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山本彩、EXILE TAKAHIRO、Dream Ami、伊東歌詞太郎…グループを経て発揮されるソロの魅力

2017年10月03日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 アイドルグループ、ダンスボーカルグループ、ポップユニットなどの中心メンバーとして存在感を示しているアーティスト/シンガーが、ソロ活動を通してさらに個性を発揮するケースが増えている。ソロ活動ではグループ内でのキャラクターとソロとしてのスタイルの違い(ギャップ)が出せるのも、大きな利点。今週は“グループを経たソロとしての表現”を実感できる新作を紹介したい。


(関連:山本彩、アイドルとシンガーの境界線壊す存在に? J-POP追求したソロ作がシーンに残すもの


 NMB48のリーダーとして6年間グループを引っ張り、2016年にソロデビューアルバム『Rainbow』とともに目標にしていたシンガーソングライターとしての活動をスタートさせた山本彩。昨年行われた最初のソロツアーでもシンガーとしての資質の高さを存分に見せた彼女が、約1年ぶりとなる2ndアルバム『identity』をリリースする。前作に続き、今作も亀田誠治がプロデュースを担当。阿久悠の未発表歌詞に水野良樹(いきものがかり)が曲を付けた昭和歌謡テイストのバラード「愛せよ」、阿部真央の提供による攻撃的なアッパーチューン「喝采」など多彩なアーティストが参加しているが、本作の軸を担っているのは山本自身が作詞・作曲を手がけたオリジナル曲。特に<平気なフリは下手なままでいい>というフレーズを力強く響かせるロックナンバー「JOKER」(詞はいしわたり淳治と共作)、<君は君でいて>と優しく語りかけるピアノバラード「サードマン」など、“自分らしく生きる“をテーマにした楽曲が強く印象に残る。アルバムのタイトル通り、彼女は本作によって自らのアイデンティを示し始めたのだと思う。


 2015年に1stアルバム『the VISIONALUX』をリリースしたEXILE TAKAHIROが約2年ぶりにソロ活動を再開。その最初のシングル表題曲「Eternal Love」はオーセンティックなラブバラードに仕上がっている。久々のソロ楽曲の制作に際して彼は“シンガーとしての自分をもっとも活かせる曲とは何か?”という根源的なテーマと向き合ったはず。楽曲の構成段階からプロデューサーの亀田誠治と密なコミュニケーションを取り、メロディ、歌詞、アレンジを練り上げていったという。<変わらない 愛を君に>という驚くほどに率直なフレーズ(作詞はTAKAHIRO)を高らかに歌い上げるこの曲には、シンプルな愛の言葉に説得力を与えることができる、彼本来の魅力がしっかりと表れていると思う。カップリング曲には、彼が初めて作詞・作曲を手がけた「SUNSET KISS」を収録。夏の終わりの海岸で<魅惑の唇に 優しくキスしたい>と語りかけるこの曲からも、彼の人柄がリアルに伝わってくる。


 2017年7月のさいたまスーパーアリーナ公演でE-girlsを卒業、ソロアーティストとしての本格的なスタートを切ったDream Ami。ディズニー映画『ズートピア』日本語吹替版主題歌「トライ・エヴリシング」、The Cardigansの代表曲をカバーした「Lovefool -好きだって言って-」などシングル5曲を収めた1stアルバム『Re: Dream』には、“E-girlsの金髪の子”というパブリックイメージとは異なる、彼女自身のセンスとキャラクターが存分に発揮されている。それを象徴するのがリードトラックの「Re: Dream」。アコースティックギターの響きとEDM経由のダンストラックがひとつになったサウンドのなかで彼女は、<誰に何を言われたって/ここからまた「Re: Dream」>ときわめて正直なラインを刻んでいる。シングル『君のとなり』のインタビューで彼女は「『自分でやらないと何も始まらない』という考えもあります」とコメントしていたが、「Re: Dream」にはソロアーティストとしての決意が強く示されているのだと思う。決してシリアスにならず、あくまでもポップに表現しているところも彼女らしい。


 宮田“レフティ”リョウとのポップユニット“イトヲカシ”としても活動している伊東歌詞太郎の3rdフルアルバム『二天一流』。2012年から投稿を始めたニコニコ動画の“歌ってみた”カテゴリーで高い支持を獲得し、2014年にボーカロイド楽曲のカバーを中心としたアルバム『一意専心』でメジャーデビューを果たした伊東。前作『二律背反』(2015年)から約2年半ぶりに発表された本作には、シンガーソングライターとしての彼の個性がさらに色濃く反映されている。<リアルなものは消えてくけど/残ったものはすごいだろう>と歌う「IMAGINE」、<誰かの大事な 心を壊して/気づいていないなら ぼくの言葉を聞いて>と語りかける「誰かと誰かが出会うとき」。人と人を結びつける音楽の力に対し、おそらく彼は微塵も疑いを持っていない。優れた楽曲は必ず多くの人に伝わり、そこで生まれた連帯によって世界は良い方向に向かうーーその信念こそが伊東歌詞太郎の魅力の本質なのだろう。(森朋之)