予選での“ハミルトン封じ込み”がライコネンの最大のミッション
ダイナミック・ダウンフォースを武器に2強に挑むレッドブル
1999年最初のウイナーはエディー・アーバイン、その年まだ2歳だったマックス・フェルスタッペンが最後の11人目ウイナーになった。これがマレーシアGPの19年の歴史というものだ。
20歳と1日(55戦)、今シーズン勝った5人目、その勝ちっぷりは見事だった。3番グリッドから果敢にジャンプアップ、ペースの上がらない首位ルイス・ハミルトンをターン1でインから一撃でかわした。ここセパンでレッドブル2連勝、1-3フィニッシュを決め、いざ鈴鹿へ。
終盤アジアラウンドに進んでから、3つの異変が今、起きていることに気づく。日本GPにそれがどうかかわってくるか、今までの事前予測(プレビュー)に新たな視点を加える必要がありそうだ。
■プレビューポイント(1)
明らかにメルセデスは、イニシャルセッティングに乱れがある。温度や気象条件などに左右されやすく、タイヤ温度領域ゾーンが狭まる事象をふたりとも訴えている。単純に言えば、低温気味(ウエット条件)ではまずまずでも高温になるとスライド量が増し、それによってトレッド面が過熱。
金曜セパンでもそれが見てとれたが、土曜予選は夕方5時からで路面温度が下がり、ハミルトンはなんとかポールポジションをもぎ獲った。しかし、バルテリ・ボッタスは“失速傾向”、この2戦とも0.68秒以上も遅れる事態は序盤にはなかった。
投入すれば、百発百中のエアロアップデートがセパンでは当たらず、空力部署メンバーにはショックだった(はずだ)。それをカバーするせいか、最強パワーユニットのERS設定をチューニング。かえって回生機能面で弱みになり、フェルスタッペンに4周目に見抜かれ攻略された……。
鈴鹿はある意味、昔から“パワーサーキット”だ。ゆえに最強メルセデス有利と見られているが、エアロバランスにからまる難題が発覚する恐れは否めない。日本GPのためにすでに準備されていたアップデートの見直しもあるかもしれない。34点大量リードのハミルトンはセパンでも“旧エアロ”を選択していたが、鈴鹿ではコンサバティブ路線にならざるを得ないか……。
■プレビューポイント(2)
フェラーリDNS(リタイア)は、昨年バーレーンGPのセバスチャン・ベッテルまでさかのぼる。パワーユニットのトラブルに見舞われ、予選4位ライコネンが2位まで挽回し、面目は保てた。だが、セパン週末に相次いだ2件の不具合はどうもメカニカルな構造的な原因ではなさそうだ(日曜時点)。“シンガポール全滅ショック”の影響か、チーム内にそういう戦意喪失ムードがはびこると、スクーデリアは過去にもあったがしぼんでいく。
それを懸命に鼓舞しようと、ベッテルは予選リタイア後もスタッフ全員と気丈に接した。それなのにスタート直前にライコネンにまた異常事態発生、大胆な想像になるが、ベッテルのパワーユニットの交換作業に追われて浮足立ち、それがライコネンに“飛び火”したのか?
SF70Hのポテンシャル性能は、メルセデスも警戒するほどまで上がっている。だが、こうした信頼性(クオリティコントロール)の確実さが劣勢に陥った今こそ求められる。もうフェラーリには後がない。
5位キミ・ライコネンは首位ハミルトンと143点差、残り5戦(満点125点)なので、ベッテルの完全アシスト役となる。セットアップもタイヤチェックもストラテジーもすべてベッテル最優先で進め、鈴鹿予選では“ハミルトン封じ込み”がライコネンの最大のミッションになるだろう。
■プレビューポイント(3)
レッドブルの脅威を鈴鹿でいっそうマークしたい。おそらく平均240km/h台まで高まり、未曽有のコース新記録が樹立されるのは必至。“高速コーナリング化”に拍車がかかるだけに、強く確実なダイナミック・ダウンフォースがセクター1も2も3でもマスト。S字、旧ダンロップ、デグナー複合、スプーン複合、130R、シケイン、そして最終コーナー。それぞれの点を2本ストレートの線で結ぶ、『点と線のコーディネーション』をレッドブルに期待しよう。
パワーユニットのパフォーマンス差異をカバーするのは“ダイナミック・ダウンフォース”だ。個人的にはレッドブルRB13がそれを武器にセットアップ・ゾーンが狭まったメルセデスと、信頼性確保にやっきのフェラーリに勇みかかっていくような気がする。
久しぶりに3強対決が見られるか。鈴鹿・日本GP・30年目、最速の戦いが今週に実像化される──。