シリーズ最大のイベントである長距離戦を制したルノー・スポールのエミリアーノ・スパタロ アルゼンチンの人気ツーリングカー選手権、スーパーTC2000の第9戦『ブエノスアイレス200km』が10月1日に行なわれ、降雨が連続しウエットパッチが入り混じるスリリングなダンプコンディションのなか、ルノー・スポールのフルーエンスGTをドライブするエミリアーノ・スパタロ/クリスチャン・レデスマ組が最終ラップの大逆転劇で勝利を飾った。
レギュラーシーズンのレースフォーマットとは異なり、土曜にクオリファイレースはなく、日曜の決勝が200kmの長距離で争われるこのブエノスアイレス決戦に向け、各チームは1台のマシンに助っ人として起用するセカンドドライバーを登録。
2017年シーズンからからワークス体制で参戦するシトロエン・トタル・アルゼンティーナの51号車ホセ-マニュエル・ウルセラ車には、隣国ストックカー・ブラジルで5度のタイトル獲得経験を持つ"帝王"カカ・ブエノが加わった。
また、TOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナで17号車のカローラをドライブするマティアス・ロッシのマシンには、WTCC世界ツーリングカー選手権で3年連続王者となった母国の英雄ホセ-マリア・ロペスが、16号車のガブリエル・ポンセ・デ・レオンのマシンには、元F1ドライバーのノルベルト・フォンタナが起用されるなど、豪華なドライバー陣がエントリーリストに名を連ねた。
この長距離決戦に向けた予選でポールポジションを獲得したのは、チーム・プジョー・トタルのマリアーノ・ウェルナー(プジョー・408)を下したルノー・スポール所属のポイントリーダー、ファクンド・アルドゥソ(ルノー・フルーエンスGT)。セカンドロウの3番手グリッドには伏兵とも言えるプライベーター、ダミアン・フィネンチ(フォード・フォーカス3セダン)がつけた。
日曜のレース開始時は、トラックは降雨の影響でライン上はドライながらいたるところに水溜りの残るリスキーなコンディションに。とくにスタート後に訪れる高速ターン3、ターン4の右コーナーはまだかなりの水量が残るなど、普段マシンに乗りなれていないセカンド登録のドライバーたちにとっては、スリリングなシチュエーションでのレースとなった。
そんななか、スパタロのチームメイトでスタートドライバーを務めたルノーのレデスマ、そして3番グリッド、フィネンチの僚友ファン-アンヘル・ロッソの2台だけがレインタイヤでのスタートを選択。さらにフォーメーションラップでは、マティアス-ムニョス・マルケージのプジョー・408もピットに飛び込みレインに履き替えるなど、各陣営ともタイヤ選択に頭を悩ませる。
スタートから間もない4周目、その高速右コーナー"サロット"で足元をすくわれ、最初にウォールの餌食となったのはトヨタ・カローラをドライブするノルベルト・フォンタナ。
ダメージを負ったマシンを修復するため、スローペースでピットへと戻ったフォンタナだったが、このアクシデントによりレース4周目にして早くもセーフティカー(SC)が出動する事態となる。
1周後に再開されたレースだが、ここからさらに雨脚が強まり、フロントロウスタートでシーズンではタイトル争いを展開するウェルナーのマシンが、マリアーノ・アルトゥラのドライブ中にパンクからスピンを喫しクラッシュ。これでリタイアに追い込まれてしまう。
6周目にはさらにフォードのマシンがスピンオフし再度のSC出動。しかし再開後のラップ9に今度はブラジルの帝王カカ・ブエノがスピンオフし、間髪入れずに3度目のSCと、レースは大荒れの様相を呈していく。
このあと11周のレース再開までに上位陣は続々とピットになだれ込み、レインへとスイッチ。ギャンブルでスタートした2台の選択が正しかったことが証明されることとなった。
14周目にドライバーチェンジのためのピットウインドウがオープンになると、各車が続々とレギュラーのエースに交代。この間、トヨタ・カローラの1台が再度スピンオフしたことで、この日4度目のSC導入となり、この作業が長期間にわたって行われたため、レース再開時には残り時間が6分というラスト・スプリントの展開に突入。
また小雨がトラックに落ちてくるなか、トップ集団は先頭のプライベーター・フォード、Escuería Fela by RAMレーシングのセバスチャン・ペルーソ(ファン-アンヘル・ロッソ組)を、ルノー・フルーエンスGTのスパタロが追う展開となり、ファイナルラップ突入のコントロールラインをサイド・バイ・サイドで通過。
ここを最後のチャンスと見たスパタロがアスカリ・コーナーでペルーソのインに飛び込み、なんとかドアをこじ開けることに成功。0.470秒差でフィニッシュラインをくぐったスパタロが、最終ラップの大逆転劇を演じてみせた。
続く3位表彰台には、シボレーYPFクルーズに乗るベルナルド・リーバーが入り、4位にファクンド・チャプル(プジョー・408)、5位にフィネンチのフォード、6位にマティアス・モッジアのシトロエンC4ラウンジと続いた。
またレース序盤にフォンタナのコースアウトでドロップしていたポンセ・デ・レオンのカローラは、後半怒涛の追い上げを見せ8位でチェッカー。同じくトヨタでホセ-マリア・ロペスと組んだロッシは、激動のレース展開が味方せず16位に終わっている。