WorldRX世界ラリークロス選手権の第11戦となるドイツ・エステリングでのイベントが今週末の9月30日~10月1日に迫る中、前戦のクラッシュで肋骨を骨折するなどの大怪我を負っていたペター・ソルベルグが、賞典外となる“ノン・パーマネント・ドライバー”登録で参戦する意向であることを明らかにした。
9月中旬にラトビアで開催された第10戦リガのイベントで、前人未到の5連勝という新記録を打ち立て初のドライバーズタイトルを決めたヨハン・クリストファーソンと、同じくチームズタイトルを決めたPSRXフォルクスワーゲンRXチーム・スウェーデン。
しかし、この記念すべきタイトル獲得を果たした同じ週末に、チームのエースでありPSRXのオーナーも務めるペターがセミファイナルの1コーナーでのアクシデントにより負傷。
肩こう骨へのダメージに加え、鎖骨と左の肋骨下部2本を骨折するという大ケガを負う事態に。さらには肺にも影響があるとの情報が流れ、明けた月曜には緊急手術を敢行。
今回はその術後の状態を観察しながらのドライブとなる背景もあり、ワークス運営を行うフォルクスワーゲン、並びにチームにとっても、この2戦はタイトル確定後の消化試合的な位置付けとなることも踏まえて、このエステリングではペターがパーマネント・ドライバー登録から外れることを決断。
代わりに、ドイツ出身で長年フォルクスワーゲンの契約ドライバーとして実績を重ねてきたディーター・デッピングが、スライドする形でポイント登録ドライバーとしてエントリーすることとなった。
この決断に際し、ペター夫人でありPSRXのチーム・プリンシパルも務めるパニラ・ソルベルグは、チームのステートメントを通じて「我々チームにとってシリーズで最重要の1戦とも言うべきドイツ・ラウンドを前に、ディーターをFIA世界ラリークロス選手権登録ドライバーに選出することを決めました。これはWorldRXの、1チームにつき2名というパーマネント・ドライバー登録の規定に従って下した最善の決断」だと語った。
「この解決策はペター自身が望んだ形でもあるの。もちろん、彼もできる限りの努力でドイツでのドライブに挑むでしょうけど、そのパフォーマンスがどの程度になるかは誰にも保証できないわ」と、夫人の立場としてもペターの身を案じたパニラ。
この週末のエステリングに向け、PSRXチームは全車同スペックとなるフォルクスワーゲン・ポロGTI RXスーパーカー3台を投入。すでにラトビア戦以前にもドイツ戦でのデビューが発表されていたデッピングだが、思わぬ形でVWワークスに協力する機会が巡ってきた格好だ。
長らくVW契約ドライバーとして走ってきたデッピングは、ドイツ国内のラリー選手権や、クロスカントリー・ラリー、ニュルブルクリンクを中心としたサーキットレースなどでVWのマシンをドライブし幾度もタイトルを獲得。さらに、WRC世界ラリー選手権を席巻したポロR WRCの初期開発テストドライバーという大役も務めるなど、ドライバーとしての能力は折り紙付き。
世界ラリークロスのデビューに先立ち、デッピングは「幸いなことに、ペターとヨハンのふたりは、余すことなく彼らのノウハウを僕に授けてくれた」と意気込みを語った。
「彼らふたりは僕に惜しみないサポートを与えてくれていて、とくにラリークロスでしか積めない独特の経験や、スタート直後のポジショニングや考え方、レース戦略の手順など、あらゆるヒントをもたらしてくれたんだ」
「ペターと彼のチームに改めて感謝したい。ポロGTI RXスーパーカーで世界レベルのコンペティションに飛び込むのが楽しみだよ。もちろん、結果は高望みせず地に足をつけて挑むつもりだけど、願わくば周囲の人々を驚かせるような走りができたらいいね」