9月30日~10月1日の週末に、イギリス・ブランズハッチで開催されたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権の最終戦は、タイトル争いを繰り広げるFRマシン、BMW 125i Mスポーツとスバル・レヴォーグの一騎打ちとなり、ドラマティックな3レースを経てチームBMR移籍初年度のホープ、アシュリー・サットンが自身初となるチャンピオンを獲得。レヴォーグにとっても初のBTCCタイトルをもたらした。
レース1に向けた予選で速さを見せたのは、前戦でもポールポジションを獲得するなどシーズン後半戦の1ラップアタックをことごとく制し、最速男の地位を築いているユーロテック・レーシング・ホンダのジャック・ゴフ(ホンダ・シビック・タイプR)。
しかし、ところどころに水たまりができ、滑りやすいダンプコンディションでの争いとなったレース1では、ブランズハッチの名物1コーナーであり“モータースポーツ界でもっともデンジャラスなコーナーのひとつ”と謳われる高速右コーナー『パドックヒル・ベンド』にトップで進入しなければならないというリスクを背負ったゴフが、オープニングラップで路面ミューの読めない悪条件のなか、早々にコントロールを失いバリアへとクラッシュ。
これで首位に浮上した予選フロントロウ、シリーズ最年少のエイデン・モファット(メルセデス・ベンツAクラス)が、トリッキーなコンディションのなか、そのまま15周を凌ぎ切り見事勝利。
2位のトム・イングラム(トヨタ・アベンシス)に続き、最後の表彰台スポットにはタイトルコンテンダーのサットンが入り、15位に終わったウェスト・サリー・レーシング(WSR)、ターキントンとの差を24ポイントに広げて、レース2へと挑むことになった。
しかし、その対照的なグリッドポジションからの勝負となったレース2で劇的なレース運びをみせたのは、逆転タイトルに向け負けられない1戦となったターキントン。
15番グリッドからのスタートとなった2度のBTCC王座経験者は、オープニングラップで3台をかわして12番手に浮上すると、その後もソフトタイヤが絶妙なマッチングで機能したBMWを駆り、ライバルたちを次々とオーバーテイクする鬼気迫るパフォーマンスを披露。
一方、3番グリッドから出たスバル・レヴォーグは、プレッシャーに飲まれたか、スタートで上手くトラクションを掛けられず、いきなり3ポジションドロップの6番手に落ちると、その後もペースが上がらず後続に次々とパスされる展開となり、チェッカーをくぐったときにはなんと12位までポジションダウンするという危機的レース展開でフィニッシュした。
一方のターキントンは、残り1周となったファイナルラップ突入時点で2番手まで浮上すると、その勢いのままポールスタートからトップを死守してきたモファットに襲いかかり、メルセデスのリヤをプッシングしながらオーバーテイクし、ついに首位浮上。
この間隙を突いてチーム・ダイナミクスの2台、ゴードン・シェドンとマット・ニールのワークス・ホンダ勢もメルセデスの前に出ることに成功し、そのままチェッカーとなった。
レース後にモファット陣営からプッシングに対する抗議が提出され、主催者側はこれを受理したものの、罰金のみでリザルトへの影響や次戦のグリッドポジションダウンはなし。ターキントンが12台抜きの離れ業で勝利を手にし、サットンとのポイント差を6にまで詰めて、ファイナルランドを迎えることとなった。
迎えた2017年シーズン・フィナーレとなるレース3は、スタート前から波乱を予感させるお膳立て。スタート進行が始まろうかというタイミングでトラックにはふたたびの雨脚が落ち、グリッド上では各車ともにダンロップの『ブルーレスポンス』ウエットに交換してスタートが切られるなか、タイトル争いの幕切れはあっけなく訪れた。
リバースグリッドの10番手からスタートしたターキントンと、12番グリッドからスタートし、すぐさまライバルの背後につけたサットンのレヴォーグが、並んで2周目に突入したところ、前方を走るイングラムのアベンシスがグラハム・ヒル・ベンドでマット・ジャクソンのフォード・フォーカスSTをプッシングしコース外に押しやると、復帰を試みたチーム・シュレッデド・ウィートのイエローのフォーカスは、不運なことにBMW1シリーズ、ターキントンと交錯。
右リヤタイヤとアップライトを失ったWSRのマシンは走行不能に陥り、ターキントンは為す術なくBMW125i Mスポーツをコース脇に寄せると同時に、タイトルの夢も止めることとなってしまった。
これで労せずしてタイトルを手中にしたサットンは3位でフィニッシュ。来季アルファロメオ・ジュリエッタへのスイッチを表明し、トヨタ・アベンシスでのラストレースとなる勝者ロブ・オースティンと、レース1で苦汁を舐めたジャック・ゴフに続くポディウムフィニッシュで、自身初となるBTCC王座確定に華を添えた。
「なんて週末なんだ。アップダウンがありすぎて本当に大変だった。レース3のアクシデントは目の前で発生したけれど、それが誰と誰なのかは考えないように、自分がどのラインを取るべきかだけに集中して走った。半周ほど走ったところでチームからの無線を聞いて、本当に肩の荷が下りた。最初は信じられない気分だったよ」と喜びを語ったサットン。
23歳の若さで2017年BTCC王者となったサットンは、今季6勝14ポディウムを記録。チームBMR移籍初年度で、スバル・レヴォーグをチャンピオンマシンに押し上げる偉業を達成してみせた。