2017年10月03日 10:22 弁護士ドットコム
2018年卒の就職内定が正式解禁になった10月1日から2日にかけて、多くの企業で「内定式」が開かれました。出席された学生の皆さん、労働条件の通知はあったでしょうか。もしなかった場合は、労働基準法に抵触する可能性もあるようです。
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弁護士や労働組合などでつくる「ブラック企業対策プロジェクト」が厚労省に対し、内定段階で労働条件の通知が必要かどうかを確認したところ、このほど、「必要な場合がある」との回答がありました。プロジェクトのメンバーは「これまで曖昧だった基準が明確になった」と意義を話しています。
求人票と実際の労働条件が異なる「求人詐欺」が社会問題になっています。もし被害に遭っても早い段階で判明すれば、就活を続けるなど、まだ選択肢があります。しかし、実際は入社前後に労働条件が示され、泣く泣くブラック企業で働かざるを得ないということが多いようです。
この問題をめぐっては、今年3月、職業安定法(職安法)が改正され、取り締まりが強化されました。改正法では、これまでの求人業者に加え、「虚偽」の求人を出した企業そのものにも30万円以下の罰金が科されることになりました。
しかし、この規定で企業を罰するのは難しいようです。労働問題に詳しい市橋耕太弁護士によると、募集条件が「虚偽」であることの立証が難しいからです。労働者がハンコを押してしまえば、条件が悪くなっていても、合意したと見られてしまいます。
そこで市橋弁護士らが注目しているのが、労働基準法15条1項です。この規定では、労働契約の締結時に、労働条件を通知することが義務付けられています。違反すると30万円以下の罰金です。
これまで、「労働契約の締結」のタイミングについて、明確な基準はありませんでした。もし「内定」が該当するのであれば、早い段階で労働条件が通知されるので、特に新卒の求人詐欺被害が減ることが期待できます。
また、職業安定法の場合、担当は主として警察ですが、労基法であれば、労働問題を専門としている労働基準監督局が対応するため、チェックの強化も見込めます。
市橋弁護士も関わる「ブラック企業対策プロジェクト」は厚労省に対し、この点について公開質問状を送付。9月26日に「内定でも労働契約が成立する場合がある」との回答を得ました。
「すべてではないにしても、採用内定時でも労働条件を明示しないとならないことが明確になった」と市橋弁護士は分析します。
弁護士ドットコムニュースが厚労省に確認したところ、求人詐欺対策として、労基法を適用できるか検討し始めたのは今年の3月からだそうです。そのため具体的な対策はまだ検討中だといいます。
市橋弁護士は、「労働者も法に基づいて、労働条件がどうなっているか聞くことができる。内定段階では業務内容や職場などは明示できないだろうが、決まっているものだけでも分かれば、かなり違う」として、厚労省の今後の対策に期待しています。
(弁護士ドットコムニュース)