10月5~8日に行われるWRC世界ラリー選手権第11戦スペインに向け、参戦するドライバーたちが意気込みを語った。
シリーズで唯一、グラベル(未舗装路)とターマック(舗装路)が入り交じるミックスサーフェスで争われるラリー・スペイン。1991年からWRCの1戦として組み込まれているが、特殊な路面コンディションのイベントになったのは2010年からだ。
2017年大会は土曜日の2ステージ、日曜日の3ステージが新たに設定されたもので、全ドライバーにとって未知の戦いとなる。また、特にターマック路面は研磨剤のように粗いため、気温が上昇した場合、ドライバーには高いタイヤマネジメント能力が求められる。
競技初日となる5日はサービスパークが置かれるサロウでセレモニアルスタートのみが行われ、翌6日にSS1が行われる。競技初日のSS1~6はグラベルでの争いだ。
7日からはターマックでの争いとなり、この日はSS7~13までの7SSが、最終日の8日はSS14~19までの6SSで行われる。最終SS19は上位5名にボーナスポイントが与えられるパワーステージだ。
最上位クラスを争う4チームは全チームとも3台体制でエントリー。既報の通り、ヒュンダイはヘイデン・パッドンに代わりアンドレアス・ミケルセンを投入する。シトロエンの9号車C3 WRCにはクレイグ・ブリーンに代わり、カリッド-アル・カシミが乗り込む。
また、今大会のWRC2クラスには、TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラムに参加している勝田貴元、新井大輝の2名が参戦。トミ・マキネンレーシングのフォード・フィエスタR5をドライブする。
ポイントランキングではトップのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)に対し、2番手のティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)が17点差と肉薄。
また、ランキング3位もオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)とヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が11点差と接戦となっている。
チームランキングはオジエ擁するMスポーツが325点で独走状態。しかし、2位ヒュンダイと3位トヨタは48点差と、展開次第では順位に変動がありそうだ。
Mスポーツ/ヒュンダイ陣営のコメントはこちら
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■Mスポーツ
●セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)
「休暇も終わり完全にリフレッシュできたから、戦いに戻る準備は万全だ。ラリー・スペインはいつでも楽しいイベントだよ。ミックスサーフェスは本当にユニークで、ファンたちも熱狂的だ。僕にはここでたくさんの特別な思い出があるから、また今週末いい思い出を増やせたらいいね」
「(先頭走者としての)掃除役は、僕らがチャンピオンシップの首位に戻ったことを意味しているから、ある意味いいことだ。だけど、ドライならチャンピオンシップのリードを維持することもチャレンジングになる。オープニングのグラベルステージを通して、タイムロスを最小限に抑えるよう頑張らなくてはならない」
「その次は、このイベントで定評のある高速でスムーズなターマックだ。サーキットのようなアスファルトに慣れるために1日だけテストを行ったけど、マシンのフィーリングはかなり良かったよ。テストで充分な距離を完走したから、最善を尽くす準備もできている」
「チャンピオンシップは接戦だから、チャンピオン争いがまさに僕らが戦うべきものだ。僕らは17ポイントのリードがあるけど、誰もが最大90ポイントを獲得する可能性がある。だから、みんなで協力しながら自分たちのポテンシャルを最大限にする努力をしなければならない。ラリー・スペインのスタートに向けてね」
●オット・タナク(フォード・フィエスタWRC)
「マシンに戻るのが待ちきれないよ。家族とともに家で過ごす時間が取れたことは本当によかったけど、ラリーのスリルが恋しくなり始めていたことも認めなくてはいけないね!」
「僕らはグラベルでもターマックでも競争力があることを証明できているから、スペインの混合サーフェスにもひるんでいないよ。同じ週末に、ひとつのサーフェスから次のサーフェスへ適応することに最初は少し戸惑ったけど、僕らはみな素早くスピードを上げられた」
「グラベルの道路は、高速セクションとテクニカルセクションのミックスが素晴らしい。また、僕らは先週スペインでターマックのテストを行ったけど、それらの道路がいかに素晴らしいかを再認識したよ。すごくスムーズで、いくつかの場所では本当にサーキットを走っているみたいだ」
「どちらのチャンピオンシップも接戦だから、面白い週末を体験するだろうね。もちろん、マニュファクチャラーとドライバーズ、両方の選手権のために最善を尽くす」
●エルフィン・エバンス(フォード・フィエスタWRC)
「シリーズで唯一の混合サーフェスイベントだから、ラリー・スペインは本当にユニークだ。過去、スペインではあまり運がなかったけど、今年はそれを修正できるといいね」
「グラベルのステージは、かなりテクニカルだ。また、(SS3とSS6の)テラ・アルタにはグラベルのなかに長いターマックのセクションがある。そこではマシンがナーバスになるから、心して走らなくてはいけない」
「そういった意味で、かなり戦略的なラリーだし、ターマックとグラベルが混在するから、1日を通した考えをもたなくてはならない。天気も勝敗を分ける要素になるから、スペインの天気予報が僕たちにどう影響するかも楽しみだ」
■ヒュンダイ/ヒュンダイ・モータースポーツ
●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)
「チャンピオンシップの面でも重要な時期に入り、僕たちはすべてのラウンドで優勝、あるいは表彰台獲得を目指し、集中していかなければならない。ドライバーズランキングは(セバスチャン・)オジエ、僕、(オット・)タナクの間で微妙なバランスを保っている。何が起きてもおかしくはない」
「ラリー・スペインは路面の変化があり、いつものように大きな挑戦になるだろう。ラリー・スペインはクルー全員が楽しめる。雰囲気が良いし、たいていは天気も素晴らしいんだ。長い夏休みで充分休養した。これからは僕たちの最高の力をタイトル争いにぶつけるよ」
●アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)
「ヒュンダイ・モータースポーツのドライバーとしてデビューを飾ることができて本当に嬉しい。発表があってから、アンダース(・イエーガー/コドライバー)と僕はマシンをターマックとグラベル両方でテストするチャンスがあった。そこで経験したことにとても感銘を受けたよ」
「マシンはあらゆる環境に対応できることがすでに証明されているし、そうした特性を活かすにはスペインほど適した場所はない。ここでのラリーは僕にとって特別だ。僕はスペインで2015年に初めての優勝を飾っているから、素晴らしい思い出がある」
「路面(コンディション)の変化は過酷だ。特にグラベルからターマックへ素早く(ドライビングを)切り替えなくてはならない。困難だが、とても楽しめるイベントだ。チームとの最初のWRCイベントを先頭で戦えるよう期待しているよ」
●ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)
「母国ラリーのためにスペインに戻ってくるのはいつだって嬉しいものだ。それに多くの熱狂的なサポーターの前で競争するチャンスがある。彼らの応援に応えたいと思うよ」
「金曜日のオープニングのグラベルステージでの出走順は僕たちに有利だと思う。最後の2日間はターマックのコースに移動するけど、そこではシーズン3度目の表彰台と、ヒュンダイ・モータースポーツのためにカタルーニャでの連続3位獲得を目指してプッシュしていくよ。それが目標なんだ」
■シトロエン/シトロエン・レーシング
●クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)
「充実したテストセッションを行うことができたし、セブ(セバスチャン・ローブ)との仕事は興味深いものだったよ。改善の余地はつねにあるものだ。でも僕たちは正しい方向へ進んでいると思う。また競争の場へ戻ることを楽しみにしている。不満足な結果だった(第10戦)ラリー・ドイチェランドと長い休みの後だからね」
「今回が僕にとって10回目のカタルーニャ・ラウンドになるなんて、とても信じられないよ! 可能性の面で言えば僕たちの出走順は有利だけど、それもダストの状態や雨が降っているかどうかに左右される」
「最後の2SSでは、C3のターマックにおけるパフォーマンスレベルのすべてが明らかになるだろうね。一番重要なことは、僕自身が走行を楽しむことだ。楽しんでいれば、いい結果を目指すことができるし、チーム全体にとって良いニュースがもたらされるだろうから」
●ステファン・ルフェーブル(シトロエンC3 WRC)
「シトロエンC3 WRCでの走行に戻ることができて嬉しいよ。ラリー・ポーランドを総合5位でフィニッシュしてから3カ月になる。ここは比較的不慣れなコースだから、各ステージで適したペースを見つけていかなければならないだろう。このラリーでは間違いなく僕がフィールドで一番経験に乏しいドライバーだということを心に留めておく必要がある」
「先週のテストには満足しているよ。今回初めて、フロント対リヤタイヤの新しいトルク配分を試す機会があったんだ。このアップグレードは僕のドライビングスタイルに良く合ったから、とてもポジティブなテストになったね。コンディションが良ければ、僕たちの1日目の出走順を大いに活かすようにするよ」
●カリッド-アル・カシミ(シトロエンC3 WRC)
「ラリー・スペインに出るのは今回で10回目になるんだ! このラウンドはWRCカレンダーのなかでも僕のお気に入りのひとつだよ。ミックスサーフェスのルートに挑むのが好きなんだ。特にステージの間にグラベルからターマックに切り替わり、より速くドライブできるようになるところがいいね」
「ラリーの雰囲気もとても気に入っている。サポーターたちは信じられないくらい素晴らしいし、運営組織もとてもきちんとしている。だから僕は毎年カタルーニャに戻って競争に加わっているんだ」各ステージで適切なペースを見つけ、できると思った時はプッシュしていく。クリス(・ミーク)とステファン(・ルフェーブル)の健闘を祈っているよ」
■トヨタ/TOYOTA GAZOO Racing WRT
●ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)
「初日がグラベル、残る2日間がターマックという組み合わせを気に入っているよ。スペインの舗装路はまるでサーキットのようで、WRC最高のターマックSSだと思う。グラベルに関しても、とてもいいSSが揃っているんだ」
「スペインに向けては今週2日間テストを行なった。ターマックではサスペンションを、グラベルではディファレンシャルを集中的にテストしたよ」
「我々のクルマはグラベルのフィンランドで勝つだけの速さがあり、ターマックのドイツでも高いパフォーマンスを示した。だから、スペインでもきっと高い競争力を発揮できると信じている」
●ユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)
「事前のテストではドイツの時のように、クルマはとてもいいフィーリングだった。本番でもドイツと同じようにラリーを戦う予定だよ」
「しばらくこのラリーに出ていなかったから、ここ数年間同じコースを使い続けている金曜日のグラベルSSは私にとって大きなチャレンジとなる。だから、ライバルと対等に戦うためには、かなり攻めて走る必要があるだろうね」
「ただし、去年のように雨が降らない限りは、それほど大きな差はつかないのではと思う」
「ターマックの土曜日と日曜日に関しては、いくつか新しいSSがあるから、自分にとってはプラスになるのではないかと期待しているよ」
●エサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)
「グラベルとターマックが混合するスペインは、とても挑戦し甲斐があり、今季これまで自分たちが戦ってきた他のラリーとはタイプが完全に異なる」
「グラベルのSSは(第6戦)ポルトガルと似ていると思う。ターマックのSSは非常にユニークで、世界でもっとも素晴らしいターマックステージだと思うよ」
「スペインのターマックはクリーンかつスムーズで、(第4戦)フランスのコルシカ島の道ほどツイスティではなく、(第10戦)ドイツの道ほど幅が狭くないため、運転がとても楽しく、ラリーのスタートが待ちきれない」
「前戦のドイツは浮き沈みが激しいラリーだったけど、最終的には競争力のある速さを得られたから、スペインでは両方の路面で良いパフォーマンスを発揮することができると思う」