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松坂桃李、『わろてんか』子役との恋模様が話題に どんな設定も乗りこなす“素直さ”を読む

2017年10月04日 07:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 現在公開中の映画『ユリゴコロ』で、突然婚約者が失踪し、徐々に過去の因縁が襲い掛かる青年・亮介を演じている俳優の松坂桃李。そんな松坂は、10月2日から放送されているNHKの連続テレビ小説『わろてんか』で、葵わかな扮するヒロイン・藤岡てんの夫となる藤吉に扮しているのだが、子役パートで話が展開する第1週目に、松坂だけが子役を起用せず、本人が演じていることが話題になった。


(参考:葵わかな、松坂桃李からのイタズラに「絶対笑わない!」


 初週は、後の夫となる藤吉とてんが運命の出会いを果たすところが大きな見どころとなっている。てん役には、現在放送中の『おんな城主 直虎』で柴咲コウ演じる直虎の幼少期・おとわを演じた新井美羽が扮し、濱田岳が演じるてんの幼なじみ風太の幼少期も、鈴木福が担当している。さらに藤吉と同じ旅芸人一派の仲間・キース、リリコも子役が演じている。


 そんななか、松坂だけが第1週目から子役に交じって登場する。藤吉とてんがほのかな恋心を抱くシーンでは、実年齢では新井が10歳、松坂が28歳ということで、松坂自身も「笑ってみてください」と完成披露試写で発言しているように、ある意味で突っ込みどころでもあるのだが、NHKのプロデューサーは、回想シーンで別の顔だと不自然だと起用理由を語り、松坂なら大丈夫とも言っていた。確かに過去の朝ドラでもこういったケースはあった。


 では実際どうなのか……。第1週目の完成試写を見ると、まったく気にならないかと言えば無理があるが、シーンの空気感や説得力にはそれほど違和感がない。そこには松坂の持つ、俳優としての“素直さ”が功を奏しているのではないだろうか。


 “素直さ”というのは、キャラクターやその人物が置かれている状況を無理なく受け入れて、変に癖をつけることなく、ストレートに表現するということ。もちろん、松坂は映画『エイプリルフールズ』で演じた虚言癖のセックス依存症の天才外科医や、『ピース オブ ケイク』のオカマ・天ちゃんなど、濃いキャラクターを個性的に演じることもあるが、こうした場合でも、飛び道具的な存在感ではなく「こういう人物なら、こんな行動や発言はするんだろうな」と思わせる説得力があった。


 その意味で、『わろてんか』での16歳という設定の藤吉も「その年齢ならこういう仕草や発言、立ち振る舞いをするんだろうな」と妙に納得してしまう芝居をみせている。


 そして、こうした“素直さ”というのは、もともと松坂自身に備わった資質なのかもしれない。それは、会見やインタビューでの受け答えにもあらわれている。報道陣や関係者の質問に対して、松坂はよく「なるほど」と前置きを入れることが多い。相手の話をいったん自分のなかに受け入れるのだ。俳優としても人としても吸収力があり、しっかり人物に寄り添い、ストレートに表現することができるという印象が強い。


 こうした特性は、ある意味で予定調和を生み出しやすく、キャラクターに感情移入しやすいという部分もあるが、一方で、物語の風味やテンポを大きく変えるような人物を演じるうえでは、適していない特性ように感じることもあった。


 だが、2016年に公開された映画『湯を沸かすほどの熱い愛』で演じたヒッチハイクをしている青年・拓海は、自身の持つ“素直さ”を存分にいかした説得力のあるキャラクターだったが、作品全体のペースを変える役割も果たした。どちらかというと、じっくりと人物や家族関係を描いていく展開のなか、拓海が登場することにより、一気に作品のペースが変わり、軽やかさが増した。主演の宮沢りえ、娘役の杉咲花の演技は文句なく素晴らしいものだったが、松坂の存在も、この作品を語るうえでは欠かせないほど効いていた。


 今秋は『わろてんか』をはじめ、現在公開中の『ユリゴコロ』、白石和彌監督がメガホンをとった『彼女がその名を知らない鳥たち』の公開も控えている。持ち前の“素直”で感情移入しやすいキャラクター造形にプラスし、作品のペースを変えるような“緩急”も兼ね備えた松坂の快進撃は当分続きそうだ。


(磯部正和)