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満島真之介、“満島ひかりの弟”から演技派バイプレイヤーへ 兄弟・姉妹俳優の躍進

2017年10月06日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 現在公開中の映画『三度目の殺人』で、主演の福山雅治、日本を代表する俳優・役所広司にも負けじと劣らない演技力を放っているのが、若手弁護士・川島演じる満島真之介だ。満島の素朴な発言のひとつひとつは、この法廷劇を傍観することしか出来ない観客にとって、作品テーマに触れる手引きともなるだろう。同日に封切られた『散歩する侵略者』における満島の存在も興味深く、「侵略者」に、ある概念を奪われてしまい変化するキャラクターを、実に自然なかたちで体現している。“演技派女優”のトップランカーである姉・満島ひかりの姿を追って登場した満島真之介。そんな彼の柔軟な表現力から目が離せない。


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 両作品とも満島に与えられたポジションの責任は、ある意味で重いものだといえるだろう。前者『三度目の殺人』で彼が口にする、「犯人への理解」や「どっちが本当なのか」、あるいは先述した「生まれてこなければよかった人間なんていない」といった言葉は、真実よりも勝ちばかりにこだわる弁護士・重盛(福山雅治)の考えとのズレを生む。そのズレから浮かび上がってくるのは、作品テーマの一端でもあるだろうし、気づけばそれらを掘り下げていく役割も担っているのだ。また、まだ若手であるがゆえ、法廷での場数を踏んでいないであろう彼の積極的な学習態度は、法律について明るくない筆者などにとって、作品世界への導き手ともいえるかもしれない。


 後者『散歩する侵略者』での満島は、侵略者に「所有」に関する概念を奪われる。この「所有」とは彼にとって、自身を縛り付けていたものでもある。大切な概念を失い、生活困難へと陥る人々も多く見られる中、彼の場合には「解放」として作用するのだ。自宅に引きこもりがちだった彼は、街頭で演説までしてしまうようになる。街角でばったり再会した侵略者に対して、「俺はどうなっちゃったの」などとあまりにも素朴な疑問をぶつける彼は、またしても作品テーマの一端を掘り下げる役割を、気づかぬうちに担っているようだ。両作品とも、個性を前面に押し出したような取り組みでなく、そのポジションや、映画の骨組みの一部を全うする誠実な姿勢は、そのまま役にも反映されているように思う。これらの健闘ぶりに、満島を若き名バイプレイヤーとして見る向きも多いだろう。正直、彼の登場による安心感はでかいのだ。


 満島真之介といえば、冒頭で触れたように、姉・ひかりとともに姉弟揃って活躍している俳優だ。おそらくこの事実を知らぬ者はいないほど、2人が日本映画界に欠かせぬ存在となっている。新田真剣佑や村上虹郎、デビューしたばかりの寛一郎など、二世俳優の台頭に大きな注目の集まる昨今。瑛太・永山絢斗兄弟や、広瀬アリス・広瀬すず姉妹など、兄弟・姉妹俳優の活躍も目覚ましい。


 この10月だけでも『リングサイド・ストーリー』、『ミックス』と主演作が立て続けに公開される瑛太。2001年のデビューから確実にキャリアを積み上げ、いつからか“作品の顔”となることが多くなった。弟の絢斗もまた、兄と同じような道を辿りつつある。昨年下半期のNHKの連続テレビ小説『べっぴんさん』ではヒロインである芳根京子の相手役を務め上げ、映画『海辺の生と死』ではその身に文学的な香りを湛えた穏やかな演技を見せる。『居酒屋ふじ』(テレビ東京)でのコミカルな好演も記憶に新しい。その演じる幅の広さには、満島と同様のバイプレイヤーの感もあるのではないだろうか。また、話題の超大作への出演が続く広瀬すずだが、姉のアリスも『氷菓』、『巫女っちゃけん。』と次々と主演作の公開が待たれる。映画女優としてのさらなる飛躍に期待は高まるばかりだ。


 兄弟・姉妹どちらかがすでに活躍していることにより、他方も注目される機会に恵まれるとういうことがほとんどのようだが、それはあくまでとっかかりに過ぎない。二世俳優もまた然り。それぞれがメキメキと実力をつけているのも事実である。先述した俳優は、今後も作品ごとに中核を成す存在を担っていくに違いない。


(折田侑駿)