感じているそうだ。


「隣家をめがけて、虫たちが集まるんです。セミ、ハチ、蝶々、黒っぽい色をした昆虫類。そして、その虫たちが我が家にも一部、迷い込んでくるわけです。ああ、こうして話すだけで嫌気がさしますね」。


高層階のマンションでは、ベランダに植物を置くことや洗濯物を干すことは安全の面から禁止しているところもあるが、7階建のナオコさんのマンションでは、そうした規定はない。しかしナオコさんは「本当に虫たちが気持ち悪いので、引っ越しも考えてしまいます。鉢植えをいくつか程度ならいいですが、生い茂らせるのはルール違反です。ガーデニングをやめさせることはできないでしょうか」と疑問を感じているそうだ。


迷惑なガーデニングをやめさせるためには、どうしたらいいのか。加藤幸英弁護士に聞いた。


●やめさせるため、どうしたらいい?

「迷惑なガーデニングをやめさせるために『共同生活上の不当行為』(区分所有法6条)に当たるとして、撤去を請求していくことになります。裁判によって撤去を求める場合には、区分所有者の集会の決議が必要になりますので、まずは管理組合に相談しましょう。


はじめに確認しておきたいのが、一般にベランダは専有部分ではなく、あくまで専用的に利用する権利(『専用利用権』)のある共用部分にすぎないということです。


そして、たとえ専用利用権を有していたとしても、他の区分所有者の共同利益を侵害する行為は許されません(法6条、13条)。ここでいう『共同利益』には、緊急時の避難路の確保、降雨等の際の排水の確保、建物の老朽化防止、建物の美観維持等の区分所有者の生活上の利益も含まれます。


ナオコさんの隣室は『まるで植物園』のようになっており、このような過剰なガーデニングはマンションの美観を害しているといえます。更には、ベランダの緊急時の避難路としての機能や排水の機能も損なっています。


加えて、ガーデニングで使用している花壇や土砂や水は、階下への漏水等の原因にもなるだけでなく建物の耐久性を低下させ、地震等の災害時に深刻な被害につながりかねません」


ナオコさんは、「虫たち」に強い苦痛を感じているようだ。この点はどうだろうか。


「ナオコさんが最も迷惑と感じている『虫たち』も、騒音・振動・悪臭などの発散、猛獣の飼育などと同様に、区分所有者の共同の利益に反する行為にあたるでしょう。


よって、今回の相談のように不利益が客観的かつ具体的に認められる場合には、『専用利用権が設定された共用部分における共同利益背反行為』として撤去請求が認められる可能性は高いと考えます。ただし、一部のマンション住民のみが単独で撤去請求を求めることはできませんので、集会決議を経るためにも、まずはマンションの管理組合に相談してみましょう(法57条)」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
加藤 幸英(かとう・ゆきひで)弁護士
昭和47年12月愛知県生、愛知学院大学法学部卒、不動産賃貸業経営、同大学法科大学院修了。平成22年弁護士登録。日本交渉学会会員、同大学非常勤講師。取り扱い分野は、不動産関連事件、遺言・相続及び各種交渉等。

事務所名:隼綜合法律事務所
事務所URL:http://hayabusa-legal.com/