東京商工リサーチは、「2016年全国社長の輩出率、地元率調査」の結果を10月3日に発表した。調査は、同社が持つ企業データベースから、経営者の出身地を集計した。人口あたりの何人社長が出ているかを示す「輩出率」は徳島県が1.36%と、3年連続で1位だった。
輩出率2位は山形県で1.28%。同県は同社が9月にまとめた「全国明治創業企業調査」で、明治時代に創業された企業の割合が1.9%と、全国平均の0.7%を大きく上回って1位になるなど、老舗企業の多さが特徴だ。3位以下は香川県(1.19%)、秋田県(1.16%)、愛媛県(1.04%)と続く。ここまでの順位は前年と変動がなかった。
社長輩出率は人口減少に苦慮する地域で高い傾向
6位以下では、前回10位だった広島県が0.97%で8位に浮上。また、昨年は12位とランク外だった福島県が0.96%で10位に滑り込んだ。
社長の輩出率が高いことは一見良いことのようにも感じるが、調査を実施した東京商工リサーチはリリースで「手放しで喜べない」状況だと捉える。社長輩出率は人口減少に苦慮する地域で高い傾向があり、これは「比率算出の分母である県内人口が縮小し、相対的に輩出率が高止まり」している背景があると分析するためだ。
事実、徳島県の人口は3年前の調査時には76.6万人だった。今回の調査では74.9万人まで減っており、18年連続で減少していることになる。この間、社長輩出率は1.29%から1.36%まで上昇している。
輩出率が低い都道府県は、下から順に埼玉県(0.26%)、千葉県(0.27%)、神奈川県(0.33%)と、首都圏のベッドタウンが続いている。
地元出身者が社長を務める「地元率」は、7年連続で沖縄が1位
地元出身者が地元企業の社長を務める割合「地元率」は、沖縄県が94.1%と唯一の90%台を記録し、7年連続のトップを守った。2位以下は愛知県(89.6%)、北海道(88%)、広島県(86.9%)の順で、以下7位までは前年と変わらない。それ以下では、昨年8位・9位だった群馬県・栃木県が入れ替わり、10位には、昨年12位だった徳島県がランクインした。
7年連続で1位になった沖縄県は、他県からの企業進出が少なく、雇用の受け皿も不足しがちだ。しかし、こうした高い失業率が地元の開業率を引き上げているのではないかと同社は分析している。最近は、飲食業や医療福祉などのサービス業の創業も目立つという。
2位の愛知県や3位の広島県は、県内に自動車産業などの基幹産業を抱えており、周辺に集中する取引先や関連企業で、先代の跡を継いで社長に就くケースも多いためと見られている。
最も低かったのは奈良県の(66.9%)で、次いで長崎県(67.9%)、佐賀県(68.2%)だった。