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山田涼介はテレビドラマよりも映画向き? 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』好スタートで初登場1位

2017年09月28日 16:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 先週末の映画動員ランキングは、廣木隆一監督の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が土日2日間で動員16万8000人、興収2億1000万円を記録して初登場1位。続いて、英勉監督の『あさひなぐ』が動員9万4000人、興収1億2600万円で初登場2位。両作品は、原作もの(『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は東野圭吾の小説、『あさひなぐ』はこざき亜衣のコミック)、アイドルの主演映画、そして初日の舞台挨拶(『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は全国120の劇場でライブ・ビューイングも)での大量動員と、現在の日本の実写映画を象徴するような作品となっている。もっとも、平日に入ってから動員が大きく失速している『あさひなぐ』に対して、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は順調に客足が伸びていて、全体的に低調気味なこの秋の興行において孤軍奮闘している。


参考:「“素の山田涼介”を出したかった」 廣木隆一監督が明かす『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の撮影ウラ話


 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で注目すべきは、主演の山田涼介(Hey! Say! JUMP)の動員力だろう。これまで、『暗殺教室』(2015年)、『グラスホッパー』(2015年)、『暗殺教室 -卒業編-』(2016年)と出演映画は3作品のみだが、すべて最終興収は10億円超え。『グラスホッパー』は同じジャニーズ事務所の生田斗真、そして浅野忠信に続く三番手の作品であったが、主演を務めた『暗殺教室』シリーズは1作目が最終興収27.7億円、2作目が最終興収35.1億円と、いずれも大ヒットを記録した。原作コミックが小中学生に絶大な人気を誇る『暗殺教室』の映画化作品は、その結果だけで山田涼介がどこまで貢献していたかを正確にとらえるのは難しかったが、今回の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』でその実力が本物であることを証明したと言っていい。


 実際、作品内容に対しては、ちょっと「泣かせ」要素が強すぎるという批判の声が一部であがっている同作だが、山田涼介の演技に対してはファン以外からも一様に好評。筆者にとっても、『グラスホッパー』におけるその堂に入った汚れ役ぶりに不意を突かれて以来、役者業も積極的にやっているジャニーズの若手の中で最も気になる存在となっている。


 山田涼介といえば、鳴り物入りで主演した、昨年秋のフジテレビ月9ドラマ『カインとアベル』の視聴率面での苦戦が盛んに報じられていたことも記憶に新しい。演技の仕事としてはそれ以来となった今回の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で、そのイメージを払拭し、今年12月に公開を控えた次の主演作品、公開前から大きな期待が寄せられている実写版『鋼の錬金術師』へと弾みをつけたかたちだ。


 以前からテレビドラマの世界は、ヒットが宿命づけられた作品も実験的な作品も一様に視聴率という数字だけで語られる傾向が強かったが、安易なネットニュースが蔓延るようになって、現在それがさらに加速している(「リアルサウンド映画部」は視聴率だけをニュースにするようなことはしていませんが)。そんな中、特に主演俳優は必要以上のプレッシャーにさらされるようになってしまった。今回の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に続いて、もし12月の『鋼の錬金術師』も大ヒットを記録するようなことになったら、山田涼介は押しも押されもせぬ若手映画スターの座を手中におさめることになる。得るものより消耗することが多いテレビドラマの企画よりも、映画の企画を優先。身体的な表現に長けた役者として、もともとテレビドラマよりも映画のスケールが向いている山田涼介の活動は、今まさにそんな流れの中にあるが、役者界全体でもそんな動きが今後さらに目立ってくるかもしれない。(宇野維正)