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友人宅に泊まったのに…上京インターン生が偽の交通費、宿泊費を申告、これってアリ?

2017年09月28日 10:32  弁護士ドットコム

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地方の大学で就職活動する学生にとって、東京・大阪など都心で開催されることが多いインターンシップや会社説明会は悩みの種だ。多額の交通費だけではなく、長期間にわたるホテル滞在で宿泊費もかかる。そのため、企業の中には地方の学生に対して交通費・宿泊費を支給するところもある。


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しかし、これを逆手に取り、実際とは異なる交通ルートを申告して、交通費・宿泊費を多めに得ようとする就活生もいる。新幹線で行くと申告しながら、夜行バスを使ったり、宿泊代を申告したのに友人宅に宿泊していたなど、あの手この手を使っているという。


地方から上京しての就職活動が金銭的に大変なのは理解できるが、このような行為に法的な問題はないのだろうか。また、企業は就活生に対し、差額を返金するよう求めることはできないのだろうか。寺岡幸吉弁護士に聞いた。


●場合によっては刑事事件として詐欺罪が成立

通常とは異なる交通ルートを申告することに、法的な問題はないのか。


「法的な問題は、もちろんあります。企業から支払われる交通費や宿泊費は、実際にかかった費用相当額、あるいはその一部を支給するという趣旨で、例えば、費用相当額や、あるいは一定の金額を上限とする、などと定めていると思われます。


また、経路についても制限があったり、普通指定席の料金は認めるが、グリーン料金は認めないなどの制限があったりするでしょう」


企業が返金を求めることも可能か。


「そのような制限を超えた金額を、制限の範囲内と偽って請求したら、制限を超えた金額について、企業は、不当利得の返還請求権を行使することができます。


不当利得というのは、契約などの法律上の原因がないにもかかわらず、一方が利益を得て他方が損失を被った場合に、その利得の返還請求ができるという制度です。今回のケースでは、学生はインターンシップ契約で定めている範囲を越えて利得を得ており、企業は損失を被っています。そのため、利得分について返還請求ができることになります(民法703条)」


詐欺罪にはあたらないのか。「詐欺罪は、ある者が他の人を騙し、その人に経済的な処分をさせることによって利益を得ることで成立します。


今回のケースでは、実際には請求できないお金を、請求できるお金であると偽って企業の担当者を騙し、その人に支払いの手続をさせることによって利益を得ているわけですから、詐欺罪の構成要件に該当します。そのため、刑事事件として詐欺罪が成立する可能性も十分ありえるでしょう」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
寺岡 幸吉(てらおか・こうきち)弁護士
社会保険労務士を経て弁護士になった。社労士時代は、労働問題を専門分野として活動していた。弁護士になった後は、労働問題はもちろん、高齢者問題(成年後見や高齢者虐待など)などにも積極的に取り組んでいる。
事務所名:弁護士法人おおどおり総合法律事務所川崎オフィス
事務所URL:https://os-lawfirm-kawasaki.jp