マレーシアGPの予選でセバスチャン・ベッテルがQ1ノータイムに終わり、最後尾からスタートすることになったとき、多くの人は「タイトル争いは事実上、終わった」と感じたはずだ。
だが、日曜日のレースを終えて、34点にポイント差を広げたにも関わらず、レース後のルイス・ハミルトンに、シンガポールGPのときのような笑みはなかった。
「マレーシアGPで僕たちはペースを発揮することができなかった。まだ5戦ある。僕たちがやるべきことはたくさんある」
どんな状況でも、会見では常にポジティブな対応をするトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター/ビジネス)ですら、マレーシアGPのレース後は悲壮感が漂っていた。
「われわれはフェラーリを襲った不運に乗じて選手権で優位に立ったが、今週末のわれわれにはレッドブルとフェラーリに挑めるだけのペースがなかったことを忘れてはならない。レース後のブリーフィングではチーム全員が危機感を感じていた」
その後、チーフレースストラテジストのジェームス・バレスと話す機会があった。バレスはシンガポールGPでは「メキシコGPとアブダビGPはフェラーリが手強い存在となるだろう」と語っていたが、「マレーシアGPは問題ない」とも言っていた。にもかかわらず、なぜメルセデスはマレーシアGPで失速したのか。
※詳細は9月28日:F1 Topics「低速コースを苦手とするメルセデス。彼らの本当の弱点とは」参照。
「シンガポールGPでの失速は、われわれも事前に予測できていた。そのとき答えたように、シンガポールGPの問題はモナコGP、ハンガリーGPと同様、車体のコンセプトとコースレイアウトに原因があった」
「ところが、今回の問題はコースレイアウトでない。問題はタイヤの使い方だった。今年変更されたタイヤをウインターテストから習熟してきて、理解していたと思ったら、そうではなかった。今われわれは少しパニックになっている」
次戦日本GPが行われる鈴鹿は、2014年に新しいパワーユニットが導入されてから、すべてメルセデスが勝利してきた。だが、「今年は正直わからない」とバレスは頭を抱える。
鈴鹿に持ち込まれるタイヤは、ミディアム、ソフト、スーパーソフト。各コンパウンドの選択数は、メルセデスとフェラーリがまったく同じであるのに対して、レッドブルがスーパーソフトが2チームより2セット多い。
鈴鹿は20戦中、最もタイヤに厳しいサーキット。メルセデスがどんな戦い方をするのか。今年の日本GPは、初日のフリー走行1回目から注目が集まっている。