もやし生産者が依然として厳しい状況に立たされている。東京商工リサーチが9月26日に明らかにしたところによると、もやし原料豆等の卸売りを手掛ける大西商事(兵庫県)が13日までに倒産した。
同社はピーク時の1991年6月期には売上高約7億円を計上していたが、近年は年間売上高3億円で推移。豆の価格高騰もあり、今年4月には事業を停止していた。
もやしの販売価格はこの40年ほぼ変わっていない。生産者はコスト削減に励んできたが、生産者や関連企業で作る工業組合もやし生産者協会は「これ以上の経費削減への努力はすでに限界を超え、健全な経営ができていない状況」にあるとし、今年3月、サイト上に「もやし生産者の窮状について」という文書を掲載していた。
同協会の担当者は、「今回の卸売り業者の倒産は、こうしたもやし生産者を取り巻く状況と関連があるのではないか」との見方を示している。
スーパーでは激安もやしが「客寄せ」に使われているケースも
野菜は通常、収穫の時期や量によって価格相場が決まる。しかし、同協会によると、工場野菜であるもやしは天候に左右されず1年を通して安定した供給ができるため、他の野菜のような相場はない。小売業者への納品価格は、生産者と業者の直接交渉で決定しているそうだ。
小売り業者がどの生産者から仕入れるか決める際に重要になるのが仕入れ値だ。生産者には、業者から取引中止を言い渡されることを恐れ、先方の希望額まで値下げして売る人もいるのが現状だという。
店頭での販売価格が上がらないのは、もやしがスーパーで「客寄せ」に使われるケースが後を絶たないことが原因だという。通常であれば商品を仕入れた後、仕入れ額に利益を上乗せした価格で物を販売するのが一般的な商売だが、もやしの場合、「仕入れ値と同等もしくはそれより安く売って客を呼び寄せ、もやし以外の売り上げで赤字を補てん」する方法を取る小売店も多いそうだ。
こうしたこともあり、2009年時点では230社以上いた生産者のうち100社以上が廃業。現在も残る生産者は130社を下回る程度だという。
値上げする小売業者も現れたものの、「現状はあまり変わっていない」と担当者
同協会の声明が今春、ネットや新聞で取り上げられると、スーパーのバイヤーや社長から「値上げしてもいいんじゃないか?」との声も聞かれるようになったという。
同協会の担当者は、生産者から「小売業者に5月から価格を上げてもらった」「7月から対応してもらう」などの話を耳にしたというが、「今のところ全体の状況はあまり変わっていない」と話す。1円未満の小さな額ではあるが、総務省の7月の家計調査でのもやしの平均小売価格は15.25円と、声明を出した3月の15.70円より下がっているのが現状だ。
生産者を取り巻く詳細な状況を把握するには、生産者一人一人の納品価格と販売価格を調べる必要があるが、「生産者さん同士もライバルなので、そう簡単には教えてくれない」といい、調査が難航している。
消費者の中にも「50円くらいでも買うのに」「もっと高くして」と、窮状に理解を示す人もいたというが、担当者は「でも、実際に目の前に出されたら安い方を買っちゃうじゃないですか。頭では分かっていてもそういうものだと思います。一度安くなってしまったイメージを覆すのは難しいです」と、複雑な心境を語った。