マレーシアGPのパドックで、あるF1関係者と立ち話をしていたら、その横を見慣れぬ色の頭髪をした人物が、通り過ぎて行った。ジャック・ビルヌーブだった。
これまでビルヌーブの頭髪の色は白髪混じりのグレーだった。それがマレーシアGPでは金髪になっていた。ヨーロッパのメディアによれば、金髪は英語でブロンドというが、ビルヌーブの頭髪の色は通常のブロンドよりもさらに白味がかかっているため、プラチナ・ブロンドと言うらしい。
いずれにしても、この立ち話が終わったら、あとで話を聞くことにしようと、そのときは通り過ぎて行ったビルヌーブを追いかけなかった。
後日、パドックでビルヌーブに会う機会があったので、どうして髪の毛をそんな色にしたのかを尋ねてみた。
ビルヌーブ「20年目のお祝いだよ!!」
筆者「なんの20年目?」
ビルヌーブ「オレがチャンピオンになった97年から、今年で20年目という意味だよ」
いまでは、すっかりF1界のご意見番としてのイメージが強いビルヌーブ師匠だが、この方、れっきとしたF1世界チャンピオンなのである。しかも、97年というのは、あのミハエル・シューマッハーとのマッチレースを制して獲得した価値のあるタイトルだった。
ところで、どうして20年目が『金髪』になるのか?
じつはビルヌーブは現役時代から自由奔放な性格で、シューマッハーとタイトル争いを繰り広げた97年には、シーズン中盤から黒髪から突然、金髪にして周囲を驚かせたのである。ビルヌーブは金髪のまま戦い抜き、最終戦でタイトルを獲得。するとチームのスタッフやビルヌーブと仲のいいドライバーたちが、金髪のかつらを被って、ビルヌーブの王座獲得を祝福したのだった。
つまり、ビルヌーブにとって『金髪』は、タイトルを獲得した時の思い出の色であり、ラッキーカラーだったのである。