シンガポールGPではスタート直後のアクシデントに泣いたフェラーリが、マレーシアGPではパワーユニットに2日連続でトラブルが出た。これにより、セバスチャン・ベッテルは最後尾からスタート。チームメイトのキミ・ライコネンは、スタートすることなく、リタイアに終わった。
フェラーリによれば、予選のベッテルのトラブルは、コンプレッサーからプレナムチャンバー(内燃機関の吸気ポート)に空気を送るためのインタークーラーパイプにダメージがあり、そこから空気が漏れていたという。
決勝日のライコネンのトラブルはまだ特定されていないが、テレメトリーのデータを見る限り、同じ場所のプレッシャーが低下していたことから、インタークーラーパイプになんらかのダメージがあったと見られている。
なぜ、今回フェラーリは2台そろって同じ箇所に同じトラブルを抱えたのか。その理由を別のマニュファラクチャーのあるエンジニアは次のように分析する。
「インタークーラーパイプはカーボンファイバーできているが、カーボンというのは軽量化に大きく貢献できる反面、ひとつひとつ職人による手作りなので、品質にバラつきが出やすく、品質管理をしっかりと行わないとトラブルが起きる。シンガポールGPで無得点に終わって、今回どうしても挽回したいフェラーリが品質管理よりもパフォーマンス向上を優先した可能性は高い」
もうひとつ考えられる原因は、フェラーリは今回マレーシアGPでインダクションポッドの形状を変更し、冷却システムを変えてきたことが、なんらかの悪影響を及ぼしたのではないか。というのも、カーボンファイバーは熱に弱いという特性があるからだ。
いずれにしても、フェラーリがいま心配しているのは、じつはパワーユニットではない。
「キミのトラブルもセバスチャンと同じなら、インタークーラーパイプのみを別のスペックのものと交換するだけでよい。なぜなら、そこはペナルティなしで、交換可能な場所だから」とフェラーリ・スタッフは語る。
フェラーリが心配しているのは、むしろチェッカーフラッグ後にストロールと接触してリヤサスペンションを壊したベッテルのギヤボックスのほうだ。現時点ではギヤボックスにダメージを受けているかどうかはわからないが、次の鈴鹿で交換すると、5番手降格のペナルティが科せられることになる。
そのため、現在チームはFIAに対して、「事故によってベッテルはピットに帰えることができず、リタイアしたも同然なので、ペナルティなしで交換させてほしい」という要請をお願いしているという。
ちなみに事故後、レース審議委員会に呼ばれた際に、ベッテルはランス・ストロールから謝罪を受けたという。また事故車に取り付けておかなければならないステアリングを持ち帰ったことに関しては、事故の衝撃でステアリングが元に戻らない状態となってしまっていたため、審議に問われることはなかった。