F1のホイールと日本の関係は、実は結構、深い。たとえばマクラーレンが日本製のエンケイ製ホイールを使っていたり、ウイリアムズがレイズ製を使っていたし、OZホイールの鍛造原材量も日本で生産されたものが使われている。その理由はもちろん日本の鍛造、そして鋳造技術が世界的にも高いからに他ならない。
F1のホイールをしげしげと見る機会はそうそうない。しかし、一見すると何でもないホイールも、最新の形状はとんでもない進化を遂げている。その背景には実に複雑で繊細な設計と、それを生産する優れた技術が隠れているのだ。
たとえばあるチームのホイールは数あるスポークが空洞になっていて、軽量化が施されているし、またあるチームではホイールの内側から外側に向けて数多くの穴が貫通し、言わば内側から外側へのベンチレーティッド(放熱性、換気性を高めた)ホイールを形成しているのだ。
また、ホイールリムとマウントハブを結ぶスポークの中間点にはリングフィンを装着しているものが多い。これは鋳造一体で製造することはできないため、後付けなのだが、それでもうまく一体化させて装着している。そして、ホイールリムのアップライト側に小さい突起をいくつも設けてリムの表面積を上げ、冷却に使うのも割と最近のトレンドになっている。
そして一番の驚きは、写真のリヤホイール。ついに、アウターリムに放射状の細かい溝が掘られたものが登場したのだ。理由は2つ考えられる。ひとつは表面積を拡大することでのヒートシンク効果の狙いと、もうひとつは空力的な効果だ。
表面の溝が高速回転することで小さな渦を造り、ホイールから外側へ排出される排熱空気流の制御に役立てることで、マシン全体の空力効率を上げることが考えられる。F1エンジニアリングとは、よくもまあ次から次へといろいろな手口を見つけるものだ。