野村総合研究所は9月末、「保育施設・サービスに関するアンケート」の調査結果を発表した。調査は7月、全国で未就学児を持つ女性を対象に実施。東京圏(東京都、神奈川県など)、名古屋圏(愛知県、大阪府、兵庫県など)、地方圏(東京・名古屋圏以外の道県)の3つのエリアから各1236人、合計で3708人から回答を得た。
アンケートでは、子どもの保育の必要性の有無や、保育施設等の利用状況、親の就労状況などについて質問した。申し込み状況は2017年4月1日現在の数字を用いた。
約7割の保護者が「3か所以上の保育施設に申し込みをした」
2017年4月から保育施設等の利用を希望していた子どものうち、利用できなかった子どもの割合を見ると、「母親が就労」の場合は5.0%に対して、「母親が非就労」の場合は24.8%だった。働いている母親の約20人に1人、働いていない母親の約4人に1人が、希望したにもかかわらず子どもを保育施設などへの入園させられなかったことになる。
野村総研の推計では、4月からの保育利用がかなわなかった子どもの数は、全国で約34万6000人に上るという。
エリア別で見ると「母親が就労」の場合は大差がないが、「母親が非就労」の場合は、東京圏が34.7%、名古屋・大阪圏が26.4%、地方圏が18.6%だった。利用できなかった子どもの割合は都市部ほど高いが、地方圏でも一定数存在する。
「4月からの保育利用希望がかなわなかった」と答えた216人に理由を聞くと、「申し込みを行ったいずれの保育施設にも入園できなかったため」が42.5%で最も多いが、「そもそも申し込みを行わなかったため」と答えた人も40.2%いる。
申し込みをした保育施設等の数は、「3~5箇所」が49.3%で最多。「2箇所」(20.7%)、「6~10箇所」(17.7%)、「11箇所以上」(4.9%)が続き、3箇所以上の保育施設に申し込みを行なった人の割合は71.8%に上る。
「供給側の認識と利用者側の認識には開きがある」
「そもそも申し込みを行わなかった」と答えた92人に理由を聞くと、最も多かったのは「申し込んでも無理であろうと諦めた」(28人)だった。ほかには、「幼稚園や一時保育などの他の保育サービスを利用することにした」(12人)、「申し込み条件を満たしていなかった」(5人)などの理由が寄せられている。
自治体によって「待機児童」の定義や、保育の必要性の認定が異なり、保護者の中には利用したくても利用できない人がいるのが現状だ。
調査を行なった野村総合研究所はリリース内で、「供給側の認識と利用者側の認識には開きがある」と指摘し、「供給側の論理で、保育の必要性の有無のボーダーライン決めを続けても、いわゆる『待機児童問題』の終息は困難だと考えます」と述べている。