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『おそ松さん』トド松声優・入野自由のマルチな才能 フィールドを超えた活躍を読む

2017年10月05日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 昨年11月に休業を発表してファンをざわつかせた、人気声優の入野自由(いりの みゆ)。自身のブログには、「2017年1月のソロライブが終わったあと、しばらくの間お休みをさせていただきます!!前々から考えていた海外留学のためです」、「皆さんが思っているより早く戻ってくると思います」と綴っていたが、その後早々に秋アニメ『おそ松さん』2期への出演も決定。公式ブログで正式に帰国を発表してはいないものの、今年8月頃からは国内イベントにも頻繁に登壇するようになり、どうやら早くも留学生活を終えていたようだ。


参考:マルチ声優・宮野真守、日本語吹き替えに抜擢され続ける理由 アニメと吹き替えの違いを考察


 2014年にも1ヶ月ほどNYやロンドンを巡り、ブロードウェイミュージカルの観劇や歌・演技のレッスンに明け暮れていたという入野。アニメ声優としての知名度がとりわけ高い彼だが、実は舞台俳優や歌手としてもマルチに活動している。


 入野はまだ20代でありながら、すでに芸歴20年以上という長いキャリアを持っている。幼い頃に劇団四季の舞台を観たのがきっかけで、4歳で劇団ひまわりに入団。すぐさま子役として芸能活動をスタートさせた後に、1995年に『逮捕しちゃうぞ』で声優デビューを果たす。その後、中学1年生という若さで『千と千尋の神隠し』のハク役を務めたことで、一躍時の人となった。


 ハクを演じた際は声変わり真っ只中でかなり苦労したそうだが、年頃の少年にしか出せない繊細な声に、心奪われた視聴者も多かったことだろう。その後も、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』の宿海仁太(じんたん)役や、『聲の形』の石田将也役のような主役キャラのほか、『ハイキュー!!』の菅原孝支役など話題作への出演も重ね、人気声優の道を着々と歩んでいった。男性声優陣の中では比較的若手ということもあって少年・青年役が多く、甘めの“イケボ”で女性人気も高い。


 先日2期の放送がスタートした『おそ松さん』では、入野自身、メインキャストの中で最年少ということもあって、6つ子の末っ子・松野トド松(ほか、エスパーニャンコ以外の猫の声なども担当)を演じている。トド松は、爽やかな甘え声で一見かわいらしいキャラかと思いきや、計算高く腹黒い役どころだ。留学に際して、ファンの間では密かに「2期のトド松は代役になるのでは?」と危惧されていたのだが、入野はキャスト発表で「(2期は)多分面白いと思うけど、1期の方が…ってよくあるし。変わらず、ダラ~っと頑張ります。多分面白いはず!」と、なんともゆるいコメントを寄せていたのも印象的である。


 また、入野といえば、かねてより声優のほかに俳優業にも力を入れていた点も特徴的だろう。舞台出演にも積極的で、今年12月からはミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』の公演も控えている。さらに、歌手としても才能を発揮し、ソロのほか、神谷浩史とのユニット「KAmiYU」も結成している。


 こうした子役出身のマルチ声優といえば、入野と同じく“イケメン×イケボ”で名を馳せる宮野真守も挙げられるだろう。宮野も入野と同じく劇団ひまわり在籍で、比較的年齢も近かったため、ふたりは子役時代から交流があったそうだ。これまでに共演作も多く、現在でも仲がいいと言われている。さらに、宮野も吹き替え声優や歌手、ナレーターとしても活動するなど、アニメ声優という枠組みを超えた活躍を見せている。


 声優のメディア露出が増え、ある程度ビジュアルも求められるようになったことで、「声優がタレント化、アイドル化した」とネガティブに言われることも多い。しかし、近年声優という職業自体が、「専門分野の境界が不明瞭」で「多種多様な才を持つ」という意味で“マルチタレント化”してきているのではないだろうか。入野や宮野のような、アニメというフィールドを超えて多面的な活躍を見せる存在が、今後の声優のモデルタイプになっていくのかもしれない。


■まにょ
ライター(元ミージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。